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高校野球コラム(2021)

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2021年度の高校野球コラムです。第103回全国高校野球選手権、そして滋賀大会の中で高校野球ハイライトなど番組で伝えきれなかったエピソードを紹介します。この年からnoteでのコラ… もっと読む
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#滋賀県

成長曲線はホームランの如し~高校野球ハイライト延長戦特別編・近江

成長曲線はホームランの如し~高校野球ハイライト延長戦特別編・近江

「新チームの捕手は島瀧悠真」。水口東を破った去年の独自大会決勝直後、近江の首脳陣から聞かされた構想は衝撃的だった。確かに肩は強い。長打力もある。それでも名門で1年生ながら甲子園ベンチ入りを果たした投手だ。1学年下の山田陽翔が台頭してきたとはいえ、「投手・島瀧」を捨ててまでのコンバートには不安もよぎった。

結果的に不安は現実となる。秋は滋賀学園と神戸国際大附属に、春は立命館守山に、いずれも終盤に決

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圧巻!盤石!近江1強時代再来か~2021夏の最終報告

圧巻!盤石!近江1強時代再来か~2021夏の最終報告

第103回全国高校野球滋賀大会が閉幕。近江が中止だった去年を挟み、3大会連続15回目の甲子園出場を決めました。優勝自体は16回目。甲子園は春・夏合わせ20回目です。おめでとうございます!
以下、私なりの総括です。いつも通りのランク制。ひまつぶし程度にどうぞ。

近江の戦いぶりランク1位・近江は盤石の強さでした。岩佐、山田両投手は大会を通して打ち込まれることなく、懸念されていた打線も1番に抜擢された

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飛躍期は楽しさとともに~高校野球ハイライト延長戦14日目・立命館守山

飛躍期は楽しさとともに~高校野球ハイライト延長戦14日目・立命館守山

「創設期は終わった」。大会前、秋武祥仁監督の決意を話半分に受け止めた自分が恥ずかしい。創部6年目の立命館守山が準優勝を成し遂げた。捕手からコンバートされた北村怜士が好投を続け、打線は花田泰希をケガで欠きながら全員がカバー。シードにふさわしい戦いぶりだった。

守山市民球場が借りられない日はグラウンドの一角しか使えない。完全下校も早く、練習時間は限られる。名門大学の冠を持ちながら、飛躍期入りはもう少

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犠牲の先のストーリー~高校野球ハイライト延長戦13日目・近江

犠牲の先のストーリー~高校野球ハイライト延長戦13日目・近江

3回戦を終えノーヒット。打撃で苦しむ近江の主将・春山陽生は、帽子の裏に大きく『犠牲』と書いた。「結果を出したい気持ちを捨ててチームに尽くす」。準々決勝では安打こそ出なかったが、言葉通りチャンスを広げる死球でガッツポーズを見せた。

「自分たちの代で負けて…1年のほとんどが大変な時期だった」。去年の秋は決勝で敗れ、県内連勝は34で止まった。今年の春は3回戦で敗退し、シード権も失った。全ての優勝旗が学

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散る花は咲くからこそに美しい~高校野球ハイライト延長戦12日目・水口東

散る花は咲くからこそに美しい~高校野球ハイライト延長戦12日目・水口東

夏の大会前、水口東の3年生はS、A、Cの3班に分かれた。主力から控えのランク付け…ではない。Cはコア。打線の中心として結果を求められる。Aはアシスト。つなぎ役として小技も練習する。Sはスペシャリティ。代打や守備固めなど、ここぞの場面で出番が来る。一人一人の役割を明確にし、効率良い練習につなげた。

「表現が適切かわからんけど…散り方って大事やと思う。ひたむきに頑張った選手に少しでも活躍の場があれば

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拓け、名門の新時代~高校野球ハイライト延長戦11日目・八幡商業

拓け、名門の新時代~高校野球ハイライト延長戦11日目・八幡商業

監督交代がこれほど衝撃ニュースとして広がる公立高校は八幡商業ぐらいだろう。1987年に就任し、夏4連覇も成し遂げた林勝さんが15年。2002年に就任し、甲子園で帝京と名勝負を繰り広げた池川準人さんが19年。「平成を2人で乗り切っていただいた」と笑う小川健太監督も池川さんと同じ八幡商業OBだ。

母校の監督就任は重圧と背中合わせでもある。春の取材日も練習グラウンドには多くのOBが駆け付け、「監督、あ

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仲間の声が奇跡を呼ぶ~高校野球ハイライト延長戦10日目・草津

仲間の声が奇跡を呼ぶ~高校野球ハイライト延長戦10日目・草津

去年の秋にベスト8へ進み、21世紀枠の県推薦にも選ばれた草津。勢いを持って春の大会に臨もうとした今年3月、衝撃が押し寄せた。レギュラー外野手だった2年の大野楓芽が交通事故に遭う。大会に間に合うのか、チームに戻れるのか、いや、命は大丈夫か。

「大野起きろ!」。意識不明の重体で入院した大野へ、正捕手の堀井優大らが部員の声を録音して家族に送った。「医師から『耳は聞こえているので好きな音楽などを聞かせて

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強豪復活の灯をともせ~高校野球ハイライト延長戦9日目・北大津

強豪復活の灯をともせ~高校野球ハイライト延長戦9日目・北大津

「いま振り返っても泣きそうになるねん」。3月のメモにこの言葉が残っているあたり、思いの強さがうかがえる。2018年の秋に就任した寺嶋祐介監督にとって、この3年は「北大津は終わった」と言われた悔しさと戦い続けた日々だった。

練習試合で人数が足りないと自ら出場し、元・独立リーガーの守備力を間近で見せた。4番でエースの上坂真人には、精神的に大人になることを何度も説いた。選手の体を大きくするため、自宅で

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忍びのエースに光を当てる~高校野球ハイライト延長戦8日目・水口

忍びのエースに光を当てる~高校野球ハイライト延長戦8日目・水口

水口のエース・藤原聡大は三重県伊賀市の出身である。と言っても実家は滋賀との県境。中学時代のチームも、家族の職場も、そして兄の卒業校も滋賀県内にあり、本人は何一つ違和感なく30分弱で通学できる水口高校を選んだ。

伊賀から甲賀へ、忍者の郷を飛び越えて始まった高校野球。抜群の運動能力を誇り、「今でもチーム1」と種谷涼監督が評価するほどの内野手だったが、1年秋から投手にコンバート。2年間で体重を15キロ

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元虎投手、甲子園を目指す~高校野球ハイライト延長戦7日目・光泉カトリック

元虎投手、甲子園を目指す~高校野球ハイライト延長戦7日目・光泉カトリック

光泉カトリックの伊藤文隆監督は阪神タイガースの投手だった。通算54勝を上げ、1985年の日本一にも貢献。指導者としては2009年にクラブチームを全国優勝に導き、県内では元巨人の西村高司さん(長浜)以来となる元NPB選手の監督就任を果たした。

出身は愛知の大同工業。最後の夏はエースとして孤軍奮闘するも、準決勝で現在の中京大中京に敗れた。「甲子園のマウンドはプロでこそ立ったが、どうしても高校で…」。

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必然の“2代目”バッテリー~高校野球ハイライト延長戦6日目・綾羽

必然の“2代目”バッテリー~高校野球ハイライト延長戦6日目・綾羽

「親子2代で同じチーム」は聞いたことがあっても、「親子2代でバッテリー」は初めて聞いた。綾羽のエース・矢野航成の父親と、捕手・金山凌大の父親は、どちらも国際情報の2期生だった。

矢野の父・年啓さんは山田久志を彷彿とさせるサブマリン。金山の父・裕政さんは抜群の統率力を誇る主将。幼なじみのバッテリーで72回大会に臨むも、1回戦で大敗した。「力を発揮できないまま終わった」と2人が振り返る通り、あまりに

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ミラクルの重圧に向き合う~高校野球ハイライト延長戦5日目・甲西

ミラクルの重圧に向き合う~高校野球ハイライト延長戦5日目・甲西

甲西高校のセカンド、内林君―。こんなアナウンスが流れれば、どうしても期待は大きくなる。「自分から弱音を吐いたことは一度もないが、重圧は間違いなくあったと思う」。東兼也監督は内林叶多主将の心情をおもんぱかった。

父の和彦さんは「ミラクル甲西」の二塁手。滋賀大会では11安打を放ち、ラッキーボーイとしても知られた。兄の瑞貴さんも近江の投手として甲子園に出場。進学先を迷っていた内林だが、父から「一緒の環

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崩れた自信、重ねた不安~高校野球ハイライト延長戦4日目・瀬田工業

崩れた自信、重ねた不安~高校野球ハイライト延長戦4日目・瀬田工業

「プレッシャー」「不安が大きい」「まだまだ弱い」…古賀陽大主将の取材メモからは、甲子園を狙うチームと思えない言葉ばかり出てくる。小辻鷹仁投手を擁した去年の瀬田工業は、小椋和也監督が「大会が本当に楽しみだった」と振り返る充実布陣。だが独自大会の変則日程が影響し、近江に敗れた時には8月の中旬を迎えていた。

ベンチ入り2年生は1人だけの状況で、チーム作りも出遅れる。秋の県大会は初戦敗退。積み上げた自信

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再生工場、稼働中!~高校野球ハイライト延長戦3日目・日野

再生工場、稼働中!~高校野球ハイライト延長戦3日目・日野

滋賀県内の「町」には日野と愛知しか高校がない。おととしのベスト8が記憶に新しい日野でも、本格的に野球をするには通学環境などの苦労も多い。谷口顕監督によると、推薦制度があっても腕に自信がある選手の入部は少ないという。

だからこそ、谷口監督は選手の背中を押し続けている。「頑張れるのは高校が最後。せっかくだから一生懸命やってみないか」。中学時代に控えだったり、硬式を経験していなかったりした選手であって

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