凡筆堂

昭和中盤生まれの男です。グラフィックデザインとコピーライティングを生業としてきましたが…

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昭和中盤生まれの男です。グラフィックデザインとコピーライティングを生業としてきましたが、現役をほぼ引退。今後は明るい調子のコラムやエッセイをはじめ、軽い読み物などを発表して行きます。雑文をひとつ。「ナメクジに塩をかけると死んでしまう。やっぱり塩分の摂りすぎはよくないんだな」。

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〔ナンセンス劇場〕陥落してやる

●某月某日  映画を観た帰り、一人の男とすれ違った。あたしもその男も、お互いを一瞥しただけで通りすぎたけど、すれ違いざま、あたしはわずかに心地よいめまいを覚えた。男からわずかに漂い出ていたフェロモンに、女の本能が反応したのだ。  こんなことは初めてだ。いままでの三十年間、男を刺激することはあっても、男に刺激されることなど一度もなかった。  あの男はたしかにいい男だった。日本人ばなれした彫りの深いマスクといい、深く澄んだ目といい、あるのは好感だけで、いやらしさなどは全然なかっ

    • カラタチの花が咲いたよ

       あいまいな記憶で自信がないが、5年だか6年だか前に、カラタチの苗木を10本買って植えた。  ところが、うっかり刈り払い機で切ってしまったり、理由は不明だが枯れてしまったりして半分に減ってしまった。  そのうち数本が、昨年から花を咲かせるようになった。  私が「カラタチ」でまず思い浮かべるのは、島倉千代子のヒット曲のひとつ「からたち日記」(西沢爽/作詞、遠藤実/作曲)だ。  何歳頃のことだか覚えていないが、テレビから流れてくるあの高くきれいな歌声と、小気味よくきれる節回しは

      • ブロッコリーの出世までしばしお待ちを

         春もたけなわ、というか、初夏を目前にして周りの景色も精気に満ちてきたようだ。拙宅の菜園のニラやホウレンソウは毎日のように食卓にのぼっているし、ニンニクやタマネギなども、人間の側から勝手に言えば夏の収穫に向かって活気づいている。  農林水産省が、ブロッコリーを指定野菜に追加すると発表した。その報道があったのは、正月気分も抜けた今年1月22日だった。私はこの報道に接するまで、指定野菜というものの存在を知らなかった。  私はブロッコリーもカリフラワーも栽培するが、ブロッコリーと

        • ダニとダニのようなやつ

           このところ、マスメディアでダニのことを見聞きするようになったと思っていたら、「只今休業。」さんが「街中でも、マダニにやられる」という記事を投稿されていた。  ほう、ほんとにそういうことがあるんだなと興味深く拝読したが、その翌日には産経新聞に、「マダニ感染症 東に拡大」という見出しの記事が載っていた。小見出しには「高い致死率、ペット通じた事例も」とある。  その感染症とは、「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」という、名前からして不気味な病気をさしている。  これまでは西

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        〔ナンセンス劇場〕陥落してやる

          30万本の水仙と120本の桜が共演

           群馬県の東吾妻町は国内有数のラッパ水仙の名所で、毎年4月前半に「東吾妻町すいせん祭り」が開催される。  ただし、祭りといってもコンサートなどが行われるわけではなく、町が募集したキッチンカーなどが小規模に店を広げるだけだ。  前日の雨模様の空から一転して晴れあがった10日の昼ごろ、ひとりでいそいそと花見に行ってきた。入場料も駐車料も不要だ。  約30万本の水仙が咲きほこる。桜並木の右側(向こう側)には河川敷が広がり、吾妻川が流れる。桜の品種はソメイヨシノ。  会場の岩井

          30万本の水仙と120本の桜が共演

          情けは自分のため

          〔解説〕  物事というものは時代の移り変わりとともに変化するのが世の常である。本来使われていたことわざの「情けは人のためならず」もその一つだ。  ただし、これは変化というより意味の取り違いが激しくなり、間違った状態で定着したといえる。  文化庁による「国語に関する世論調査」でも、正しい意味を知っている人と、誤って捉えている人がほぼ半々という結果になっている(調査対象は全国の20歳以上の男女)。  ちなみに、2010年度では正答が45.8%、誤答が45.7%だった。幸いなこ

          情けは自分のため

          花も実もない

          〔解説〕  「花も実もある」ということわざは古くから親しまれているが、この反対の意味をもつ「花も実もない」が近年多用されている。しかし、「花も実もない」は正式な格言とされていないため、「格言に寄りそう花と実の市民クラブ」から、日本格言制定委員会に登録申請がなされた。  ところが、日本格言制定委員会はいいかげんすぎて話にならないため、新たに「全国格言提案協会」が設立され、簡単に審査して新たな格言として登録された。  参考までに、本来の「花も実もある」は、木に花が咲いて実もな

          花も実もない

          現代おビョーキ大全〔慢性美炎〕

           美しくなろうとする意識が高じて度が過ぎ、日常生活になんらかの影響をおよぼすほどになる。罹患者の大半は一部の学生を含む社会人女性である。「美炎」の発音は「びえん」だが、鼻の疾患である「鼻炎」とは関係ない。  なお、本事典全般に共通することだが、この大全で言うところの病気とは「おビョーキ」のことである。 【症状】  慢性美炎は、初期の段階では肌の色合いをととのえたりシミを隠したり、アイメイクに凝ったりする。  しだいに唇の色やつや、厚みなどを強調したり、顔の明るさを印象づけ

          現代おビョーキ大全〔慢性美炎〕

          木はどうやって水を吸い上げるのだ

           そろそろ本格の春となって、あっちこっちで花が咲きはじめる。自然の摂理はよくできたもので、ちゃんと環境の変化を感じとって生命活動を活発化させる。  そんななかで、私がずっと前から不思議に思っていたのが、木はどうやって水を吸い上げているのかということだった。ポンプやモーターなどはないのだ。  ひとりでぶつぶつ言っていてもしかたがないので調べてみた。すると、疑問は簡単だが答えは複雑という、ほぼ予想通りの結果となった。  おもな要素はふたつ。「浸透圧」と「蒸散」という現象だった。

          木はどうやって水を吸い上げるのだ

          蒔かぬ種が生える

          〔解説〕  この格言は、古くから存在する「蒔かぬ種は生えぬ」が元になってできた新しい格言である。  日本格言制定委員会の若手委員の一部から、「世の中の事象は確かに格言の通りではあるが、まともすぎておもしろくない」「少しは刺激的な雰囲気があってもいいのではないか」など、わかったようなわからないような、珍妙な意見が出たことが新格言制定のきっかけとなった。  本来の「蒔かぬ種は生えぬ」には二つの意味がある。一つは「ものごとは原因がなければ結果は生じない」という意味。もう一つは「

          蒔かぬ種が生える

          食後横になるとき左右どっちが下?

           子供のときから、食後横になるなら右を下にしろと言われてきた。胃腸の構造上、そのほうが胃の負担が軽減されるからだ。  ところが近年、ほんとは左を下にするほうがいいという話を聞くようになった。右と左では大違いだが、どっちが正しいのだ。  右を下にする理由は、胃の出口は右側にあるから、右側を下にすれば食べたものを排出しやすく、胃の負担が軽減するからということだ。  ほかに「胆汁が十二指腸に分泌されやすくなる」とか「心臓が圧迫されない」などがある。これらはなんとなく「ああ、そうか

          食後横になるとき左右どっちが下?

          ネコヤナギの花咲いて春告げる

           庭先の一角でネコヤナギが花盛りになった。三月なかばになっても寒暖を繰り返す毎日だが、そろそろ本格の春を迎える。  ネコヤナギはヤナギ科の樹木で、高さ3メートルくらいになる。  ネコヤナギの名前は、花(花穂)が猫の尾に似ていることに由来する。  雄しべと雌しべという意味ではなく、雄花と雌花というのがあるらしい。そしてそれぞれ木が異なるという。  下の写真は数年前のもの。名前は知らないが、この茶色の殻のようなものが、脱皮するようにとれて花が現れる。  下の写真の左上部分

          ネコヤナギの花咲いて春告げる

          知らぬ顔の反兵衛

          〔解説〕  元の言葉は、「知っているのに知らないふりをしたりしらばっくれたりする人。また、その態度のこと」を意味する「知らぬ顔の半兵衛」。(※ここまではパロディーではない)  これについて、「どうでもいいことを大まじめに追及する会」から、日本格言制定委員会に対し、「なぜ『半』という字が使われているのかわからない」という抗議があり、同委員会は昨夜臨時委員会を開いた。  その結果、格言のニュアンスからいえば「反」のほうが妥当という結論に達し、新たに「知らぬ顔の反兵衛」を制定す

          知らぬ顔の反兵衛

          鉄も石油もまだありますか

           ずいぶん前、私が現役時代に乗っていた日産のバネット・ラルゴというワンボックスカーは、7年間で21万6000キロ走った。この車は排気量2000ccのディーゼル車で、エンジンはタフなはずだったが、事務所の駐車場で大往生した。エンジンがかからなくなってしまったのだ。  レッカー車でディーラーに運び込んで調べてもらったら、エンジンを載せ替えるかオーバーホールするしかないと言われた。つまり、実質的には一巻の終わりであった。  日本の車は優秀だから、丁寧に乗っていればもっと長持ちした

          鉄も石油もまだありますか

          木枯し紋次郎を偲んで三日月村へ

           先日、嬶(かかあ)天下をテーマにした記事を投稿後、妙に木枯し紋次郎が懐かしくなり、紋次郎の故郷である〝三日月村〟(群馬県太田市)へ行ってきた。  木枯し紋次郎は、人気作家笹沢佐保氏によって生み出された股旅物時代小説のヒーローで、長い楊枝がトレードマークのニヒルな渡世人だ。いまでは知らない世代がかなり多くなっているだろうけど。  小説は1971年からスタートしてヒットし、後に中村敦夫主演でテレビ化、菅原文太主演で映画化もされた。  これらの大ヒットを受け、当時の藪塚本町(現

          木枯し紋次郎を偲んで三日月村へ

          群馬県は嬶(かかあ)天下なのか

           閏年でなければ、2月28日の昨日あたり、「2月も今日で終わりだね」とか、「もう、明日から3月か」などと言っていたはずだが、今年は一日遅れて今日言っている。  もちろん、何も言わない人や、私のように「今日は何日だっけ」なんて言っているおおらかな人も少なくないだろう。  閏年の2月がいつもより1日多いことによって、得している人や損している人がいるのだろうか。いつものように、どうでもいいことを大まじめに考える私の軽い頭のなかを、そんな疑問がのそのそと歩きまわっている。  さて

          群馬県は嬶(かかあ)天下なのか