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本能寺の変1582 第104話 13上総介信長 6道三の最期 天正十年六月二日、明智光秀が織田信長を討った。その時、秀吉は備中高松で毛利と対峙、徳川家康は堺から京都へ向かっていた。甲斐の武田は消滅した。日本は戦国時代、世界は大航海時代。時は今。歴史の謎。その原因・動機を究明する。『光秀記』

第104話 13上総介信長 6道三の最期 

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信長は、祭りが大好きだった。

 天文二十四年1555。
 信長、二十二歳。

 この頃のことだろう。
 信長の、別な一面が見える。
 若者の姿である。

 七月十八日。
 丁度、お盆。
 信長は、津島にいた。

  おどり御張行の事

  七月十八日、おどりを御張行
  一、赤鬼、平手内膳衆、
  一、黒鬼、浅井備中守衆、
  一、餓鬼、滝川左近衆、
  一、地蔵、織田太郎左衛門衆、

   辨慶に成り候衆、勝れて器量たる仁躰なり。
  一、前野但馬守、辮慶、
  一、伊東夫兵衛、辮慶、
  一、市橋伝左衛門、辮慶、
  一、飯尾近江守、辮慶

  一、祝(ほうり)弥三郎、鷺になられ侯。
    一段、似相申し侯なり。

  一、上総介殿は、天人の御仕立に御成り侯て、
    小鼓を遊ばし、女おどりをなされ侯。

  津島にては、堀田道空庭にて、一おどり遊ばし、
  それより清洲へ御帰りなり。

信長は、大衆に人気があった。

 性格なのだろう。
 大衆の心の内へ、入って行くことが出来た。
 心情的交流が見える。

  津島五ヶ村の年寄ども、おどりの返しを仕り侯。
  是れ又、結構申す計りなき様躰なり。
  清洲へ至り候。

 彼らにとって、自慢の領主だった。

  御前へめしよせられ、
  是れはひようげたり、又は似相たりなどと、
  それぞれあひあひと、しほらしく(親しげに、もっともらしく)、
  一々御詞懸けられ、
  御団(うちわ)にて、冥加なく(恐れ多くも)あをがせられ、
  御茶を給(た)べ侯へと下され、

  悉(かたじけな)き次第、炎天の辛労を忘れ、有り難く、
  皆、感涙をながし、罷り帰り侯ひき。

信長は、東方の脅威に備えねばならなかった。

 駿河の今川義元。
 信長に、気の休まる間などなかった。

信長は、山口父子を排除しようと考えた。

 三年前のこと。
 すなわち、天文二十一年1552。
 父子は、信長を裏切った。
 「赤塚の合戦」 
 背後で、義元が糸を引いていた。

  一、熱田より一里東、鳴海の城、山口左馬助入れ置かれ侯。
    是れは武篇者、才覚の仁也。

    既に、逆心を企て、駿河衆を引き入れ、
    ならび大高の城・沓懸の城、両城も左馬助調略を以て乗つ取り、
    推し並べ、三金輪に三ケ所*、何方へも、間は一里づゝなり。

     *三本足の鼎(かなえ=酒器の一種)のように、しっかりと。

  【参照】13上総介信長 1信秀の死 92   

今川義元は、尾張へ軍勢を派した。

 岡部元信を、鳴海城に入れた。  

    鳴海の城には、駿河より岡部五郎兵衛城代として楯籠り、
    大高の城・沓懸の城、番手の人数、多太々々(たぷたぷ)と
    入れ置く。

山口父子の最期。

 ところが、・・・・・。
 父子は、義元によって、誅殺された。 

    此の後、程在つて、
    山口左馬助子息九郎次郎父子、駿州へ呼び寄せ、
    忠節の褒美は無くして、
    無情(なさけなく)、親子共に腹をきらせ侯。

信長は、かなりの策謀家である。

 これもまた、あまりのも都合が良すぎる。
 理由は、明らかならず。
 信長の謀略に引っ懸かったともいわれるが、定かではない。

 先の、信光の一件もある。
 その可能性は、大きい。

  【参照】13上総介信長 5清洲乗取り 103

信長は、下四郡の統治に難儀していた。

 そればかりでは、なかった。
 なるほど、尾張の内、その半分は手に入れた。
 しかし、前途多難。
 多くの難題を抱えていた。 

  一、上総介信長、尾張国半国は御進退なすべき事に侯へども、

 
木曽川・長良川の河口流域は、服部左京進に押領さている。

    河内一郡は、
    二の江(愛知県弥富市荷之上町)の坊主服部左京進押領して、
    御手に属さず。 

 知多郡には、今川勢が進出していた。

    智多郡は、駿河より乱入し、

 残りの二郡も、まだまだ、不安定な状況だった。

    残りて二郡の内も、乱世の事に侯間、慥(たしか)に御手に随はず。
    此の式に侯間、万(よろず)御不如意千万なり。
                          (『信長公記』)


 ⇒ 次へつづく 第105話 13上総介信長 6道三の最期 


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