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小説の箱

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短編小説を集めました。
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記事一覧

【小説】朝顔の種

 ねえ、由美ちゃん。  男なんて、信じちゃ駄目よ。  あいつらはねぇ、最初だけ。最初だけな…

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【小説】革命の日

 昨夜遅くまで降り続いていた雨は、夜明け前に止んだようだ。塵や埃が洗い流されたみたいな、…

うみのちえ
2週間前
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【小説】蛙の唄

 ゆるやかな坂道に沿うようにして、濃淡いろいろの紫陽花が咲いている。丁度今が、見ごろなの…

うみのちえ
4週間前
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【小説】The dirty night

 午前二時。  公園に人影はない。  家に居たって、外に出たって、大した違いはない。けど、…

うみのちえ
1か月前
54

【小説】紫陽花の道

 休憩室の窓を開けても、隣の薄汚れたビルの壁が見えるだけ。空なんか見えない。それでも生ぬ…

うみのちえ
1か月前
79

【小説】薔薇の咲く庭

 お母さんは、どこに行ったんだろう。気が付いた時にはもう、見当たらなかった。  髪を結っ…

うみのちえ
1か月前
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【小説】Rain

 玉ねぎ、人参、じゃがいもと、薄い豚肉を煮込んだら、あとは市販のカレールーを入れるだけ。飯盒で炊いたご飯もつやつやと光っていて、はじめてにしてはなかなかの出来栄えだ。中学二年生。宿泊学習のキャンプ第一日目は、とても順調に過ぎていった。  キャンプ場は青い草の匂いがして、ひんやりした空気を胸いっぱいに吸い込んだら、鼻の奥が少しツンとする。湿気を帯びた風がゆるく吹いていて、ポニーテールのうなじがくすぐったかった。  水場で鍋を洗っていると、同じ班の藤本くんがすれ違いざまに 「消

【小説】最後の聖夜

街中に、クリスマスソングが流れていた。 百貨店のショーウィンドウにも、ショッピングモール…

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