うみのちえ

機能不全家庭で生まれ育ち、うつ病、適応障害、パニック障害とともに生きてきました。ASD…

うみのちえ

機能不全家庭で生まれ育ち、うつ病、適応障害、パニック障害とともに生きてきました。ASD夫と、成人したASDの子ども二人。俳句、エッセイ、たまに小説。回復の道標として、綴っていきます。

マガジン

  • 俳句幼稚園 ~弐~

    • 2,361本

    ⚜️各自note内で俳句を詠み、俳句幼稚園タグ付け&マガジン格納。⚜️【コメント欄は宝物】互いの句をコメント欄で鑑賞し高め合いましょう。(無理せず、自分のペースで) 投句時『意見(甘口・ふつう・辛口)希望』の書込みは任意。⚜️ 超初心者は、🔰マークを俳句につけて下さると有り難いです。🔰マーク基準 : これまでの投句数0〜30句程度(個人判断)🚫誹謗中傷等の発言や、一方的な意見押しつけ、相手の気持ちを推し量れない方には、マガジン退出、コメント自重をお願いすることがあります。 ⚜️退園時は、ご自身のアカウントで「マガジンから脱退する」ボタンを押下願います。⚜️《運営》白・なごみ・橘鶫・中岡はじめ・よねとも ・卯月紫乃 ⚜️責任者&問い合わせ先:卯月紫乃 ⚜️ヘダー画アポロ ラブ&ピース '23.11.

  • 小説の箱

    短編小説を集めました。

  • 俳句幼稚園 ~壱~('22.11.6.まで)

    • 7,101本

    '22.11.7.より、新マガジン「俳句幼稚園~弐~」へ移行いたしました。

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    未分類のエッセイを集めました。

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    俳句幼稚園で発表した俳句を集めました。

最近の記事

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黄昏のあんぱんまん

自分で言うのもアレだけれど、私はとても小賢しい中学生だった。嫌味な、と言い換えても過言ではない。 わかりやすい不良などではなく、授業態度も悪くなかったけれど、どこか教師を軽蔑していて物事を斜めから見ているような生徒だった。 だから夏休みの宿題で、読書感想文を書くにあたって私は、課題図書では飽き足らず変化球として、絵本の『あんぱんまん』を選んだのだった。 『あんぱんまん』とひらがな表記の、ごく初期の絵本には、バイキンマンも、ドキンちゃんも、食パンマンも登場しない。 「あん

    • 「アンバーアクセプタンス」という希望

      「note 創作大賞 2024」が、大詰めを迎えている。 noteの街の片隅で細々と書いている私の元にさえ、その賑わいは届いていて、日々更新される応募作品の多さに目を見張るほどだ。 そんな中、連載開始前から注目していた作品がある。 「アンバーアクセプタンス」だ。 作者のアポロさんとは最初、俳句を通して知り合った。 以前から絵も描いて、詩も書いて、エッセイも書くマルチな才能の持ち主だったけれど、近頃は主に、小説を書くことに注力されているらしい。 「アンバーアクセプタンス」

      • 【小説】朝顔の種

         ねえ、由美ちゃん。  男なんて、信じちゃ駄目よ。  あいつらはねぇ、最初だけ。最初だけなんだから。  上手いこと言って、優しい顔して近づいてくるけど、そんなの全部、最初だけなんだから。  どんな男もね、最初は優しいのよ。  わかってる、て?  いやぁ、わかってない、わかってない。  だって由美ちゃん、妻子持ちの医者に誘われて、ちょっとその気になってたじゃない。  ああいうボンボン医者が、一番タチが悪いんだから。  同伴はいいのよ?  アフターだって、大事なお仕事。  でも

        • 【小説】革命の日

           昨夜遅くまで降り続いていた雨は、夜明け前に止んだようだ。塵や埃が洗い流されたみたいな、すっきりとした青空が広がっている。グランドの水はけも、思ったよりは状態が良さそうだ。  小学校最後の運動会だから、と、担任の石川先生が熱心に誘ってくれて、休みがちだった正樹も参加する気になったようだった。  正樹がはじめて「学校に行きたくない」と言い出したのは、六年生に進級してすぐのことだった。 「行きたくなければ、行かなくていい」  と、夫は事も無げに言う。  肝心なのは塾の勉強で、

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        黄昏のあんぱんまん

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        • それでも、毒になる親
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        記事

          可愛くてごめん

          随分と、昔の話である。 恋人だと思って付き合っていた男性に、実は本命の彼女がいると気付いたことがあった。 簡単に言えば、二股をかけられていることがわかって、私は超絶、激怒し、大いに責めたてた!(これって、普通の反応ですよね?) するとその男性は、さも、やれやれといった表情で、 「……ちえは案外、嫉妬深いんだなぁ……」 と、言い放ったのだ。 嫉妬、とな? その一言に私は、より一層、激怒した。 なぜなら、その言葉の裏に ——そりゃあ二股は褒められることじゃないけど、そんなに

          可愛くてごめん

          もう一つの誕生日

          今年もまた、この日が巡ってきた。 note にはじめて記事を投稿した日。 早いもので、あれから三年。 公開した記事は、368。 毎日投稿されている方々の数字には及びもつかないけれど、それでも改めて数えてみると、自分でもびっくりする。 本名の私と、うみのちえ。 二つの名前と、二つの誕生日。 最初はまるで、本名の私の付属物みたいに、遠慮がちに、そぉーっと佇んでいたのに、今や「うみのちえ」の方が断然、楽しそうだ。 お友達もたくさんできた。心の師匠にもたくさん出会えた。 エッセ

          もう一つの誕生日

          桜桃を溢るるほどに禅林寺

          二十歳を前にして「太宰治」に心酔してしまったことは、今から思えば、若気の至りとしか言いようがない。 作家の、あまりにも不道徳な私生活。それを逆手に取ったような、才能あふれる文章表現の秀逸さ。「破滅型」とも「無頼派」とも呼ばれ、戦前や戦後すぐの作家としては、決して珍しくはなかった。 とはいえ、どの作品にも通底する、あまりにも濃密なナルシシズムに、嫌悪感を露わにする人も多かった。 私が東京三鷹の禅林寺に墓参したのは、二十代最後の年だった。 季節は違ったけれど、それでも墓前には

          桜桃を溢るるほどに禅林寺

          【小説】蛙の唄

           ゆるやかな坂道に沿うようにして、濃淡いろいろの紫陽花が咲いている。丁度今が、見ごろなのだろう。昨夜の雨で程よく湿っていて、心なしか花も葉も、生き生きとしているように見える。    坂の上の家に着くと、いつものように、玄関の引き戸が少しだけ開いていた。鍵を閉める習慣のない田舎のこととはいえ、やはり少し不用心だ。自転車を停めた途端、額や首筋に汗が流れ出す。 「こんにちはー、及川ですー」  家の中へ向かって声を掛けると、 「開いてますけぇ、どうぞぉ、お上がりんさい」  と奥から

          【小説】蛙の唄

          【小説】The dirty night

           午前二時。  公園に人影はない。  家に居たって、外に出たって、大した違いはない。けど、息が吸えるだけ、公園のがマシ。そのぐらい。そのぐらいのこと。  もしも職質されたら、 「受験勉強に疲れちゃって。ちょっと息抜きしてました。もう帰ります」  ……嘘だけどね。  受験なんかしねーし。学校行ってねーし。何なら、部屋から出ねーし。  雨上がりの公園は、葉っぱのにおいと土のにおいがして、何だかやけに青臭い。そこへ、薄っすら下水のにおいが混じった重たい風が、ゆるゆると吹いてくる。

          【小説】The dirty night

          母の玉子焼き

          「人を家に招くことが苦痛で、苦痛で……。どうしても避けられない時は、予定が決まってからずっと憂鬱で……。大抵、体調を崩してしまうんです」 私がそう言うと、カウンセラーは、 「幼少期のご家庭はどうでしたか? 人がよく来ましたか? それとも来ませんでしたか?」 と、私の顔をじっと見つめて問う。 そう言えば、決して来客の多い家ではなかった。 たまに親戚が訪ねてきた時も、母は台所から出てこなかった。母の意志というよりは、世間体を重んじた父の指示だったのだろう。 母の心の病は長く、

          母の玉子焼き

          【小説】紫陽花の道

           休憩室の窓を開けても、隣の薄汚れたビルの壁が見えるだけ。空なんか見えない。それでも生ぬるい風が微かに流れて、窒息しそうな苦しさは少し和らぐ……ような気がする。だから私はいつも、休憩時間中いっぱい、窓を開け放つ。  社割で買った鳥そぼろ弁当を食べていると、休憩室のドアからチーフが顔を出した。 「高崎さん、休憩14時までですよね? 今、ちょっといいですか。あ、全然、食べながらでいいんで」  私たちパートとは違って、チーフは新卒入社の正社員。研修を受けて、昇格試験をクリアして

          【小説】紫陽花の道

          【小説】薔薇の咲く庭

           お母さんは、どこに行ったんだろう。気が付いた時にはもう、見当たらなかった。  髪を結って、白い前掛けをして、お勝手に立つお母さんは、いつもふんわりと、いい匂いがする。それはお母さんの匂いというよりも、だし汁や玉子焼きなんかの、私が好きな、美味しそうな匂いだったのかも知れない。ちょっと甘くて、切なくて、じんわりと涙が出てくるような、そんな匂い。  窓の向こうに薔薇の花が咲いている。赤、ピンク、黄色、白……たくさんの薔薇。もっと近くに行って見たいけれど、昨夜の雨でぬかるんでい

          【小説】薔薇の咲く庭

          アレルギーの検査をした 陽性はスギ、ヒノキ、ネコ、カニ ……て……カニ? えっ~~~! あの、カニ? ということは、エビも? 非特異IgEが、6889 IU/mL ふーん……て、基準値 170 以下ですと? あかんヤツじゃん! 思ったより、ガッツリでした😭

          アレルギーの検査をした 陽性はスギ、ヒノキ、ネコ、カニ ……て……カニ? えっ~~~! あの、カニ? ということは、エビも? 非特異IgEが、6889 IU/mL ふーん……て、基準値 170 以下ですと? あかんヤツじゃん! 思ったより、ガッツリでした😭

          【小説】Rain

           玉ねぎ、人参、じゃがいもと、薄い豚肉を煮込んだら、あとは市販のカレールーを入れるだけ。飯盒で炊いたご飯もつやつやと光っていて、はじめてにしてはなかなかの出来栄えだ。中学二年生。宿泊学習のキャンプ第一日目は、とても順調に過ぎていった。  キャンプ場は青い草の匂いがして、ひんやりした空気を胸いっぱいに吸い込んだら、鼻の奥が少しツンとする。湿気を帯びた風がゆるく吹いていて、ポニーテールのうなじがくすぐったかった。  水場で鍋を洗っていると、同じ班の藤本くんがすれ違いざまに 「消

          【小説】Rain

          この空を飛べたら

          芝生の庭のある、新しい家に引っ越したのは、私が三歳の誕生日を迎えた頃だった。 ほどなくして母は体調を崩し、座敷の一部屋は事実上、母の病室となる。 翌春に入園した幼稚園へは、送迎バスで通園した。家から百メートルほどの四つ角が、バスの発着場だった。 賛美歌、聖書のお話、お遊戯。 配食のお弁当を食べたら、帳面にシールを貼ってもらって、帰りの歌。 バスを降りた後、一人で家に帰ることにも、私はすぐに慣れた。 午後の長い時間を私は、いつも家の中や、芝生の庭で過ごした。 庭には、季節に

          この空を飛べたら

          Sweet Memories

          「小学校六年生のクラスのメンバーで集まりませんか」 と案内が来たのは、昨年の秋のことだった。 すぐに、「出席します」と返事を出したものの、私のことを覚えている人が果たしているのだろうか……と一抹の不安がよぎる。 六年生ともなれば、私もうまく、普通の子どもへと「擬態」していた。それなりに居場所を見つけて、クラスの中には友だちもいたし、少なくとも、いじめられっ子はとうに卒業していたはずだ。 懐かしさと、不安と、少しの楽しみを抱えて私は、ゴールデンウイークの混んだ繁華街へと向か