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#小説

昔一度書いてデータ喪失した小説を脳内データで復旧してみたの巻 小説「じん・じん・じん」全文公開

昔一度書いてデータ喪失した小説を脳内データで復旧してみたの巻 小説「じん・じん・じん」全文公開

 今から10年以上前はワープロで書いていたんですが、そのワープロが壊れた結果、いわゆるフロッピーディスクというやつに眠ったデータが取り出せなくなってしまった。まあプロになる前の原稿だし、それでもべつに惜しくはなかったわけだが、不意にその中の一篇の情景がよみがえってきた。これ、もしかして脳内データがあれば、数時間でワンチャン書けるんじゃない? そう思ってツイートしたところ、100イイネが集まったので

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山田と鈴木の無益な思考回路1

山田と鈴木の無益な思考回路1

キーンコーンカーンコーン

「なぁ鈴木」
「ん?」
「気まずくなる時ってあるよな」
「あぁ、あるけど急にどうした?」
「例えばさ
 友達の友達と2人きりになるとする」

「うわぁ」
「考えるだけでゾッとするだろ?」
「最悪だな」
「どうしてそう思う?」
「だってあれだろ
 友達とは仲がいいんだ
 でも友達の友達とはまた話が変わる
 何てったってそいつとは友達でもない
 ただの他人だからな」

「そ

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「君の話」を読んだ中二女子の感想〈上〉

「君の話」を読んだ中二女子の感想〈上〉

もし人間がもう少し賢かったのなら。

この物語はこんなにも悲しくなかっただろう。

人間が作り出す虚構は、こんなにも美しくなかっただろう。

そう思いました。

読んだ時期もちょうど良かったと思います。

私自身、主人公の千尋と同じような空虚さを抱えていた時だったので。

本屋でたまたま目に入って、買ってもらって。ここまで本棚で寝かせていたのは正解でした。

でもそれを抜きにしても、ここまで強烈な

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雑文(94)「ミキサー」

雑文(94)「ミキサー」

 老いた母と二人暮らした安アパートの室内は、出版社勤めの売れない雑誌記者である僕には、いささか広すぎた。
 母が、国管轄の「未来の家」に移ったのは、ほんの数日前だから、僕の抱く違和感は当然だろう。けれど、母の下した苦渋の決断は一生、僕の心の奥底に暗い影を落とし、それは悪性腫瘍のように患部に根付くにちがいない。
 発端は、半世紀前に他国から積極な移民受入れを開始した国の失策にあり、安い賃金で誠実に働

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湯けむり夢子はお湯の中 #2 ビリーの湯 【お話】

湯けむり夢子はお湯の中 #2 ビリーの湯 【お話】

 
 あっぷちぇんがーる♪もとい、ビリー・ジョエルの『Uptown Girl』が流れる店内。脱衣所にもスピーカーからご機嫌なあっぷちぇんがーる♪

♨️

 こんばんは、湯川夢子39歳。3月で四十になります。
 今宵は、近所の夢子御用達銭湯『ビリーの湯』さんにお邪魔しています。

 先代までは『亀の湯』という名前だったのですが、跡を継いだ三代目が何の迷いもなく、周りの制止も振りきって改名しました。

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オンライン収入NEXT体験中のナナおすすめ!「告白」を読んだ感想

オンライン収入NEXT体験中のナナおすすめ!「告白」を読んだ感想

みなさんこんにちは!ナナです♪

このブログでは、みなさんにおすすめしたいなと思った一冊を紹介しています🐣

今回ご紹介する小説は、湊かなえさんの『告白』です。

湊かなえさんのデビュー作であるこちらの本。松たか子さん主演で映画化されているので知っている人も多いと思います。

スリリングな内容と描写が好きで一気に好きになった1冊。読んでいると人間ってめちゃくちゃ怖いなって感じちゃいます…!💦

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自転しながら公転する

自転しながら公転する

「結婚、仕事、親の介護、全部やらなきゃダメですか?」この言葉に共感して手に取った一冊。24歳のときに、親の介護のためにキャリアを考えた自分。考えに考え、自分なりの道をつくってはきたものの、この小説の主人公はどういう答えを出したの気になった。

結局は正しい答えなんてないけれど、大事なのは周りの環境に振り回されながらも、自分で考えることをやめないことだと思った。

また、どんな状況でも自分の幸せを追

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本の大切さを改めて思う。

本の大切さを改めて思う。

ゼロの紙さんの記事を読んで、フラッシュバックのように昔の自分を思い出したんです。

まだ漫画家をしていた頃だったか、もっと後だったか……時期的なものは忘れてしまったけれど、とにかく本をがむしゃらに読んでいた時がある。

それと同じくして、映画をむさぼるように観ていた時期もあった。
映画といってもDVDをレンタルして毎晩観ていたんだけど。

恋愛少女漫画家とかしていた割に、漫画はあまり読まなかった。

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「たしかなことばをつづれ」#11 Haru side

「たしかなことばをつづれ」#11 Haru side

両親は僕が高校2年の時に事故で亡くなった。

時々僕は思う。両親と一緒について行けば良かったのだろうか、と。
まだ子供だったくせに、姉さんと一緒に日本に残る事を選んで、だいぶ背伸びしていたと思う。

3つ上の姉さんは長女のクセにあまりしっかりしている方ではなく、どちらかと言うとおっとりしているタイプだった。
でも両親がいなくなってからは、流石に気丈に振る舞うこともあって、僕はだいぶ助けられたし、僕

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そもそも従来の小説も共同制作じゃん!

そもそも従来の小説も共同制作じゃん!

――「従来、小説は1人でつくるもの。1人でつくれるから、みんな参入するんだ」と考えていましたが、「そもそも小説って1人でつくってないじゃん」と思い至りました。

【#222】20220207

人生は物語。
どうも横山黎です。

作家を目指す大学生が思ったこと、考えたことを物語っていきます。是非、最後まで読んでいってください。

今回は「共同制作してよかったことpart1」というテーマで話していこ

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小説「なんで、私が乳がんに?」(26)

小説「なんで、私が乳がんに?」(26)

社畜生活も20年を越えるが、2週間も休みを取るのははじめてである。人生初のロングバケーションが新婚旅行でもなんでもなく、こんな形になるとは。
課の部下たちには入院のため2週間休むが、大した病気ではないのでそうっと休んでそうっと帰ってきたく、内聞にしてほしい、と伝えた。最初の数日は無理だが、3日ほどたてばPCは開けるので、リモートワークとでも思っておいてほしい。外部の関係先にも病院から連絡すればわか

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カポーン♨︎

カポーン♨︎

カポーンと洗面器を置く音が響く。テレビの騒音にまじって、脱衣所から常連のお爺ちゃんお婆ちゃん達の喋り声が漏れてくる。

清子はこの春から近所の銭湯で働いている。番台での仕事がほとんどで、お湯を沸かしたり浴場を清掃したりするのはこの銭湯では男性陣の仕事だ。
これまで女性ばかりいる仕事場にいた清子はまだ慣れない。なにせ今まで天井の蛍光灯の取り換えや重い荷物の運び出しなど、何から何まで女性で賄って

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おかしな朝

おかしな朝

いつもと同じ朝。

そのはずだった、いや、実際に普段となんら変わらない朝なのだ。

それなのに、この重くのしかかるような違和感はなんだろう。

一抹の不安を抱えつつ、会社へと向かう準備を始める。

準備の最中も、フルマラソンを完走した翌日のように足が重かった。

当然フルマラソンを走ったことはない。

一種のメタファーである。

そうこうしている内に準備が整ったため、ドアを開け、我が家にしばしの別

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カガミノナカノダレカ

カガミノナカノダレカ

子供の頃から鏡が怖かった
自分が写る、目の前の私
同じ動きをする、真似をされる

鏡の中は異世界があるとか別次元に繋がってるとか
そんな話をよく聞くけれど

中から自分の分身が、いきなり、勝手に微笑んで
身を乗り出して、手を伸ばして
私を引きずり込んしまったら

ありえないとはわかりつつも
そんなことを想像してしまうんだ

だから極力鏡は見たくない
頑張っても人の体では通り抜け出来ないであろう

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