ショートショート(と、朗読) だいたらぼっち【SAND BOX 1099】
ー「あっちい! あ。閃いた!」ー
「違うな」
だいたらぼっちがほほを膨らませた。
東の方には富士山が見えた。おととい土を固めて作った山だ。西の方には琵琶湖が見えた。昨日、掘り返してできた湖だ。
空の上ではお天道さんがにこにこ笑っていた。だいたらぼっちに聞いてくる。
「何が違うんだい。両方とも、立派なもんなのに」
「違う、違う」
だいたらぼっちが地団駄を踏む。
「俺が作りたいのはこういうのじゃねえんだ」
頭を掻きむしって富士山のてっぺんに拳を当てた。中から溶岩が溢れ出て、だいたらぼっちの素足に触れた。
「あっちい! あ。閃いた!」
「おおい、いいもん作ったんだ。見てくれや!」
次の日、だいたらぼっちがお天道さんを呼んだ。ヘンテコな形の真っ黒い石の塊を二つ持っていた。
「土の鋳型に昨日のドロドロ流したんだ」
石の塊に足を突っ込む。溶岩でできた靴だった。
お天道さまが小さく唸った。それから笑ってこう言った。
「ロックじゃん」
SAND BOX 1099 No.044
声のお仕事をされている(詩や小説も書いておられます)水上洋甫さんにお願いして、朗読をしていただこう、のシリーズ「SAND BOX 1099」です。
今週は別バージョンをいただいております。
(イケボの無駄遣いをご賞味ください!)
今月のイラストはつかださんにお願いしています。
現在、トップ記事に名古屋コミティアに参加する記事をのせておいでですね。
そう。ねこの人も参加します、名古屋コミティア!
2024年09月29日(日曜日)11:00−15:00
名古屋国際会議場イベントホールにて、
ブース番号はA-24です。初名古屋でブルブル震えております。
どうぞよろしくお願いいたします。
もとのお話はこちら
前回のSAND BOXはこちら。
全体をマガジンにまとめています。