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小説『ワンダリングノート・ファンタジー』(58)再会して
Chapter58
「あっ⋯⋯後ろを見て! いつの間にか現れたわ!」
レナは子供の姿のトムの肩を叩きながら、驚きの声をあげて指を差した。学生服のトムは自分の姿が彼女たちに見えているのかと思ったが、その視線の先にある違和感に気づき、彼はすぐに後ろを振り返った。
「あーっ! トムがデートしてるー! そのきれいなお姉さんは、誰なの?」
真後ろからいきなり喋り出した少女に驚き、トムは思わず「うわっ!」と叫んだ。伸ばし始めたブロンドヘアと水色のワンピースを好んで着る彼女の姿は、間違いなく子供時代のレナだと彼は確信した。
「レナっ!? ホントに⋯⋯本当に会えた!! やったよ、お姉ちゃん!!」
子供のトムの目は輝き、大はしゃぎで少女のレナに駆け寄った。彼は両手で彼女の手を握りしめ、涙を浮かべながら言葉を続けた。
「ごめんね!! 僕がこんな、危ない場所で遊ぼうなんて言ったから⋯⋯でも、ホントにまた会えるなんて思わなくって! このお姉ちゃんが、ここまで連れてきてくれたんだよ! そしたら君が絶対、ここにいるからって言って、そしたら⋯⋯」
「ちょっと、何!? トム、手が痛いよ! い、いつもは手なんか握らないくせに?」
「あっ、ゴメン! ビックリして嬉しくって、力が入っちゃった!」
二人の無邪気さと感動の再会に、レナは安堵の表情で微笑み、トムも笑顔でその光景を見つめた。
「何かよくわかんないけど、デートは許してあげる! えっと、お姉さんは⋯⋯トムがまた何かいたずらをして、それを助けてくれたとか、なのかな?」
レナはにっこりと微笑んで頷いた。一方で、少女のレナは不思議そうに続けた。
「でも⋯⋯この『お兄さん』は誰? お姉さんのホントの彼氏さんかな?」
トムとレナはその少女の言葉に思わず息を呑んだ。トムは自分の姿が幼い彼女に見えているとわかり、声をかけた。
「き⋯⋯君は僕の姿が見えているのかい!? だったら、彼女たちに伝えて欲しいことがあるんだ!!」
「う〜ん⋯⋯お兄さんのそれは、パントマイムとか? 口パクでやるやつ?」
トムは、少女のレナには自分の姿は見えても声が聞こえていないと判断した。彼はジェスチャーをして、自分自身と、驚いた顔をしたレナを交互に指差した。
「きゃはは! 何その動き!? お兄さんって面白いね!」
「レナちゃん! あなたには誰か見えてるの? それって、学生服を着てる?」
気になったレナが、たまらず少女のレナに問いかけた。
「え? うん。制服を着て、ここに立ってるよ! 背はお姉ちゃんより高いね、スラっとしてる。でも⋯⋯なんだろう、不健康そうな感じ。ちゃんとご飯を食べてるのかな?」
レナは吹き出して笑い、トムのいる方に視線を移した。彼女の眼差しは、どこか彼への伝えきれない想いのような感情を秘めていた。その空気は二人の間に溶け込み、無言でありながらお互いの気持ちが通じ合っているようだった。
「さて⋯⋯と、色々と上手くいったようね! お姉ちゃんも、もしレナちゃんが見つからなかったら、どうしようかと思っちゃった。」
「本当にありがとう、お姉ちゃん!! 僕もあの『狭間の世界』から出られたし、レナにもまた会えたし。でも⋯⋯このあと、どうするんだっけ?」
「え? この後⋯⋯そうね、お姉ちゃん⋯⋯そこまで考えてなかった!」
レナの明るく楽観的な性格に、トムもやれやれと肩をすくめ、笑顔で彼女を見つめ直した。
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