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#小説

【小説】紫陽花の道

【小説】紫陽花の道

 休憩室の窓を開けても、隣の薄汚れたビルの壁が見えるだけ。空なんか見えない。それでも生ぬるい風が微かに流れて、窒息しそうな苦しさは少し和らぐ……ような気がする。だから私はいつも、休憩時間中いっぱい、窓を開け放つ。

 社割で買った鳥そぼろ弁当を食べていると、休憩室のドアからチーフが顔を出した。
「高崎さん、休憩14時までですよね? 今、ちょっといいですか。あ、全然、食べながらでいいんで」

 私た

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エッセイ | noteで個人企画に参加するということ。企画への愛を語りたい。

エッセイ | noteで個人企画に参加するということ。企画への愛を語りたい。

 なぜ今なのかは自分でも不明ですが、偏見たっぷりに語ってみたいと思います。



はじまり

 わたしが自分で書いた文章を、恐れ多くも〝作品〟などと呼び始めたきっかけは、超ショートショートを書いたことでした。

 初めは自分で考えた〝お題〟で書きました。それに飽きてきた頃、知人から〝お題〟をもらうようになりました。
 それが楽しくなって、5作くらい出来上がったところでnoteにやって来ました。そ

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わたしの「たまる」「処理する」

わたしの「たまる」「処理する」

長所を訊かれたら、言いやしないが
「情報収集能力」「データの分析能力」
たまる情報を取捨選択し、分析していく
それから戦略なりを立てる

仕事の話なら、前職の葬祭業では
ふらりと目についた仏壇屋に入り
価格はどこも似たり寄ったり
なので、どれだけの知識を従業員が持っているか
どんなアフターサービスがあるのか、聞いてくる

新設の霊園ができた、納骨堂がオープンした
お客の顔で、説明してもらい見学しな

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noteで小説を書いてみたけど

noteで小説を書いてみたけど

noteの話題に触れてみる

わたし自身、noteに新しい発見は特にない
ただ、新しい行動はあった

詩や小説を書く方々のを今まで以上、熱心に読む
ショートショートが3000字前後
他が短文になったのもあり、読んでいる

読んでいると、わたしも書いてみたくなる

情報商材とエッセイ、自己啓発はダントツに読まれ
俳句も含め、詩や小説は読まれにくい

読まれにくいジャンルを書くモチベーション
どうやっ

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自分と他人の意図は異なる

自分と他人の意図は異なる

『人を人として見る』

わたしに危害を加えた男性を人として見れず
警察に被害届を提出し
男性は傷害罪で逮捕された

男性にも親がいて、仕事があって
わたしのことを好いてくれるから
「可愛さ余って憎さ百倍」、なんて理解しなかった

万人に向けて、人を人として見るとは理想で
余程、達観した人物じゃないと
「人を人として見る」
「人を形として見る」に分けているように思う

冒頭のように極端な例ではなくと

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読みやすさは親しみやすさ

読みやすさは親しみやすさ

高校時代の制服はブレザーで
勉強さえしていれば校則が緩い、楽勝学校
個性がほしくて皆がやること以外を求めた

ラルフローレンの靴下は、ももまろ
天然金髪に踊るリボンは、ももまろ
ランコムのトレゾアは、ももまろ

以下、身バレ防止で控えるとして
何かの病気ぐらいに、自分をマーキングした

文章も同じで、お金をもらわない
これといった規則がない中では
一貫性を重視し、主語を明瞭にし、リズミカルに
「わ

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「嫌い」が「好き」に変わるとき

「嫌い」が「好き」に変わるとき

「嫌い」なものが「好き」になった経験、みなさんにはありますか?「嫌いなもの」というべきか、「嫌いだと思っていたもの」というべきか、「嫌いだと思い込んでいたもの」というべきか……

【読書】と【キレイゴト】

どちらも大嫌いで苦手なはずだったのに。でも今はどちらも大好きで。そしてこの「嫌い」から「好き」への変化が、私を大きく変えてくれたことは間違いなく、「嫌い」という思い込みを外せた私自身を、いま自

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ハッピーでもバッドでもない人生を、ささやかな思い出と生きていく

ハッピーでもバッドでもない人生を、ささやかな思い出と生きていく

昔、深夜にどうしようもなく悲しいことがあり、男友だちを呼び出してドライブに連れて行ってもらったことがある。

彼は泣いたり怒ったりする私の話をずっと聞いてくれたあと「俺、町を出ようと思ってるけど、一緒に行くか?」と言った。いつ?と聞くと、今。と言う。きっと何か事情があったのだろう。好きでもない女を連れて行きたいほどの孤独を考えるとノリで行ってあげたい衝動に駆られたが、結局なんとなく断った。20年前

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SS【転生先生】♯毎週ショートショートnote

SS【転生先生】♯毎週ショートショートnote

お題「優先席の微世界先生」

【転生先生】(410文字)

先生は極小人である。
この腐った世界を救うため、平和な微世界から転生されたのである。
私は現世で先生をサポートする役割を担っている。

先生は微世界人なので、その姿はかなり小さい。それ故、先生のために私は腕時計の中に執務室を作り、ふかふかの優先席まで設けた。
ソファに優先席と名付けたのは、先生がこの世界で一番気に入ったシステムの名称だから

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クリスマスの落とし物 

クリスマスの落とし物 

 十二月二十五日、僕は、言葉を拾った。
 
 クリスマスのその日は、午後から雪が降り始めた。テレビでは、ホワイトクリスマスになってロマンチックだ、とかなんとか言っていたけれど、僕には関係のないことだった。
 恋人はいない、友達はデートの約束で忙しい、おまけに冷蔵庫が空っぽのクリスマス。
 僕は食料を買うためだけに外出した。コートのポケットに両手を突っ込んで、近所のスーパーへと俯いて歩いた。白い雪が

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【短編小説】始まりの日に

【短編小説】始まりの日に

 寒い。まだ十月の中旬だというのに、もうすっかり冬の匂いがする。通り過ぎる人達は厚手のコートに身を包み、早足でこの寒さから逃げるように歩いている。テレビでは今日はぽかぽか陽気だとか言っていたのに、駅を出た頃には天気が急変して空を雲が覆い、冷たい風が強く吹いてきた。真新しいリクルートスーツを着ているだけの高羽陽は、身を震わせながら自宅へと歩いていた。
 テレビなんかを信じて羽織る物を何も準備しなかっ

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【赤い炎とカタリのこびと】#01 ラスト・クリスマス・イブ

【赤い炎とカタリのこびと】#01 ラスト・クリスマス・イブ

 去年のクリスマス・イブのことでした。
 北極にあるサンタクロースの家ではこびとたちがいつになく大慌てで子供たちへのプレゼントの準備をしていました。
 というのも、この年はサンタクロースの配るプレザントを作るこびとたちの長が北極を留守にしていて、全てのプレゼントの元になる、「よいこの証明書」を作る長がいないおかげで、他のこびとたちが代わりにその証明書を作らなければならなかったからです。

「ふう」

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十二月の桜 (短編小説)

十二月の桜 (短編小説)

十二月に入り、年寄りたちは騒いでいる。
敷物はあるか、酒は熱燗にしろ。火鉢を運べ、毛布も数枚あったほうが良い。とにかく大騒ぎだ。
そんなに寒けりゃ、わざわざ外になんて集まらずに、暖かい家の中で世間話に花を咲かせりゃあいい。それでも、皆各々分厚い上着を着て外へ出ていく。

いつからか、と言ってもここ十年ほどだが、十二月に桜が咲くようになった。
初めて咲いた年のことを、正直よく覚えていない。その頃、ま

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十二月の妖精 (#シロクマ文芸部)

十二月の妖精 (#シロクマ文芸部)

十二月の風が吹いた。ね、感じた?

今の風のこと?

そう。こんな夜だけど、一瞬だけ十二月の風が混じってたのよ。

どんな風のことを言ってるの?

例えばそれは、雪の代わりに空から桜の花びらが舞ってくるくらい貴重で、信じられないほどに神秘的な風。
キンと冷たいのに、どこか柔らかい。

感じたことないな。

感じられないの?

どうしたら感じられる?

信じるの。

誰を?

私のこと。あなたが大切

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