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忍びのエースに光を当てる~高校野球ハイライト延長戦8日目・水口

水口のエース・藤原聡大は三重県伊賀市の出身である。と言っても実家は滋賀との県境。中学時代のチームも、家族の職場も、そして兄の卒業校も滋賀県内にあり、本人は何一つ違和感なく30分弱で通学できる水口高校を選んだ。

伊賀から甲賀へ、忍者の郷を飛び越えて始まった高校野球。抜群の運動能力を誇り、「今でもチーム1」と種谷涼監督が評価するほどの内野手だったが、1年秋から投手にコンバート。2年間で体重を15キロも増やすうちに球速は140キロを超え、いつしか注目の存在になる。

体の成長で忍びの雰囲気こそ薄くなったものの、鍛え上げたのは忍びの精神。「以前は自分が抑えさえすれば良いと思っていた。今は自分が目立たなくても勝てば良い」。春の準々決勝では滋賀学園に敗れ、相手エース・阿字悠真との実力差を痛感。チームの目標「滋賀1」のため、影に徹する覚悟だった。

滋賀学園へのリベンジを誓った夏の初戦。藤原は中盤まで好投を見せるも、終盤に打ち込まれ逆転負けを喫する。試合後は「リードを守り切れず情けない」と目を真っ赤にした。ただ、この日は近畿地方の梅雨明け。太陽の光を一身に浴びて奮闘したエースの姿は、きっと多くの目に焼き付いたはずだ。

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