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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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#講談社現代新書

遊廓と日本人 (田中 優子)

遊廓と日本人 (田中 優子)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着本リストの中で見つけました。

 著者の田中優子さんは元法政大学学長で江戸文化の専門家です。田中さん関係では、以前、松岡正剛氏との対談集「日本問答」という本を読んだことがあるのですが、その博識さとキレのある語り口が強く印象に残っています。

 本書のテーマは「遊郭」。
 落語ではよく登場する場所ですが、その実際について

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わかりあえないことから ─ コミュニケーション能力とは何か (平田 オリザ)

わかりあえないことから ─ コミュニケーション能力とは何か (平田 オリザ)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 講談社のpodcastで紹介されていたので手に取ってみました。

 著者の平田オリザさんは日本の劇作家、演出家です。

 本書でのコミュニケーションに関する議論の出発点として、平田さんは、最初に「企業が求めるコミュニケーション能力はダブルバインド(二重拘束)状態にある」と規定します。「ダブルバインド」とは、“二つの矛盾したコマンドが強制さ

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百人一首 うたものがたり (水原 紫苑)

百人一首 うたものがたり (水原 紫苑)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 講談社のpodcastで紹介されていたので手に取ってみました。
 歌人水原紫苑さんによる「百人一首入門書」です。

 私も高校時代には百人一首をすべて暗記させられましたが、今、それから40年以上経ると本当に誰でも知っているような有名な数首しか憶えていません。それではいかにも情けないので、ちょっとおさらいをしてみようと手に取ってみました。

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日本の構造 50の統計データで読む国のかたち (橘木 俊詔)

日本の構造 50の統計データで読む国のかたち (橘木 俊詔)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 講談社のpodcastで紹介されていたので手に取ってみました。
 財政・教育・労働・生活・福祉といったジャンルの50項目について、その統計データを示しながら簡単な解説を加えていくという体裁でまとめられた本です。

 アマゾンの書評での評価は低いのですが、その一因は、本書に求めるものの違いによるのだと思います。
 個々の項目ごとのしっかりし

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同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか (鴻上尚史・佐藤直樹)

同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか (鴻上尚史・佐藤直樹)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 “同調圧力”、とりわけ昨今の世の風潮の中、よく耳にするフレーズです。
 本書は、その “同調圧力” をキーワードにした、作家の鴻上尚史さんと評論家の佐藤直樹さんとの対談集です。

 お二人の議論の共通の起点は “日本における『同調圧力』は「世間」が生み出している” との認識です。
 「世間」は、「社会」とは異なるものです。このあたり、佐藤

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還暦からの底力 ― 歴史・人・旅に学ぶ生き方 (出口 治明)

還暦からの底力 ― 歴史・人・旅に学ぶ生き方 (出口 治明)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 出口治明さんの著作は久しぶりです。
 私もまさにこの世代に突入してしまったので、ミーハー的ですがタイトルに惹かれて手に取ってみました。

 ただ、読む前から何となく “主張のトーン” は想像できるような気がしていました。やはりその直感は概ね外れてはいなかったようですね。“出口さん流” のストレートな語り口が(その是非はともかくとして)溢れ

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クオリアと人工意識 (茂木 健一郎)

クオリアと人工意識 (茂木 健一郎)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 以前、茂木健一郎さんの著作はかなり集中して読んだことがあるのですが、このところちょっと離れていました。
 本書は昨今話題の「AI」がテーマになっているとのことなので、久しぶりに手に取ってみました。

 人工知能/人工意識についての入門書的な本とのことですが、茂木さんの考察・立論の中から押さえておきたい説明や指摘を覚えとして書き留めておきま

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日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (松岡 正剛)

日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (松岡 正剛)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 松岡正剛さんの本を読むのは本当に久しぶりです。
 今までも「日本という方法」「多読術」「日本力」等々、何冊か読んでいますが、ともかく松岡さんの知識の質量や概念の構成力には圧倒されます。

 今回のテーマは大胆にも「日本文化」です。
 いろいろな切り口で論考が進むので、順不同になりますが、気になる指摘を書き留めておきます。

 まず、「第五

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未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (河合 雅司)

未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (河合 雅司)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 前著である「未来の年表」も読んでいます。
 「未来の年表」はその書名どおり “年表”形式 で時間軸に沿ったトピックを解説していましたが、こちら「2」の方は “具体的な生活の場面” を切り口にして、そのテーマごとに深掘りするというスタイルです。

 その中で特に印象に残った指摘をいくつか書き留めておきます。

 まずは、「3.あなたの仕事で

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『臨済録』を読む (有馬 頼底)

『臨済録』を読む (有馬 頼底)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 “禅” について少しでも見識を深めたいと思い、だいぶ前に岩波文庫の「臨済録 (入矢義高)」を読んだことがあるのですが、残念ながらというか、予想どおりというか、ほとんど理解できませんでした。

 ということもあって、改めて本書を手に取ってみたのですが、結果は・・・、見事に “返り討

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未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (河合 雅司)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (河合 雅司)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 “少子化”“高齢化” に向かう日本の未来の姿と課題を「年表」形式で解説したパートがメインで、後半は、著者が考える「諸課題解決の対策」を列挙しています。

 参考になるのは主として前半の「年表」部分ですね。
 「事実」→「推論」→「評価」と考え方の構成としては分かりやすく工夫されて

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仕事と心の流儀 (丹羽 宇一郎)

仕事と心の流儀 (丹羽 宇一郎)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 以前、サンデーモーニングという番組で張本勲さんの時代錯誤コメントが巷の話題になったことがありますが、まさにそういったテイストの本だと感じました。

 もちろん、著者の正義感の発露や信念に基づく行動力など、とても勉強になるところもあるのですが、通底している “(人間に対する)価値観

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不死身の特攻兵 (鴻上 尚史)

不死身の特攻兵 (鴻上 尚史)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。
   再投稿のタイミングがちょうどこの時期になりました。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 年に1冊は「戦争」関係の本を読もうと思っているのですが、この夏は読み損ねてしまいました。ようやく読んだのがこの本です。

 太平洋戦争末期に実施された”特別攻撃隊”を取り上げた鴻上尚史さんの著作ですが、奇跡的なタイミングで

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捨てられる銀行 (橋本 卓典)

捨てられる銀行 (橋本 卓典)

(注:本稿は、2019年に初投稿したものの再録です)

 大いに話題になっていたのでとても気になっていた本ですが、ちょっと読むのが遅くなってしまいました。

 2015年、森信親氏が金融庁長官に就任しました。
 本書でテーマとされた森長官の改革は、金融機関の事業性を評価する新基準の制定、金融検査方法の変更をはじめ業界再編も視野にいれたもので、地方銀行にとってはコペルニクス的転換を求める衝撃的な内容

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