鈴木正人

「大人」は24歳から。「子供」は23歳まで。――という仮説に基づいた小説を書いています…

鈴木正人

「大人」は24歳から。「子供」は23歳まで。――という仮説に基づいた小説を書いています。私の仮説は、「思春期の終わりについて」という短い文章にまとめてあります。ご連絡は、ページ最下部の「クリエイターへのお問い合わせ」まで。

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サンセットサンライズ (もくじ)

「大人」 は二十四歳から。 「子供」 は二十三歳まで。 ――という仮説に基づいた小説です。私の仮説は別稿 「思春期の終わりついて」 にあります。 長編になります。 作品を一言で言い表せば、「現代の(時代設定は90年代ですが)」「リアルな」 浦島太郎物語です。ただし、昔話の浦島太郎を現代風にアレンジしたものではなく、あくまでエッセンスを取り入れたお話です。 テーマは、青春と青春の終わり、若さと老い、あるいは、「老いと死」 と不老不死です。 長編ですが、歳時記のような一面もあ

    • 第三十二話 山水に遊ぶ その二 カジカ音

      もくじ 2,513 文字  旅館の近くに、「かじか橋」 という吊り橋がかかっている。橋の先から新緑や紅葉が楽しめるハイキングコースが続いているが、真一とマサカズは橋を渡らず、橋の入り口脇の階段から川沿いの遊歩道へと下りた。  釣りのポイントを探す真一が先に立って歩き、竿が当たらない程度の距離を取って、マサカズが続く。真一の左手には竹竿、右手はブリキのバケツの錆びた取っ手を握っている。バケツの中にはサシの袋が一つ。竿を借りれば、バケツはただで貸してもらえる。  谷底を満たす、

      • 第三十一話 山水に遊ぶ その一 川辺の宿

        もくじ 2,637 文字  「アルカディア」 から楽々谷温泉までは、大してかからなかった。店の前の道を棚田のほうに少し戻った所に、おとり鮎販売の掘っ立て小屋が立っている。小屋の手前で細い道に折れ、森の中をうねうね進んでいくと、左手に無料の観光駐車場が出てくるが、ここを過ぎてすぐ、道の先に吊り橋が見える所に、茶色い二階建ての建物が立っていた。  玄関脇で満開に咲き誇っている菊桃の前に、小林は車を停めた。ほとんど蛍光ピンクに近い花びらは、少しだけ紫がかっているようにも見える。花

        • 第三十一話以降、五話ほど釣りの話が続く予定。 といっても、ガチな釣り小説ではなく、雰囲気重視の内容なので、釣りに興味のない方でもお楽しみいただけます。「懐風藻」の世界です

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        • 第三十二話 山水に遊ぶ その二 カジカ音

        • 第三十一話 山水に遊ぶ その一 川辺の宿

        • 第三十一話以降、五話ほど釣りの話が続く予定。 といっても、ガチな釣り小説ではなく、雰囲気重視の内容なので、釣りに興味のない方でもお楽しみいただけます。「懐風藻」の世界です

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        記事

          第三十話 水魚の交わり

          もくじ 2,240 文字  カラン、とドアベルの音を残して、バイカー三人組が店を出ていった。  ほどなく、山間に単気筒エンジンの音が轟く。窓の外で、先頭のバイクが走り出した。シルバーの半ヘルを追って、すぐにほかの二台も走り出す。革ジャンの背中が西日を弾き返しているが、今出発すれば、暗くなる前に地元の街に帰り着くだろう。  カリカリとテーブルに溢れる香ばしい音。カレーを平らげたあとも、岡崎はまだ腹が減っていると言って、ピザトーストを追加注文した。小林とマサカズも付き合った。二

          第三十話 水魚の交わり

          第二十九話 アルカディア

          もくじ 3,023 文字  「アルカディア」 という店の前には、レトロなバイクが三台並んで停まっていた。アメリカンではなくイギリス車――といっても、実際には、国産バイクを英国のクラシックバイク風にカスタムしたものだが。車を降りて、ちらっとナンバーを確認したところ、思った通り、東京方面からのツーリング客だった。真っ当なルートを使えば、楽々谷は特に来づらい場所ではない。真一たちと違って、快適なツーリングを楽しんできたに違いない。  玄関まで行って、格子窓のはめ込まれたドアを押し

          第二十九話 アルカディア

          第二十八話 隠れ里

          もくじ 3,581 文字  谷川沿いに縷々続いていた道は、やがて川筋を離れて山を上り始めた。峠を越えてからの下りは長くは続かず、上りの半分程度の所で山腹を横切る形になった。  窓の外を見つめるマサカズの目は、しっかりとした光を宿している。過去に車酔いになったときというのは、はじめから体調が悪かったときで、本来さほど酔いやすい体質ではないという。実際、川原を出発してからずっと、気分の悪さがぶり返す気配はない。  小さなトンネルを抜けると、パッと視界が開けた。  目に飛び込んで

          第二十八話 隠れ里

          第二十七話 青い鳥

          もくじ 3,088 文字 「おうっ……うえええっ」  二つ目の石を投げようとしたとき、川下で激しい空えづきが聞こえた。振り返ると、小林がまたマサカズの背中をさすっている。 「全部出しちまえ。そうすりゃ楽になる」 「うげええっ、おうえっ」 「がんばれ、あと少しだ」  真一も経験があるが、背中をさすってもらうと、確かに吐きやすい。 「いいぞ、その調子。もうひと踏ん張り」  小林の声に熱がこもる。 「何だかあいつ、産婆みたいですねえ……」  岡崎が他人事みたいに言った。 「生まれ

          第二十七話 青い鳥

          第二十六話 水切り

          もくじ 1,844 文字 「あー、腹減ったな、ちくしょう。いったいどこなんだよ、ここ」  谷間の狭い空に、悲痛な叫び声が吸い込まれていく。岡崎が川原にあぐらをかいて見上げる空は、絶望的なまでに高い。両側に立ちはだかる切り立った谷壁と急斜面。前後も山々が視界を塞ぎ、深いクレバスに落ち込んでしまったかのようだ。 「どっかに食い物売ってる店ねえかなあ……ってあるわけないか、こんな山奥に」  岡崎はあきらめ切った顔で、新樹が彩る右手の急斜面に目を移す。うぐいす色の描点の奥、道が通っ

          第二十六話 水切り

          第二十五話 若者の旅に地図はいらない

          もくじ 1,900 文字 「まったく自業自得なんだよ!」  腹立ち紛れに、岡崎が足元の小石を蹴り上げた。玉石だらけの川原を、あちこちぶつかりながら石が転がっていき、最後に大きく跳ね上がって、ほかの石の間に紛れ込んだ。そこを睨みつけ、忌々しげに煙草を口に運ぶ岡崎。  岡崎が煙草に火をつけたのは、バス停があった空き地を出発して以来のこと。あれからすでに一時間以上経っている。 「そうカリカリするなって。お前だって、こうして一服できたんだし」  川下へ棚引いていく煙を目で追いつつ、

          第二十五話 若者の旅に地図はいらない

          第二十四話 春愁

          もくじ 2,007 文字  昨日の夕方、岩見沢の家に行った。借りていた漫画を返すためだ。岩見沢の仕事は早出で、真一が訪ねて行った六時頃には夕食も済み、インターホンのボタンを押すと、すぐに応答があった。  用事が済んで、門の前で立ち話をしていたら、大学から帰ってきた岡崎が、スクーターで目の前を通りかかった。岡崎の家は、岩見沢の家のすぐ近くにある。岩見沢の家の前の道路は、岡崎が幼稚園の頃から使っている歴史ある通学路なのだとか。 「こいつの就職先が地元に決まったら、通勤にもこの道

          第二十四話 春愁

          第二十三話 鎮守の森

          もくじ 3,747 文字  ガソリンスタンドで給油を済ませ、代わり映えのしない景色の国道を、ノンストップで走った。湾岸戦争で一時跳ね上がったガソリン価格は、その後ずっと下がり続け、今やリッター八十円台だ。ガソリン代を割り勘にすれば、遠出も負担にならない。  ああだこうだと話し合ったにもかかわらず、具体的な行き先は決まらなかった。国道を一時間も走れば、ちらほらと観光名所が出て来るのだが、生まれも育ちも常世野市の岡崎や小林にとっては、どこも行ったことがある所ばかりで、新鮮味がな

          第二十三話 鎮守の森

          第二十二話 渡り鳥

          もくじ 3,731 文字  寒い日と暖かい日が目まぐるしく入れ替わっている。陽射しは一貫して夏のそれに近いが、気温は乱高下し、半袖で過ごせた日があったかと思えば、翌日には冬物の上着を引っ張り出したりで、毎日が気忙しい。四月半ば。蓬莱公園では、桜に代わってツツジが、人々を呼び寄せ始めている頃だろう。  もっとも、写真の中の桜は、まだ健在だ。部屋のカレンダーに写っているのは、どこかの有名な一本桜。澄み切った青空の下、斑雪の山並みを従えて、満開の偉容を誇っている。寒い地方の桜みた

          第二十二話 渡り鳥

          第三章 「山水に遊ぶ」 始まります。 この章は、陶淵明の桃花源記と、平家の落人伝説に着想を得て書きました。幻想的なユートピア譚がお好きな方はぜひ。 釣りの話が二、三話あります。 90年代の小ネタも少々。 季節感たっぷり。 心理描写はやや難解かもしれません。

          第三章 「山水に遊ぶ」 始まります。 この章は、陶淵明の桃花源記と、平家の落人伝説に着想を得て書きました。幻想的なユートピア譚がお好きな方はぜひ。 釣りの話が二、三話あります。 90年代の小ネタも少々。 季節感たっぷり。 心理描写はやや難解かもしれません。

          第二章 「春の祭典」 あとがき

          もくじ  第一章に比べて長めの章になった第二章ですが、核心部分は、やはり第十九話 「世界が失われる時」 になるでしょう。ここでは大人になる 「瞬間」 を描いていますが、これは私の若い頃の経験が元になっています。  風邪を引いたあとに、咳が長引いて病院に行った日でした。小説の舞台と同じ桜の時期で、病院の周りの桜も満開でした。診察が終わった帰り道のことです。桜並木を眺めて歩きながら、自分が目にした景色にふと違和感を感じました。違和感の中身を言語化することは難しく、小説でも散々苦

          第二章 「春の祭典」 あとがき

          第二十一話 入相の鐘

          もくじ 2,029 文字  第二広場に差し掛かったあたりで、会話が途切れた。歩幅の大きい久寿彦に、真一は遅れを取り、モッズパーカの背中を追って歩く。  仄かな花明かりを放つ遊歩道は、まだどこか騒然としている。日中歩いていた花見客の気配が、消えずに残っている感じ。地面についた無数の足跡が、そう思わせるのかもしれない。  この区間は、桜のトンネルがまっすぐ続いていて、見通しがいい。薄紅色の雲から舞い落ちる雪片が、ひらひらと地表の鹿の子模様に加わっていく。見事な桜並木だ。このまま

          第二十一話 入相の鐘