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創作大賞2024 | ソウアイの星⑯(最終話)
《最初から 《前回の話
(二十一)
並んで歩く朔也と健から数歩離れて、わたしは華と歩いていた。
「やっぱり、音楽堂かな」と訊くわたしに「そうだろうね」と華は言った。
時々、じゃれ合いながら歩く前の二人を、わたしたちは「子供みたい」と言いながら眺めた。
「朔也くん、なんか緊張してるね」
わたしの言葉に、華は黙って頷いた。
「集中してるのかもしれないけど、今日の朔也くんには今まで感じたこ
掌編集『球体の動物園』 かばうらら
今日、かばが来る。かばが来る。かばと会える。
目が覚めるとすぐにそう呪文のように唱えて、私はカーテンを開けました。眩しい朝の光が幸先良く、と言いたいところですが、外は雨。雨が無言で降っていました。残念に思い、私は一瞬目を閉じましたが、瞼の裏に浮かんだかばの顔は笑っていました。
かばには、昨日、確認の電話をしました。
「あの、明日ですよね。何か準備して欲しい物はありますか」
「そうですね、湯船
私が文章がうまいなと思うnoter
noteに投稿される記事は、みな文章がうまい。意見の相違はあっても、文法的に支離滅裂だとか、誤字脱字だらけの記事は見た記憶がない。
毎日100を越える記事を読んでいますが、その中でも特に「この人の文章はうまいな」と私が思うnoterを何人か紹介してみます。
このような基準で考えてみました。
選考基準
①一読して内容がスーッと頭に入ること。
②文章に深味があること。
③読後感が爽やかなこ
短編小説 | バースデーバルーン | 創作大賞2024
妹の頭が徐々に大きくなっていく。病気じゃない。
わかっているんだ。家族の誰もが。だけど何も言えやしない。
傷ついても、恥ずかしくても、怒っても、どうしたって、妹の頭は大きくなって、その成長を止めることは出来ない。
(一)
妹は僕の八つ下で、ぼくにとっては目に入れても痛くない存在だった。だけど、そんな例えですら口にするのも憚られるくらい、妹の頭は大きくなっていた。
その始まりはた
エッセイ | 作品は投稿した瞬間に自分だけのものではなくなる。
もう2年近く前のことになるが、「#作者がコントロールできること・できないこと」という記事を書いたことがある。
なかなか作者が思ったとおりには作品は読まれることがない。もっと作者の作品に込めた思いに耳を傾けたらどうだろう?、という気持ちで書いた。
だが、どんな作品であっても、それが古典的な地位を占めるような作品であればあるほど、誤読というか、換骨奪胎したような解釈をされるのはやむを得ないの
【読書コラム】自分より本や映画に詳しい人を見ると自信をなくしてしまうけど - 『さがしもの』角田光代(著)
うっかり本を借りてしまった。積読が何百冊もあるというのにやってしまった。
案の定、
「ありがとうございます! 読みます!」
と、答えて半年近く経ってしまった。1ページも開くことなく。
読書談義で盛り上がるとこういうことになりやすい。わたしは素直に面白そうと言ってしまうから、好意で、
「よかったら貸してあげるよ」
と、言ってもらいやすい。そして、つい、感謝の言葉を述べている。
【読書コラム】とどのつまり、文体ってなんなのだ?! プロとアマチュア、男と女、人気のあるなし。その差はいったいどこにある? - 『数字が明かす小説の秘密 スティーヴン・キング、J・K・ローリングからナボコフまで』ベン・ブラット(著),坪野圭介(訳)
高校生の頃、幸運にも、大江健三郎さんとお話しする機会を得た。最初、有名な小説家ということで、
「大江先生」
と、お声かけしたのだが、「先生はやめてくれ」と言われたことが印象的だった。
「大江さんと呼んでください」
当時、大江さんの初期作品にわたしはハマっていたので、どうしてこんな現実離れした設定を書くことができたのか、いろいろ質問させて頂いた。「そんなむかしの話を聞かれても」と言いつ