日本の構造 50の統計データで読む国のかたち (橘木 俊詔)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
講談社のpodcastで紹介されていたので手に取ってみました。
財政・教育・労働・生活・福祉といったジャンルの50項目について、その統計データを示しながら簡単な解説を加えていくという体裁でまとめられた本です。
アマゾンの書評での評価は低いのですが、その一因は、本書に求めるものの違いによるのだと思います。
個々の項目ごとのしっかりした分析や論述を求めることは、本書の性格上、それは過度な要求でしょう。本書は、あくまでも俯瞰的なガイドブックです。ここで概要をつかんだうえで、必要に応じて(別の方法にて)深掘りを進めていくのです。
そういった視点でいえば、私の場合は(恥ずかしながら)「概要レベル」ですら理解していなかった現実に気づきました。情けない限りです。
まずは、よく言われている「日本における生活保護制度」について。
ここまで低い理由は様々あるようですが、必要な対象者への制度利用の促進が図れないようであれば、(著者も指摘しているように)いたずらに当該制度の適用にこだわるのではなく、同様の効果のある他の社会保障制度の適用拡大も検討すべきでしょう。「必要な人に必要な支援を」というのが生活保護制度の本質的な目的なのですから。
もうひとつ、OECD諸国間の「相対的貧困率」の比較。
この現実は結構ショッキングですね。ここまで日本の貧困(格差)が進んでいたとは思いませんでした。
さて、改めて数々の気づきを与えてくれた本書ですが、ひとつ、読んでいて気になった点がありました。
「統計データ」をもとに解説しているというのが「売り」の割には、肝心の統計データの「定義」が明確に書かれていないのです。
たとえば「開業率」「閉業率」「高齢化率」・・・、分子・分母は何なのか? 数値処理の基本が蔑ろにされているのはマズイでしょう。
併せて、グラフの(縦)軸の項目の説明(説明)がないものが多く見られましたし、せっかくグラフ化していてもかえって見にくくなっているものも散見されました。
そのあたり、最終的な「仕上げ」のレベルはとても雑で、読者に対しても不親切な印象を受けました。
本書が狙ったコンセプト自体は悪くないのですから、残念です。
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