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芸術一般

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芸術について、なんでも書きます。はじめはヨーロッパ絵画をかなり題材にしていましたが、現在は映画評論・芸術論・文学論などが多くなっています。
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#エッセイ

<閑話休題>ホームズとポワロの生きた時代

<閑話休題>ホームズとポワロの生きた時代

 シャーロック・ホームズは、この名前自体が既に固有名詞化しているくらいに、世界中に膾炙した私立探偵の活躍を描く短編小説の主人公だが、彼の活躍した19世紀末ロンドンという、虚栄と繁栄が過度に達した世界を舞台にしているところに一番の醍醐味がある。

 また、アガサ・クリスティーが新たに創造した私立探偵エルキュール・ポワロは、ホームズに匹敵する探偵小説の主人公として、その名を世界中に知られている。ポワロ

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<ラグビー及びエッセイ>『スワーブをきりながら(私とラグビーとの長い旅)』

<ラグビー及びエッセイ>『スワーブをきりながら(私とラグビーとの長い旅)』

 2024年4月4日、『スワーブをきりながら(私とラグビーとの長い旅)』というエッセイを、Amazonの電子書籍及びペーパーバックで出版しました。

 これは、私が大学時代にラグビーに出会ってから、その後社会人(国家公務員)となり、いろいろな海外で勤務をしながら、現地でラグビー、タッチフットなどをしてきたこと、そして息子の(全国大会出場経験のある)高校ラグビーの父兄としての経験など、40年にわたる

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短編小説集出版のお知らせ(宣伝です)

短編小説集出版のお知らせ(宣伝です)

 この度、Amazonのkindleストアから、電子書籍として二冊の短編小説集を出版しました。一つは、長年書き溜めてきたクリスマスストーリーから9編を選んだ『クリスマスストーリーズ』。もう一つは、J.D.サリンジャーの『ナインストーリーズ』や中井英夫の『とらんぷ譚』(特に『幻想博物館』)のような作品をイメージした、九つの短編を選んだ『九つの物語』です。

 これまで、noteでいくつかの作品を投

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<芸術一般・エッセイ>関係の哲学

<芸術一般・エッセイ>関係の哲学

 哲学というほどのたいそうなものではないが、この世の人と人とのコミュニケーションとか、人がどう生きているのかとか、なぜ私がここにいるのかなどの、いわゆる根源的な疑問・テーマについて考えることは、昔から哲学という名称を持っていたので、私もそのまま表題に使わせてもらう。

 また、表題にある< >内の言葉は、noteマガジンの項目分けなのだが、そもそも<哲学>というマガジンを作っていない上に、私として

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<旅行記・エッセイ>『スワーブを切れたけど―海外都市の顔―』から、アカバとマントンの項目を抜粋して紹介

<旅行記・エッセイ>『スワーブを切れたけど―海外都市の顔―』から、アカバとマントンの項目を抜粋して紹介

 私は、1987年から2023年までの間、仕事と観光で世界の多くの都市や地域を訪問しました。その時の印象をエッセイにしたのが『スワーブを切れたけど―海外都市の顔―』です。25の都市または地域について、それらの一般的な紹介と私が訪ねたあるいは住んだときの出来事や記憶、そしてそれらから想起したあれこれをエッセイにしています。全部で58,000字の長文になるため、いきなりnoteに掲載するには長期にわた

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<書評>林達夫著作集 別巻 書簡

<書評>林達夫著作集 別巻 書簡

 全6巻の林達夫著作集は、1972年に平凡社から出版され、毎日出版文化章特別賞を受賞している。その後1979年に第8刷が増刷され、20歳だった私はアルバイトで貯めたお金で、全6巻を購入した。たしか、御茶ノ水駅前にあった書店だった。

 その後、勤め人になったこともあって、文学研究は一時休業の止む無きとなったが、1987年(初めての海外勤務でNZに行った年だ)にこの別巻が発行された。林達夫は、198

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<海外TVドラマ評>『スーパーナチュラル、シーズン15』及びシーズン全体を通しての感想

<海外TVドラマ評>『スーパーナチュラル、シーズン15』及びシーズン全体を通しての感想

 本当は2020年に終了するはずだった最後のシーズン15は、新型コロナウイルス感染拡大により撮影が続行できず、2021年シーズンに持ち越すこととなった。また、通常ひとつのシーズンは22話で構成され、また最後のシーズンとしても特徴あるエピソードを織り込むべきでありながら、いつもあるいわゆる「遊び」としての、主人公をパロディーの世界(例えば、西部劇、ホラー映画、ハイスクールものを茶化したもの)に迷いこ

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<芸術一般>第5回オマージュ瀧口修造展(1985年7月23日、銀座佐谷画廊)

<芸術一般>第5回オマージュ瀧口修造展(1985年7月23日、銀座佐谷画廊)

(これは佐谷画廊の瀧口修造展を見たときの感想です。当時、就職して3年が経ち、学生時代にはまっていたシュールレアリズムなどの芸術論の世界に、つかの間戻れたことの感想です。これを、定年退職した今、「美しくない」箇所を加筆・修正するとともに、ニーチェのピッタリな言葉が見つかったので、巻頭に掲示します。)

「人生を遊戯のごとく見えさせ、われわれをありきたりの宿命から遠ざけてくれる芸術」
  F.W.ニー

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<閑話休題>円環的時間を語るための、ひとつのイメージ(一種の文学的断章)

<閑話休題>円環的時間を語るための、ひとつのイメージ(一種の文学的断章)

 (スティーヴン・ホーキングの語る虚時間とは、虚数によって表される時間であり、虚数は英語ではimaginary time であり、その説明は、Time measured using imaginary numbers. ⦅虚数によって測られる時間⦆となる。だから虚時間とは、正確には、想像数<または想数>によって、測られる想像時間<または想時間>、カタカナを使えば、イメージ時間となるのだ。つまり、イ

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<映画評>シャイニング

<映画評>シャイニング

 スタンリー・キューブリックの映画手法による面白さが、よく表現された作品である。キューブリックの最高作品は、なんといっても『2001年宇宙の旅』だが、『2001年・・・』の素晴らしさは、何よりもセリフをなるべく少なくして、映画本来の表現力である映像で語りかけていることに集約される。そして、『シャイニング』も、映像による表現力に同様の素晴らしさを見つけることができる。

 冒頭の、主人公一家が山道を

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<芸術一般及び書評>『チャタレイ夫人の恋人』とD.H.ローレンス

<芸術一般及び書評>『チャタレイ夫人の恋人』とD.H.ローレンス

 昔、英文科の学生がD.H.ローレンスを「ド・エッチ・ロレンス」と呼んでいたごとく、D.H.ローレンスは、たんなるセンセーショナルな性を描いた作家と間違われている(ただし、21世紀に入ってからは、この作品に対する研究成果を反映した人文科学的見地から作成された映画が出ており、ローレンスに対する認識はようやく正常なものになってきた感がある)。

 もしローレンスが性的であるというなら、ローレンスの後に

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<書評>『ロバート・キャパ写真集』

<書評>『ロバート・キャパ写真集』

2017年 ICPロバート・キャパ・アーカイブ編 岩波文庫

 世界で歴史上初めて有名になった、報道写真家・戦争写真家ロバート・キャパ、本名エンドレ・フリードマンという、ユダヤ系ハンガリー人で後にアメリカ市民権を得た「キャパ」の写真集である。

 そこには、スペイン内戦、日中戦争、第二次世界大戦、戦後のヨーロッパやソ連の風景、イスラエル独立(第一次中東戦争)、ヘミングウェイ等の友人たち、戦後の日本

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<映画評>ラストサムライ

<映画評>ラストサムライ

 一言で言えば、ハリウッド映画の東洋(日本)趣味を満喫させるファンタジーである。ファンタジーというからには、現実からかけ離れた仮想世界での、リアリティのない物語と思ってもらってよい。そして、ハリウッド西部劇からの正しい伝統である、正義の味方としての主人公(キリスト教のヨーロッパ人)が、近代化していない未開の民(異教徒である先住民)を救う物語である。

 ただし、いわゆるアメリカンニューシネマ(19

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<芸術一般>写真集『この素晴らしき世界』

<芸術一般>写真集『この素晴らしき世界』

注:表題の画像は、写真集に入りません。
 最近、撮りためた写真(と言っても、スマホのなんちゃって写真です)が、ちょっと良いなあと思っている。そして、普通に撮影するのではなく、アップにしたり、大胆にトリミングしたりすることで、いささか芸術的になってきたような気分になっている。

 そこで、Facebookでコメントいただいた方の言葉を頂戴して、今回の写真集にしてみた。ルイ・アームストロングの同名の名

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