<連載小説> 沈み橋、流れ橋
―明治・大正・昭和 一族三代のものがたり―
第1章(19)
駒蔵の性格上、一から事業を立ち上げること、経営の新しい仕組みを作ること、人材を大胆に配置すること、といった物事の始まりには、体がうずうずするほど興奮し集中力を発揮するのに、いったんそれが軌道に乗ってくると、途端に放り出したくなる。そんな駒蔵には格好の相棒、岡坂愛之助がいた。彼はむしろ駒蔵が描き上げた設計図を実現させていくことに長けていた。いつ投げ出しても拾ってくれる相棒のいる安心感は、駒蔵にとっては絶大なものだ