げん(高細玄一)「もぎ取られた言葉」コールサック社より刊行中!

第1詩集「声をあげずに泣く人よ」2022年6月第2「もぎ取られた言葉」コールサック社よ…

げん(高細玄一)「もぎ取られた言葉」コールサック社より刊行中!

第1詩集「声をあげずに泣く人よ」2022年6月第2「もぎ取られた言葉」コールサック社より刊行 http://www.coal-sack.com/syoseki.html 横浜詩人会、横浜詩人会議、日本現代詩人会所属  茅ヶ崎市在住  「詩集の店」店主

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第2詩集「もぎ取られた言葉」が刊行になりました!

コールサック社様より、第二詩集「もぎ取られた言葉」が10月27日発売になりました。第1詩集「声を上げずに泣く人よ」ともども、よろしくお願いいたします。装画は前作に続…

詩)茅ヶ崎 昼飲み 意味を求めず

虎舞竜のロードが流れる茅ヶ崎の居酒屋で 昼飲みしている 今日は4月なのに6月のような暑さだ 客はキャップを被った女性が僕と対面に 並びには右に女性二名がせんべろを頼み…

詩)変革

さっきから小さなことを 何か言いたいのだ 留まっている言葉 言いたいことは単純で それなのに言葉にすると 言いたいことが逃げていってしまうんだ あんなに言いたいと思…

ルポ4.22 大久保ひかりのうま「パレスチナへの詩とうた」「きっと、伝説として語り継がれる夜になる」 

4月22日、大久保駅から徒歩30秒「ひかりのうま」では17時に音楽関係の音合わせリハーサルが開始されていた。白拍子の桜井真樹子さんの呼びかけで「パレスチナへの詩と…

詩)悲恋

なぜ という問いに 僕は答えられなかった わからないというのは綺麗すぎる わかっていた 自分にも同じ思いがある それなのに わかったように聞いていた 僕には 答えはな…

アースデイ特別公演「ガザ・パレスチナへの詩と歌」

もうすぐです。 アースデイ特別公演 ガザ・パレスチナへの詩と歌 第二のナクバに抗して 4月22日、大久保ひかりのうまです。19時開場 パレスチナとガザの緊張がイスラエル…

詩)脇役

食べると洗い物が出る 小皿とお椀はまず水で表面を流してから水に漬けて 箸なんかの小物も一緒に 油ものは一通り洗い終わった後に最後 魚を焼く網も水につけて付いた油をう…

詩)燃えるようなキス

燃えるようなキスを しませんか 鹿たちが恋人どうし 触れ合うときに交わすように お互いを見つめ合い お互いの眼の底にある お互いのコンプレックスを突き詰め じっと眼の…

詩)無明

言葉が生まれる時 話しても話ても話し足りない言葉があり 湧き出す光を手で汲み取り トントンと寝ている人を起こし 小さなぬいぐるみで肩を撫で ひとりよりふたりがいいと…

詩)アンダーコントロール

僕らは ぼくとぼくは  安心している なぜかも考えないで 生きている 僕ら ぼくとぼくは 本当に誰かが苦しむことを想像しない だって僕ら ぼくとぼくは こうやって問…

詩)何色でもない花

昨日午後4時30分ころから藤沢市円行付近より89歳男性が行方不明になっています。身長は160センチくらい中肉中背、髪は短髪で白髪まじり。灰色カーディガン、灰色スラックス…

詩)立ち眩む

「無駄に並んでしまった」 ガザで避難民となった少年は何時間も列に並んで待っていたが、飢えている家族に食べ物を持ち帰ることができないことが分かった。 「死者」でな…

詩)鼓動/窓を大きく開けて

読みかけの本を伏せて 窓を大きく開ける 今日は少し肌寒い 本を脇にずらして眠る カーテンが揺れる くだける 前でも後ろでもない 縦でも横でもない 言葉でも形でも…

詩)異形の鬼

それがいつから始まったのか 心のすみに住む鬼が表れて 脳みそに貼られたシールを 一枚ずつ剥がし 頭皮にこびりついたまっ白なボンドを 取れるまで 流してくれる 医者はマ…

詩)ひかりはどこに

ひかりはどこにあるのか 人間の顔と顔 そのあいだに 少年の頃 マックスウェルが開発したと言う 鉱石ラジオを組み立て 電気の必要のないラジオが出す音は 宇宙からの交…

詩)去る日

4時51分発の始発は 不思議な連帯感 乗り継いだ列車は 仕事帰りと これから仕事の人間の まるで違う二種類が混じり合う 半分が寝て それ以外はスマホ 夜明けの街 列車の音…

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第2詩集「もぎ取られた言葉」が刊行になりました!

コールサック社様より、第二詩集「もぎ取られた言葉」が10月27日発売になりました。第1詩集「声を上げずに泣く人よ」ともども、よろしくお願いいたします。装画は前作に続きmichiakiさんです。 世界を解釈する際には、その地域で引き起こされている悲劇的な犠牲者の行為そのものを、「既成の言葉」を超えていく「新たな言葉」として認識していく必要がある。高細玄一氏の詩篇は現代詩の限定された言葉の美の世界を食い破っていき、不条理な世界の地域社会で犠牲者となって、この世界から抹殺されてい

詩)茅ヶ崎 昼飲み 意味を求めず

虎舞竜のロードが流れる茅ヶ崎の居酒屋で 昼飲みしている 今日は4月なのに6月のような暑さだ 客はキャップを被った女性が僕と対面に 並びには右に女性二名がせんべろを頼み 左にも二人の若い女性がせんべろを頼む つまりは昼飲みの居酒屋は 圧倒的に女性の居場所なのだ 今まで知らなかった 僕は一人だ 両側から楽しそうな会話が聞こえて来る ママにナイショよ。 めっちゃくっちゃウザくて ハハハ! 美味しいじゃん? 充実はしてるけど なんかずっと立ってるじゃん ほとんど立ってるもんね いい

詩)変革

さっきから小さなことを 何か言いたいのだ 留まっている言葉 言いたいことは単純で それなのに言葉にすると 言いたいことが逃げていってしまうんだ あんなに言いたいと思っていたのに ほんとうに言いたいことはなんだろう 考えてしまうと崩れていく 崩れてしまうと何も言えないまま こんなことの繰り返し その中で 内と外が一瞬 入れ替わりながら 何か言いたいことを作る 言葉はまだ静止してしまっているが 深く深く根を持った言葉が 現れるのを待ち それは最初に言いたかったことと同じ

ルポ4.22 大久保ひかりのうま「パレスチナへの詩とうた」「きっと、伝説として語り継がれる夜になる」 

4月22日、大久保駅から徒歩30秒「ひかりのうま」では17時に音楽関係の音合わせリハーサルが開始されていた。白拍子の桜井真樹子さんの呼びかけで「パレスチナへの詩とうた」に集まった様々なジャンルを超えたアーティストたち。私も18時の詩のリハより早めに「小屋入り」したが、すでに歌人の大田美和さんはスタンバイしていた。詩人の伊藤芳博さんが岐阜から来られた。初対面である。「実はロードバイクで走行中にトレーラーに接触されて。死ぬところでした。」とびっくりするようなお話をされる。ソマイア

詩)悲恋

なぜ という問いに 僕は答えられなかった わからないというのは綺麗すぎる わかっていた 自分にも同じ思いがある それなのに わかったように聞いていた 僕には 答えはなかった それは生きるということへの 優しい問いかけ そして 悲しい問いかけ 答えはなかった 20年以上別の人に恋していたと 死の床で告白され 恋だったと言われた時 人は何をどうすればいいか どこに答えがあるのか 真っ赤な太陽が ある時と 真っ黒な太陽が 沈む時が ここで交じる ここで泣き ここでお互いの眼を

アースデイ特別公演「ガザ・パレスチナへの詩と歌」

もうすぐです。 アースデイ特別公演 ガザ・パレスチナへの詩と歌 第二のナクバに抗して 4月22日、大久保ひかりのうまです。19時開場 パレスチナとガザの緊張がイスラエルの挑発によって、イランとの直接対決、世界的な戦争へと発展するかもしれない要素が日に日に増しています。 その中でガザの100万人を超える飢餓が見捨てられようとしています。 それこそが(世界の視野をガザから逸らす)ことこそ、イスラエルの目的ではないでしょうか。 わたしはパレスチナの側に立ち、平和的解決を求めます。

詩)脇役

食べると洗い物が出る 小皿とお椀はまず水で表面を流してから水に漬けて 箸なんかの小物も一緒に 油ものは一通り洗い終わった後に最後 魚を焼く網も水につけて付いた油をうかせ そうすると割と簡単に落ちる 食べることはとても楽しい 楽しいことのあとに 洗いものがある 食べる 捨てる 洗う 拭く 水気をしっかり取って仕舞う また出すときに分かるように さて料理は 主役があって脇役がある 洗い物は要領よくかたずける準備があり 頭でなく手で 𦚰も主もなく 順番にこなす 生きる それは

詩)燃えるようなキス

燃えるようなキスを しませんか 鹿たちが恋人どうし 触れ合うときに交わすように お互いを見つめ合い お互いの眼の底にある お互いのコンプレックスを突き詰め じっと眼の中の真ん中にある 吐息を呑み込み 息を止め ゆっくりと上唇を近づけ 軽く噛み 含む ゆっくりと舌を入れ 離し ため息を漏らす ああゝ 体の芯をゆっくりと緩め その肩を抱き 愛撫し もう一度 唇を触れ合う 深く深く しっかりと じっくりと お互いの息を感じる 離して もう一度お互いの鼻を近づけ 息を確かめ 見つ

詩)無明

言葉が生まれる時 話しても話ても話し足りない言葉があり 湧き出す光を手で汲み取り トントンと寝ている人を起こし 小さなぬいぐるみで肩を撫で ひとりよりふたりがいいと思い 手のひらを合わせて そうしてずっと このままだといいと 言葉が生まれない時 話は途切れその先にあるものが重くのしかかる いつ殺されるか 恐怖が時間を支配し 人間の柔らかい皮膚はいともかんたんに破かれ 明日が来ないことを知り 子どもは泣くが誰も振り返らず 見捨てられた誰にも聞こえない絶叫が 干からびた手のひら

詩)アンダーコントロール

僕らは ぼくとぼくは  安心している なぜかも考えないで 生きている 僕ら ぼくとぼくは 本当に誰かが苦しむことを想像しない だって僕ら ぼくとぼくは こうやって問題なく生きている 優先席に若い女性が座る 車内は混んでいる おそらく足の悪い年配の男性が彼女の前に立つ 彼女はスマホで何かを見ている だって僕ら ぼくとぼくは こうやって問題なく生きている 大阪では在日朝鮮人のことをチョンコと呼んだ バカチョンカメラとは チョンがキレる(シャッターがキレる)と シャッターがチョ

詩)何色でもない花

昨日午後4時30分ころから藤沢市円行付近より89歳男性が行方不明になっています。身長は160センチくらい中肉中背、髪は短髪で白髪まじり。灰色カーディガン、灰色スラックス、黒色スニーカー、茶色フチの眼鏡を着用しています。お心当たりのある方は。 僕はね どうして日本人はあんな無個性な服を着て会社に行くのかほんとに不思議でね。だってそうでしょう?みんなで示し合わせたように同じ形の背広を着て同じ顔をして同じような眼で同じ方向を向いて飲み屋で会社の悪口言ってるんですよ 本日午後2時

詩)立ち眩む

「無駄に並んでしまった」 ガザで避難民となった少年は何時間も列に並んで待っていたが、飢えている家族に食べ物を持ち帰ることができないことが分かった。 「死者」でなく「イスラエル軍に虐殺された人」が3万人、7割が女性や子ども。1時間に2人の母親が「死亡」でなく「殺されている」 立ち眩む なにも語ることが出来ず なにをやってきたのかも どんな意味があるのかも 低い声でささやくことで なにが変わるのだろうか 本当に考えること 僕にはなにが出来るだろうか 本当に苦しんではじめて

詩)鼓動/窓を大きく開けて

読みかけの本を伏せて 窓を大きく開ける 今日は少し肌寒い 本を脇にずらして眠る カーテンが揺れる くだける 前でも後ろでもない 縦でも横でもない 言葉でも形でもない なにか 在り続けること 在り続けられないこと 鼓動 人工的な冷たい響きの中でずっと蠢いて来た 違和感の時代に生きなければならなかった 甘くも酸っぱくもなく なにが価値なのか 虚構の幸せを目標にして 格差が上から塗り込まれ あるものは隠されて 汚いものはないものにされ 下へ下へと圧力ばかりがかかる 恥を知らない

詩)異形の鬼

それがいつから始まったのか 心のすみに住む鬼が表れて 脳みそに貼られたシールを 一枚ずつ剥がし 頭皮にこびりついたまっ白なボンドを 取れるまで 流してくれる 医者はマジックで書かれた暗号をみながら 「このあたりが少し異常ですね」と いつものように言う 長い時間 味気ない茶色の長イスで待っていたのに 答はいつも同じだった 答なんてもともとないのだ だから答があるふりをしているんだ 帰りの電車の中で いつも誰かの目線を気にしていた 気にしていたという形を 装っていた こんなら

詩)ひかりはどこに

ひかりはどこにあるのか 人間の顔と顔 そのあいだに 少年の頃 マックスウェルが開発したと言う 鉱石ラジオを組み立て 電気の必要のないラジオが出す音は 宇宙からの交信そのものであった 黒板で化学の先生から 鉱石ラジオがどうして音が出るのか説明していただくのを 不思議な気持ちで見ていた あの頃 ひかりはまだ短く 人間と人間 宇宙の端に たとえ失うものばかりでも 色彩は貧しくても  存在していた ひかりはどこにあるのか なぜ痛みは感じられず たった一枚の白い布が ずっと子ど

詩)去る日

4時51分発の始発は 不思議な連帯感 乗り継いだ列車は 仕事帰りと これから仕事の人間の まるで違う二種類が混じり合う 半分が寝て それ以外はスマホ 夜明けの街 列車の音が鼓動の 今日の始まりを告げる 最後の日はこうやって過ぎた