へいた|ショートショート

小説(ショートショート)を書いています。第二期「月々の星々」年間大賞。2023年よりオ…

へいた|ショートショート

小説(ショートショート)を書いています。第二期「月々の星々」年間大賞。2023年よりオンライン文芸コミニティ「hoshiboshi」の運営スタッフに参加。一杯の珈琲のようなお話が目標。

マガジン

  • ショートショートnote参加集 WEEKS

    たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」への参加作を集めています。お題に従った410文字。週替わりの一杯どどうぞ。

  • エッセイ集 へいたのはなし

    エッセイ集です。ここに書いていることだけは本当の話です。おそらく、多分、だいたいは。

  • ただの日記

    キラキラでもハラハラでもない、ねこの中の人のただの日記。

  • 朗読付きショートショート集 SAND BOX 1099

    水上洋甫さんの朗読による画像付きショートショート集です。ショートショートのお砂場。こんなんできるんだなあ、というのが作れたら、いいのに、なあ。

  • ねこのまたたび

    あっちに行ったり、こっちに行ったりした記録。

最近の記事

  • 固定された記事

ショートショート(と、朗読) だいたらぼっち【SAND BOX 1099】

ー「あっちい! あ。閃いた!」ー 「違うな」  だいたらぼっちがほほを膨らませた。  東の方には富士山が見えた。おととい土を固めて作った山だ。西の方には琵琶湖が見えた。昨日、掘り返してできた湖だ。  空の上ではお天道さんがにこにこ笑っていた。だいたらぼっちに聞いてくる。 「何が違うんだい。両方とも、立派なもんなのに」 「違う、違う」  だいたらぼっちが地団駄を踏む。 「俺が作りたいのはこういうのじゃねえんだ」  頭を掻きむしって富士山のてっぺんに拳を当てた。中から溶岩が溢

    • ショートショート ひらめき膝

       小学生の頃、妹におもちゃを譲らなかったせいで母に怒られた。私は悔しくて、部屋の隅で体操座りをして、膝におでこをくっつけて、ダンゴムシみたいにして泣いた。母が妹ばかり贔屓しているようで納得いかなかった。 「『ごめんなさい』って、言ってきたら?」  声が聞こえて頭を上げた。部屋を見回す。誰もいなかった。すぐ耳元で聞こえたのに。 「なんで僕が。全然悪くないのに」  そう言って、再び膝におでこをくっつける。 「悪いとかいいとかでやるんじゃないんだよ」  また聞こえた。膝から、のよ

      • ショートショート ときめきビザ

         ゾンビが東京に行くことになった。おつかいだ。なんでも今は円安で、クールジャパンを爆買いらしい。よくわからないが楽しそうだ。  なるべく現地に溶け込んだ方がいい。騒ぎを避けるのが通のやり方だ。身体は腐ってツンとした臭いがするけど服を買って日本語を勉強した。「ビザも用意しなきゃ」とつぶやいた。  ゾンビが地上に来る時のビザは変わっている。ハートの形でピンク色。裏がシールになっている。生きている人間たちにゾンビだとばれないよう、胸に貼り付けるとトクンと脈打つ。とうの昔に忘れて

        • エッセイ 名古屋コミティア、出店します!(ねこの悪だくみ2024年9月)

           毎月、月初めに計画などを書いています。  達成できたりできなかったりします。悪しからず。  とかいいながら、もう月の半ばなんですけどね。 悪だくみ その1 名古屋コミティア65に出店します! というわけで、します。  2024年09月29日(日曜日)11:00−15:00  名古屋国際会議場 イベントホール  名古屋コミティア65  入場は有料です。700円でリストバンドを買います。  ブース番号は A-24、珈琲まねきねこ です。  愛知県は、文学フリマの開催が

        • 固定された記事

        ショートショート(と、朗読) だいたらぼっち【SAND BOX 1099】

        マガジン

        • ショートショートnote参加集 WEEKS
          224本
        • エッセイ集 へいたのはなし
          114本
        • ただの日記
          27本
        • 朗読付きショートショート集 SAND BOX 1099
          46本
        • ねこのまたたび
          17本
        • 猫が洞の王さま
          11本

        記事

          エッセイ 慌ただしい月 (ネコ戦記2024年8月)

           毎月、月末あたりにその月の公募活動などをあけすけに書いています。なんてあけすけな! 恥を知れ!  もう9月も半ばですが、8月の活動報告です。 1.公募活動について 8月、通った公募はありません。  応募の方は下記の2先に応募しています。コトノハなごやは3お題出ていて、取材にも行ったんですが、途中で私事に必死になってしまって、1題だけにとどまりました。締切過ぎてから気がついて本当にびっくりしました。 コトノハなごや 写真をもとに200字以上800字以内の“名古屋を感じら

          エッセイ 慌ただしい月 (ネコ戦記2024年8月)

          ショートショート タンバリン湿原

           シャリン、シャリン。  霧の中に物悲しげな鈴の音が響く。この湿原を歩く人は皆この不思議な音を聞いた。大地を踏み締めるたびに鳴るのだ。  湿原の近くには村があった。村は湿原を聖地と崇めていた。古い伝説によると、何年かに一度のわずかな間神さまのもたらすカワが湿原に現れるということだった。  おかしな話だ。湿原には川がった。不思議な湿原であることは確かだが、これ以上川なんか現れそうもない。おかしいと言えば名前もそう。この湿原は「タンバリン湿原」と呼ばれていた。聞こえるのは鈴の

          ショートショート タンバリン湿原

          ショートショート モンブラン失言

           お菓子屋のイシャーンさんは温和なことで有名だった。いつもにこにこ微笑んで、お客さんもついついつられて笑顔になった。  イシャーンさんには秘密があった。開店前、一人でお菓子を作っている時、ボールやオーブンに向かって愚痴を言うのだ。誰にも内緒の息抜きだった。 「私のひげが何か?」  大理石の豪邸で、大金持ちが眉を顰めた。朝のお茶の最中だった。 「『ヤギみたい』という声がした気がしたんだが」  テーブルの上にはモンブランがのっていた。イシャーンさんの所で買ったお菓子だった。

          ショートショート モンブラン失言

          ただの日記 #44 (2024.09.01〜2024.09.07)

          主に寝ていたねこの中の人のただの日記 ←last week 2024年09月01日(日) コロナ感染。ゾコーバを服用するが、38度を超える熱が三日続く。 ひたすら眠る。 2024年09月02日(月) 熱が下がるが、他の方に移す危険があるので会社を休む。 忌引きも含め、会社を休んだ日数に眩暈がする。業務、取り返せるんだろうか。 起きられそうな時間帯に父親関連の書類を少しでもやっておこうと試みるが、文章を読み取るのが難しく、体を起こしているのが辛い。諦めて眠る。 202

          ただの日記 #44 (2024.09.01〜2024.09.07)

          ショートショート(と、朗読) 放課後ランプ【SAND BOX 1099】

          ー「新刊出たぞ。一緒に読もう!」ー  授業が終わった後の学校は真っ暗闇だ。僕みたいな陰気な人間にとっては。  帰りの会が終わると同時に鞄の中に教科書をしまう。目立たないようにするのが肝心だ。教室には恐ろしい生き物がうじゃうじゃしている。  シアイニムケテレンシューシヨーゼ。汗臭い野獣ども。カラオケバイトゲームナニスル。ピイピイうるさい鳥たち。ナヤミガアッタラショクインシツニオイデーナ。担任。一番厄介な妖怪。  鞄を抱えて席を立った。机と机の間を身を細めて抜ける。授業が終わ

          ショートショート(と、朗読) 放課後ランプ【SAND BOX 1099】

          木曜日から 新型コロナウイルスに感染しまして ゾコーバを処方されたものの 未だ熱が下がりきりません sandbox1099は明日あげます。 皆さんもお気をつけ下さいね。

          木曜日から 新型コロナウイルスに感染しまして ゾコーバを処方されたものの 未だ熱が下がりきりません sandbox1099は明日あげます。 皆さんもお気をつけ下さいね。

          ただの日記 #43 (2024.08.17〜2024.08.24)

          ローソクとローソク足に対峙するねこの中の人のただの日記 ←last week 2024年08月17日(土)  入院中の父親が呼んでいると母親から電話が入る。(諸事情により)勘当されていて、どうなっているのか理解しきれなかったが、母親の声が切羽詰まっているので取り急ぎ病院に行く。  ベッドでは父親が熱に浮かされており(アナフィラキシーショックとのこと。父は長く肺の病気と同時に膠原病を患って入退院をくり返しており、こうした状態になるのが初めてではない)、なぜかずっとゴルフの話

          ただの日記 #43 (2024.08.17〜2024.08.24)

          ショートショート(と、朗読) 冷凍記憶【SAND BOX 1099】

          ー「好きなこと、やれてる?」ー  記憶力はいい方だ。嫌なことも忘れられない。幼稚園の遠足で水たまりに落ちたこと。小学校の入学式に雨が降ったこと。中学の初日は寝癖が直らなくて、幼馴染のよしちゃんに笑われた。  よしちゃんとは同じ高校に行った。最初は私の方ができて、2年の冬には逆転された。  大学も同じ。大学には『記憶力がいい』だけじゃない人がいっぱいいた。よしちゃんもそう。私は違う。すぐに行くのが嫌になった。「学校やめたい」と私が言うと「いいかもしれない」とよしちゃんが言っ

          ショートショート(と、朗読) 冷凍記憶【SAND BOX 1099】

          肉親が亡くなったため 数日不在になります ご連絡でした。

          肉親が亡くなったため 数日不在になります ご連絡でした。

          ショートショート(と、朗読) オバケレインコート 【SAND BOX 1099】

          ー「もう脱いでも大丈夫だよ」ー 「アーメン」 日曜日の礼拝で、神父様が言いました。 「アーメン」 集まった村の人たちが両手を組んで唱えます。 「足元にお気をつけて。良い日曜日を」 神父様が手を振ります。ざあ。開いた教会の扉から雨の音が聞こえました。 「で、君は?」 村人たちがいなくなった教会で、神父様が言いました。ゆらり。部屋の隅で影が揺れました。 「見えてたんだ」 「見えていたよ」 レインコートを着た男の子が現れました。体の向こうが透けていました。  先月お葬式をした子供

          ショートショート(と、朗読) オバケレインコート 【SAND BOX 1099】

          ショートショート 歯とははとハトとハート

           右下のおくの歯がぐらぐらすると気がついたのは一昨日からだけど、わたしはだまっていた。だってお母さんに言ったらあれこれうるさく言われそうだったし、そもそもいつ言ったらいいか分からなかったからだ。わたし、話すの苦手なんだ。だまったまま人差し指を口につっこんで、ぐらぐらするおくの歯の上にのせて、ぐっと押して、ひっぱる。思ったよりがくんと動いて、怖くなってそれきりにした。 「『お母さん』じゃなくて、『はは』ね」 ちょっと今まで見たことがないくらいめかしこんだお母さんが言った。顔が

          ショートショート 歯とははとハトとハート

          エッセイ 朝市は三文の徳(文学フリマ岩手旅行記2024 その2)

           6月に文学フリマ岩手に参加しました。その時、ついでにあっちこっち回ったお話です。  文学フリマ当日の朝、出店者の入場時間前に朝ごはんを食べに盛岡神子田朝市まで足を伸ばしました。  というのも、文学フリマ当日が日曜日で、次の日は月曜日だから。神子田朝市は月曜日がお休みなんです。逆を言うと、月曜日以外は毎日やっているのだそう。年間300日以上営業している朝市は全国でここだけなのだそうです。惚れ惚れするほど現役だなあ。訪れた朝もたくさんの人で賑わっていました。  元気のいい

          エッセイ 朝市は三文の徳(文学フリマ岩手旅行記2024 その2)