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仲間の声が奇跡を呼ぶ~高校野球ハイライト延長戦10日目・草津

去年の秋にベスト8へ進み、21世紀枠の県推薦にも選ばれた草津。勢いを持って春の大会に臨もうとした今年3月、衝撃が押し寄せた。レギュラー外野手だった2年の大野楓芽が交通事故に遭う。大会に間に合うのか、チームに戻れるのか、いや、命は大丈夫か。

「大野起きろ!」。意識不明の重体で入院した大野へ、正捕手の堀井優大らが部員の声を録音して家族に送った。「医師から『耳は聞こえているので好きな音楽などを聞かせて』と言われていましたが、仲間の声が一番届いたと思います」(大野の母・芳子さん)。事故から2週間後に大野は意識を取り戻し、奇跡的な回復を遂げる。

夏の大会前に退院を知った安田智洋監督は、記録員として大野を登録することを提案。「全員大賛成だった。ベンチで声も出してくれる。絶対に負けられない」(堀井)。チームは接戦を立て続けに勝利し、大野は2つのウイニングボールを受け取った。

「練習を休んでいただけなのに…全員の思いが嬉しすぎた。草津に入学して本当に良かった」。後遺症は消えないかもしれない。ただ、選手として復帰を目指す大野の存在こそが刺激になっているのは間違いない。滋賀大会ベスト8は40年ぶり。今度はチーム全員で、夏の奇跡を起こしてみせる。

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