色とりどりのこの世界

僕らは初めて授かった、ちいさなちいさな命を失うことで、この生きている世界の深い悲しみの『色』を知った。

あの時は世界を憎み、運命を呪うような灰色の世界にいたけれど、少しずつ、少しずつ時間が経つにつれて、また自分が見える世界に色が戻ってきたように感じる。

人生は何が起こるかわからない。

もしかしたら、またおこちゃんに出会うことができるかもしれないし、もしかしたらそれは『違う形』で出会うことにな

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またワクワクと前に進めます♪ありがとうございました(*´∀`)ノノシ
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無事カエル

『こっちを通ってみようか』

水子供養のお地蔵様に『おこちゃんへの願い』を伝え、僕らは観光客が少なくなった浅草を探索していた。

普段ならごった返すこの観光名所も、コロナが流行している今はガラガラで歩きやすい。

そんな中、僕らは『あるもの』を探していた。

それはおこちゃんとのお別れを数日前に控えていたある日の夜のことだった。

・・・・・

『せっかく来てくれたお腹のおこ、いなくなっちゃうと寂

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また一歩を踏み出す力をもらえました♪( *´艸`)アリガトー
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ハリネズミ

ポツポツと雨が振り出すなか、なぜか僕ら2人だけは仲見世通りの外れで、不穏な空気をまとっていた。

それはほんの些細なきっかけ。

普段のお互いなら気にもしないような、ちょっとした言葉の衝突。

しかし、この時の僕らはお互いにお互いを傷つけあってしまっていた。

おそらにかえってしまったおこちゃんのために、浅草寺の水子供養のお参りに来たのに、こんなピリピリとした状況ではダメだ。

僕はそう感じて、以

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これまで通りの『日常』

2020年7月18日

…今日は土曜日だ。

おこちゃんとお別れした日から、もう一週間も経っていた。

僕らの中でその日が1つの区切りになったことや、術日が予想以上にバタバタとしていたことで、あの日から不思議と涙を流すことは少なくなっていた。

そしてそれと同時に、『いつもの日常』に慣れてしまう自分に自己嫌悪を感じる日々でもあった。

僕らはこれからまた先週手術をした病院に、術後の診察をしに行く。

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おそらの世界

『きっと、あの雲のあたりじゃないかな』

望んでいなかった中絶手術の翌日、僕らは家から少し歩いたところにある、川沿いの土手を歩いている。

おこちゃんが『無脳症』ということがわかった夜、僕は必死になって無脳症という病気について調べた。

そして調べれば調べた分だけ、『無脳症』というものは絶望的で、救いの無い病気だということを理解するほか無かった。

そんなときに、僕は同じようにお腹の子が無脳症と宣

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親が子にしてあげられること

2020年7月12日

…目が覚める。

今、僕はどういう状況なんだ?

まだしっかりと目覚めていない頭を稼働させ、昨日のことを思い出してみる。

そうだ、昨日は病院に行って、妻のお腹にいたおこちゃんとお別れをした日だった。

その後、妻が麻酔の効果で大変なことになり、急遽車でバタバタと自宅に帰り…。

ここでようやくハッキリと昨日出来事を、僕は思い出した。

・・・・・

僕はレンタカーを返却し

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嵐の後に

『…タクシーで良かったよなぁ…』

適当なカーラジオを流しながら、僕は1人車を運転しながら呟いていた。

・・・・・

車を病院の前に止め、僕は看護士さんと共に妻を借りてきた車へと連れ出す。

麻酔がまだ効いているせいで、妻の足元はフラフラとしていて、1人では到底歩くことができないようだ。

階段は慣れている看護士さんに任せ、僕は先に妻の靴を用意したり、ドアを開けたりと準備をしていた。

『駐禁、

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僕の使命

ガチャ、バタバタバタッ…

妻を見送って30分が過ぎた頃、今まで静かだったこの部屋に、何やら物音が聞こえてきた。

泣きつかれて放心状態だった僕は、慌てて意識を取り戻す。

ガラガラガラ

入り口の扉が開き、先生と看護士、そしてストレッチャーの上には、力なく横たわる妻の姿があった。

その衝撃的な姿に驚き、すぐに妻に駆け寄ろうとする僕に、先生が『ご主人は座ったままで結構です』と声をかけて制する。

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抑えられていた『感情』

こんなにも涙を流し、苦しそうにうめき声をあげている妻の姿を、僕は初めて見た。

その姿は今まで理性で抑えられていたものが一気に噴き出したような、母親としての『本能』のようなものだったのかも知れない…。

・・・・・

僕らは早めに病院に着いてしまい、近くの公園で時間を潰していた。

長い梅雨空が続く中、奇跡的にも今日は晴れている。

お別れをするという日が、せめて晴れていてくれて本当に良かった。

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再会を願って

『あそこのポッカリ空いた雲のとこ、あの辺りにおこちゃんは帰るのかもね』

僕らはお別れをするおこちゃんのことを、『おそらにかえる』と表現している。

とても幼稚で、ファンタジーな表現かも知れないが、この悲しく非情な現実を受け止めるためには、それぐらいでちょうど良いんだ。

『そうだね、きっとこれからはおそらから私たちのことを見ててくれるね…』

そう妻は答え、僕らはベランダから見える景色を目に焼き

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