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松下幸之助「こわさを知る」
こどもは親がこわい。
店員は主人がこわい。
社員は社長がこわい。
社長は世間がこわい。
また、神がこわい。
仏がこわい。
人によっていろいろである。
こわいものがあるということは、ありがたいことである。
これがあればこそ、かろうじて自分の身も保てるのである。
自分の身体は自分のものであるし、自分の心も自分のものである。
だから、自分で自分を御すこと
松下幸之助「感謝の気持ち」
人間というものはまことに勝手なもので、他人をうらやみ、そねむことがあっても、自分がどんなに恵まれた境遇にあるか、ということは案外、気の付かないことが多い。
だからちょっとしたことにも、すぐに不平が出るし不満を持つのだが、不平や不満の心から、良い知恵も才覚もわきそうなはずがない。
そんなことから、せっかく恵まれた自分の境遇も、これを自覚しないままに、いつのまにか自分の手でこわしてしまいがちで
松下幸之助「獅子の崖落とし」
獅子はわが子をわざと谷底に突き落とす。
はげしい気迫である。
きびしい仕打ちである。
だがその厳しさのなかで、幼い獅子は消してへこたれない。
必死である。
真剣である。
そして、いくたびかころび落ちながらも、一歩一歩谷底から這い上がる。
這い上がる中で、初めて自立を会得する。
他に依存せず、みずからのちからで歩むことの大事さを、みずからの身体でさとる。
つま
松下幸之助「追求する」
月に向けてロケットを発射する。
轟音とともにたちまち天空高久飛び立って、もはや人間の目には届かない。
しかし追跡装置が完備して、どこまでもこれを追う。
何千キロ、何万キロ、月の表面に至るまで、刻々にこれを追う。
追求する。
だからこそ、ロケット発射の意義がある。
成果がある。
追求しなければ何の意味もなし。
射ちっぱなし、消えっぱなしでは、浪費以外の何ものでも
松下幸之助「ノレンわけ」
昔は、お店に何年かつとめて番頭さんになったら、やがてノレンをわけてもらって、独立して店を持ったものである。
今でもそういうことが、一部で行われているかもしれないけれど、それでも世の中はずいぶん変わった。
生産も販売もしだいに大規模になって、店の組織も会社になって、だからもうノレンわけなどというものはすっかり影をひそめてしまった。
つまり、独立して店を持つということが難しくなってしま
松下幸之助「熱意をもって」
経営というものは不思議なものである。
仕事というものは不思議なものである。
何十年やっても不思議なものである。
それは底なしほどに深く、限りがないほどに広い。
いくらでも考え方があり、いくらでもやり方がある。
もう考えつくされたかと思われる服飾のデザインが、今日もなおゆきづまっていない。
次々と新しくなり、次々と変わってゆく。
そして進歩していく。
ちょっと考
松下幸之助「調子に乗らない」
失敗するよりも成功したほうがよい。
これはあたりまえの話。
だが、三べん事を画して、三べんとも成功したら、これはちょっと危険である。
そこからその人に自信が生まれ確信が生じて、それがやがては「俺にまかせておけ」と胸をたたくようになったら、もう手の付けようがない。
謙虚さがなくなって他人の意見も耳にはいらぬ。
こんな危険なことはない。
もちろん自信は必要である。
自
松下幸之助「敵に教えられる」
己が正しいと思い込めば、それに異を唱える人は万事正しくないことになる。
己が正義で、相手は不正義なのである。
いわば敵なのである。
だから憎くなる。
倒したくなる。
絶滅したくなる。
人間の情として、これもまたやむを得ないかもしれないけれど、われわれは、わがさまたげとばかり思いこんでいるその相手からも、実はいろいろの益を得ているのである。
相手がこうするから自
松下幸之助「コンプライアンス」
いかに強い力士でも、その勝ち方が正々堂々としていなかったら、ファンは失望するし、人気も去る。
つまり、勝負であるからには勝たなければならないが、どんなきたないやり方でも勝ちさえすればいいんだということでは、ほんとうの勝負とは言えないし、立派な力士ともいえない。
勝負というものには、勝ち負けの他に、勝ち方、負け方というその内容が大きな問題となるのである。
事業の経営においても、これ
松下幸之助「道をひらく」
富士山は西からでも東からでも登れる。
西の道が悪ければ東から登ればよい。
東がけわしければ西から登ればよい。
道はいくらでもある。
時と場合に応じて、自在に道を変えればよいのである。
一つの道に執すれば無理が出る。
無理を通そうとするとゆきづまる。
動かない山を動かそうとするからである。
そんなときは、山はそのままに身軽に自分の身体を動かせば、またそこに新しい道が
松下幸之助「信頼関係」
人から何かを命ぜられる。
その命ぜられたことをその通りにキチンとやる。
そこまではよいけれど、そのやった結果を、命じた人にキチンと報告するかどうか。
命ぜられたとおりにやって、その通りうまくいったのだから、もうそれでよいと考える人。
いや、たとえ命のままにやったとしても、その結果は一応キチンと報告しなければならない、そうしたら命じた人は安心するだろうと考える人。
その何でも
松下幸之助「力をつくして」
どんな仕事でも、一生懸命、根限りに努力したときには、何となく自分で自分をいたわりたいような気持が起こってくる。
自分で自分の頭をなでたいような気持になる。
今日一日、本当によく働いた、よくつとめた、そう思うときには、疲れていながらも食事もおいしく頂けるし、気分もやわらぐ。
ホッとしたような、思い返しても何となく満足したような、そして最後には「人事をつくして天命を待つ」というような、
松下幸之助「熱意があれば何でも出来る」
磁石は鉄を引き付ける。
何にも目には見えないけれども、見えない力が引き付ける。
自然に鉄を引き寄せる。
人が仕事をする。
その仕事をする心がけとして、大事なことはいろいろあろうけれども、やっぱり一番大事なことは、誠実あふれる熱意ではあるまいか。
知識も大事、才能も大事。
しかし、それがなければ、本当に仕事ができないというものでもない。
たとえ知識が乏しく、才能
松下幸之助「本気の商売」
こどもが親につきまとう。
うるさいほどにつきまとう。
ときに閉口するほどのことがあっても、それでも、つきまとわれればやっぱりかわいい。
うれしい。
自分のつくった製品、自分の売った商品、自分のやった仕事。
つくりっ放し、売りっ放し、やりっぱなしでは心が残る。
世間にもまた仕事にも相すまない。
おたがいに、つくることに真剣で、売ることに誠実で、そして仕事に真実熱心な
松下幸之助「目に見えない旗」
射場に行って射撃の練習をすると、遠い標的の下に監視の人がいて、発射のたびに旗を振ってくれる。
その旗の振り具合で、狙いが的を射たか、はずれたか、または右にそれたか左にそれたかが、一目でわかり、次の狙いを修正する。
こんなことをくり返して、しだいしだいに上達するわけで、もしこの旗を見なかったら、たとえ百万発の射撃をしたところで、それはいわば闇夜のめくら射ちに等しくて、ねらいの効果もわからず