【同乗者たち】第5章 継承者たち【23】

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「あなたは、ゼロイチです」
「うん」
「ゼロイチは、もう134回死んでいる」
「知ってる」

その言葉を聞いて、アヤノはほっとしたような顔をした。肩で綺麗に切りそろえていた髪の毛は長く伸び、後ろで一つにまとめられている。
時が経ったのだ、とイチは静かに感じた。
実験は、終わった。でも。

「どう、なにか見た? なにか、覚えている?」

アヤノの言葉にイチはしばらく逡巡した後、小さ

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連載『オスカルな女たち』

《 エピローグ 》・・・4

 織瀬(おりせ)は、出産前の弥生子(やえこ)に「聞きたくない」と言われるのを無理矢理、
〈赤ちゃんの名前はもう決まっているの。『橙星(あきせ)』…明るい星。男の子でも、女の子でもどっちでもいいと思って…〉
 そう言って励ましたのが1週間前のことだ。
〈織姫と彦星。か…〉
 そう語る真実(まこと)に、
〈橙(だいだい)ってね、冬に熟すらしいんだけど、木からは落ちずに翌年

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【同乗者たち】第5章 継承者たち【22】

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「外に行きたい」

ふいにキューがつぶやいた。彼女は仰向けになって、図書端末を操作している。

「急にどうしたの」
「空、みてみたい」

キューはため息を吐きながら呟く。横に並んで寝そべって端末を見上げると、彼女が読んでいるのは国内の青春小説だった。鮮やかに色彩された挿絵は、青いベタ面と、白い靄のようなものが描かれている。
空だ。

「写真とか動画で見たことあるでしょ」
「本物が

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私のデビュー作『フランス恋物語』を読んでください!!

ご挨拶

こんにちは。

自称新進気鋭の作家・Sayulist(さゆり)です。(プロフィールはこちら)

この度は、私のデビュー作『フランス恋物語』(目次はこちら)をご紹介させていただきたいと思います。

私が『フランス恋物語』を勧めようと思ったきっかけ

まずは、2020年8月10日付マイ・ダッシュボードよりPVのTOP10をご覧ください。

1位「離婚を決めた新婚旅行」、3位「目次」、5位「エ

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【同乗者たち】第5章 継承者たち【21】

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『』の最初の記憶は、滲むような白い靄の中、なにか柔らかいものに包まれている安堵感、そして周りに自身と同じ生き物がいるということだった。その感覚はあらがえないほどに心地よく、意識の浮上と沈下を繰り返しながら、かすかな衣擦れの音が、どこか遠くから響いてくるのをまどろみの中で聴いていた。

「あなたは、ゼロイチという名前の人間です」

与えられた環境の中で『』が言葉を理解すると、『』

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【同乗者たち】第4章 探索者たち【20】

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足音の反響は、さっきまでいた廃線路より小さく響く。大人が二人横に並んでやっと通れるほどの、狭い通路だ。しかしまだ先は長いようで、ナナシが照らすペンライトの向こうは同じような廊下が延々と続いている。無駄な会話ができないようにか、井坂とユータはヨーイチ達よりずいぶん後ろを歩いているようだ。
四方は相変わらず冷たいコンクリートだが、所々に用途の分からないボタンや、天井には照明らしきも

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連載『オスカルな女たち』

《 エピローグ 》・・・3

「おかわり!」
「いつになくピッチが速いですね」
 腫れ物に触るようなしぐさでジョッキを受け取る真田に、
「明日は午後からだから、いいの」
 余計なことは言うな…とばかりに睨みを利かせる真実(まこと)は、
「そろそろ、ナッツ、出てきてもいいんじゃないの?」
 サービスにも厳しい。
「はい。心得ております」
 何杯目かのビールと一緒に出てくる〈ナッツの盛り合わせ〉は、す

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まちくたびれちゃったよ
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【ハートビート】最終回「トライアスリート」

前回のお話↓

「…で、丈さん結局何位だったんですか?」

「7位。」

「7位ですか?最終ラップ5位とかで入ってましたよね。放送で聞こえましたよ。」

「晃、そういう自分はどうなのさ。」

「13位でした。足重くてしんどかったです。」

「…。」

「…。」

「お互いまだまだだね。」

「そうですね。」

 お台場海浜公園、トライアスロン日本選手権フィニッシュゲート裏の選手控え室。そこでは激闘

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橋本カリナは今日も自由に紹介する〜〜流浪の月編〜〜

この部の長から半ば強制的に登校を命じられたためにめんどくさくなりながら部室へ向かった。
旧校舎の使っていない部屋を部活用で使わさせてもらっているが、一体どうして学校はこのよく分からない部活動を許可したのだろうか。
まず俺はこの部の名前すら知らん。
無理やり入れさせられたために特に興味もなかったのだ。
活動らしい活動がなかったので、ただの冗談程度だと思っていたのがどうして急にやる気を出したのか。

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【同乗者たち】第4章 探索者たち【19】

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真っ暗な暗闇の中で、ふたつの光がゆらゆらと辺りを照らす。足音はヨーイチと井坂の二人分、ヨーイチにはサキの軽い足音も余分に聞こえた。井坂によると、ここはどうやら旧時代の乗り物である「地下鉄」が走っていた跡らしい。大混乱以来、こうして使用されなくなった地下施設がたくさん放置されていると聞いていたが、これもその一つのようだった。
電波状況も最悪で、地下に入ると同時に指揮官とも連絡が取

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