umi_hoshissu

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カポーン♨♨♨三湯目

苦手なおじいさんをなぜ苦手なのか。 原因はわかっている。距離が近すぎるのだ。 それまで勤務してきた場所にはいなかった年代で、こちらが慣れていないというのもあるが、ほかの人と比べても、人との距離をグッと詰めてくるタイプの人だろう。そして見た目が汚い感じがする。銭湯に来るくらいだから家がないわけではないのに、そこはかとなく家がない人の雰囲気を醸し出している。それも苦手な理由の一つだ。 でも、決定的だったのはあれだったかもしれない・・・ *** 清子が番台の仕事をしている

    • カポーン♨️♨️二湯目

      ''ここにいると、日常はゆるやかに過ぎ去ってゆく…。道を歩くだけで通りすがりに挨拶をしたり、顔見知りと立ち話をしたり、心温かな人たちに囲まれて私の心もほぐれてゆく…'' などと言えればいいのだが、実際は毎日時間に追われて仕事している。 夜遅くの閉店後は、ゴミをまとめて裏に出し、さっと残り湯で汗を流して帰る。 夜遅い分、起きる時間もずれていく。 昼頃やっと起きて出勤し、コンビニのおにぎりひとつ齧り付いてから脱衣所の清掃に入る。 そうしている内に浴場清掃の人がやってきて、向こう

      • カポーン♨︎

        カポーンと洗面器を置く音が響く。テレビの騒音にまじって、脱衣所から常連のお爺ちゃんお婆ちゃん達の喋り声が漏れてくる。 清子はこの春から近所の銭湯で働いている。番台での仕事がほとんどで、お湯を沸かしたり浴場を清掃したりするのはこの銭湯では男性陣の仕事だ。 これまで女性ばかりいる仕事場にいた清子はまだ慣れない。なにせ今まで天井の蛍光灯の取り換えや重い荷物の運び出しなど、何から何まで女性で賄っていたのだ。その中では「気が付いた人がやる」という暗黙のルールが出来ていた。 そ

      カポーン♨♨♨三湯目