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月星真夜(つきぼしまよ)
2024年9月30日 06:46
その日、銀座を歩いていたウサギとカメは、赤い建物の前で足を止めた。「ここは日本最古の画廊と言われている資生堂ギャラリーだね」カメがそう言うと、二人は手を取り、入口へ向かって歩き出した。地下へと続く細い階段は、どこか秘密めいた雰囲気を漂わせており、二人は引き寄せられるように足を踏み入れた。薄暗いギャラリーに足を踏み入れると、ひんやりとした空気が二人の肌に触れた。目の前に広がっていたのは、どこ
2024年9月28日 06:08
すっかり秋めいてきたその日、ウサギは図書館の674.35の書架の前で立ち止まり、整然と並んだ本の背表紙をじっと見つめていた。「広告とかキャッチコピーって、意外と面白いものかもしれないわね…」そう、心の中でつぶやきながら、その一冊を手に取った。背後に気配を感じて振り向くと、通りかかったカメと視線が合った。「広告のことなら、面白いところがあるよ」カメは微笑みながら、そっとウサギの手を取った。
2024年9月27日 06:21
その日、ウサギは図書館の538.9の書架をじっと見つめていた。「もっと気軽に、ほかの星に行けたらいいのにな」と、心の中でつぶやきながら、小さくため息をつく。気づけば、自然とその書架から離れていた。うつむきながら歩いていると、聞き覚えのある足音が前から近づいてきた。「じゃあ、さっそく宇宙に行ってみようよ」 カメの声に、ウサギは驚いて顔を上げた。「も、もしかして、私の考えてることがわかるの…?」
2024年9月25日 06:53
その日、半袖のシャツでは少し肌寒さを感じながら、ウサギは図書館の赤ちゃんコーナーに腰をおろし、並んだ絵本をじっと見つめていた。ふと目に留まったのは、真っ赤なだるまの絵本だった。鮮やかな赤が「ここにいるよ」と語りかけてくるようで、ウサギの心を強く引き寄せた。彼女は閲覧席に腰を下ろし、そっと絵本を開いた。図書館の穏やかな空気の中、ページをめくる音だけがかすかに響いていた。「かがくいひろしさんの
2024年9月22日 06:25
秋空の下、ウサギは心にぽっかりと穴が空いたような、少し寂しい気持ちを抱えていた。田中達也展の会場に入っても、その寂しさは消えず、まるで忘れられた荷物のように心の片隅に残っていた。「ミニチュアの一つ一つが、夏の終わりと秋の気配をそっと教えてくれる気がするわ。ミニチュアって、どうしてこんなにも儚い表情をしているの…」ウサギは小さく息を吐きながら、ゆっくり髪をかきあげた。「私はきっと旅に出るの。
2024年9月21日 06:15
その日、ウサギとカメは銀座で見た「宇宙猫」に導かれ、岡本太郎記念館へ向かっていた。洗練された表参道の街並みを後にし、館内に足を踏み入れると、瞬く間に異世界への旅が始まった。展示室に入ると、「BIG CAT BANG 宇宙猫の大冒険」と題された映像が目に飛び込み、二人は思わず立ち止まった。ウサギはその映像に目を奪われ、カメもゆっくりとその世界に引き込まれていった。「始まりは爆発だ。爆発のあと
2024年9月18日 06:12
「十五夜のお月さまを見るなら、一番高いところがいいわね。」ウサギが楽しげに言うと、カメは少し遅れて視線を上げた。そこには、煌めく東京タワーが静かに佇んでいた。「えっと、一番高くはないよね?」カメが呟くのを、ウサギは聞こえないふりをして、真っ直ぐ外階段に向かった。「今日だけ、十五夜限定で外階段から登れるのよ。逃すわけにはいかないわ!」ウサギは、宝物を見つけた子どものように満面の笑みを浮かべて
2024年9月17日 06:36
その日、ウサギとカメは下北沢の古着屋を訪れていた。ウサギは「そろそろ長袖が欲しいの」と呟きながら、鏡の前で自分の姿を確認しては、眉をひそめたり、口元に微笑みを浮かべたりしていた。ウサギは、買ったばかりのシャツを抱え、浮かれた気分で街へ飛び出した。軽やかな足取りの彼女は、ふと、風に揺れる案内表示に目を留め、自然と足を止めた。「ムーンアートナイトって何かしら?」彼女は眉を寄せ、まるで秘密を探
2024年9月12日 06:49
「ねえ、見て! あれ金魚だよね?」その日、ウサギとカメが国立新美術館に到着すると、ウサギは興奮した様子で、目の前に現れた大きな金魚を指さした。「まだ展示場に入っていないのに、もう圧倒されちゃうね」キラキラと目を輝かせるウサギの隣で、カメはゆっくりと顔を上げて、その大きな金魚を見つめた。ウサギとカメが飛び込んだのは、「田名綱敬一 記憶の冒険」の世界。プロローグの間で飾られた「百橋図」を目
2024年9月9日 06:45
図書館の静かな閲覧席で、カメは本の世界に入っていた。ふと気配を感じて顔を上げると、ウサギがそばに立っていた。彼女の瞳はいつものように輝いていて、しかしどこか不安げだった。「私、未来がどうなるのか知りたいの」カメは少し驚いたものの、やがてその表情が柔らかい微笑みに変わった。「未来が知りたいなら、占星術の本があったと思うよ。確か分類番号148.8の書架に…」ウサギはカメの言葉に首を振った。
2024年9月7日 06:51
図書館からの帰り道、ウサギは駅へと急ぐ足をふと止めた。見慣れたはずの街並みが、いつもと少し違って見えたのだ。「なんだろう、この感じ。今まで全然気にしてなかったけど、マンションの形とか、お店の看板とか、街全体にデザインが溢れているように見えるわ」ウサギの言葉を聞いて、隣を歩いていたカメも足を止めた。「公共の空間をアートの舞台に変えた展覧会があるんだけど、今からちょっと見に行ってみない?」
2024年9月6日 06:19
図書館の一角で、ウサギはじっと大きな絵本を見つめていた。それは特に目を引く、縦が116センチもある長い一冊だった。「この『100かいだてのいえ』、大きなサイズで読むと迫力がすごいの」彼女は両手に力を込めて、その本を持ち上げた。そのとき、カメが偶然近くを通りかかった。 「その100かいだての世界に行ってみない?」カメは微笑みながら彼女に声をかけた。ウサギが頷くと、二人は図書館を後にして駅
2024年9月4日 06:17
同じような毎日が続くある日、ウサギとカメは目的もなく、銀座のショッピングストリートを歩いていた。そんなふたりが、ふと足を止めたのは銀座三越だった。エスカレーターを上がると、目の前に広がったのは「トムとジェリー」の世界。アニメの中から飛び出してきたキャラクターたちが、楽しげに二人を迎え入れてくれた。「ねえ、トムとジェリーって、本当は仲がいいのかな? それとも、やっぱり敵同士なのかしら…?」
2024年9月2日 06:54
その夜、東京駅八重洲口のペデストリアンデッキに辿り着いたウサギとカメは、「光の帆」のような青い大屋根の下を、赤い燈籠に導かれるように歩いていた。「丸の内口は時を感じさせる赤レンガ造りなのに、ここはまるで雰囲気が違うのね」洗練された景色に目を奪われながら、ウサギは静かに呟いた。「見て!おみくじがあるわ」ウサギは瞳を輝かせながら、ひときわ光を放つ一角に向かって足早に駆け寄った。「このミス