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SF、読書のよろこびマガジン

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大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
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#ノンフィクション

【ノンフィクション】特攻服少女と1825日

【ノンフィクション】特攻服少女と1825日

「コギャル」「ヤンキー」は何となく想像できるけど、女の不良「スケバン」女だけの暴走族「レディース」がいて、彼女らの専門誌が何万部と売れ、本物のヤンキーたちが修学旅行でディズニーランドに行った帰りに編集部に来て、紙面で総長が「半端にやるぐらいなら学校行きな」と不良をさとす。

こんな時代があったのか!の連続。

少年院から出所してすぐにかつての仲間からリンチにあった、ある少女の事件をきっかけに、レデ

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「つけびの村」が他人事とは思えない

「つけびの村」が他人事とは思えない

限界集落で行われた連続放火殺人事件の犯人を取材したノンフィクション「つけびの村」が、まあ怖かった。恐怖を与えるために書かれた本じゃないのに、不安になるツボを刺激する内容だった。
それは、ぼくが電車内で叫んでいる「どうかしてる人」を見ていられないのと関係がある。
そういう人が、向こう側の人間とは思えないのだ。

「つけびの村」では、連続放火殺人をおこして、殺害予告のような川柳を残した犯人の印象を聞い

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【読書】すっぽん鍋に語彙を失い、追撃の焼きすっぽんで頭のネジが飛ぶ。獣系ワイルド飯テロ【肉とすっぽん】

【読書】すっぽん鍋に語彙を失い、追撃の焼きすっぽんで頭のネジが飛ぶ。獣系ワイルド飯テロ【肉とすっぽん】

平松洋子「肉とすっぽん」を読みました。
牛、鴨、鹿、羊、鳩、くじら。動物たちを解体して料理している人たちに取材したルポ。
こういう内容って、どうしても「生き物を殺して食っていいのか」要素が多くなるけど、それがそんなにない。動物たちはみんな与えられた生を全力で動き回り、人間たちは人生をかけて磨いた技術で、臭みをのこさず最高の肉にするため真剣に挑み、それを取材する平松洋子の言葉の選び方は肉の旨さと食肉

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【読書感想】コロナに傷つけられない程度の人生のぼくと高校球児「あの夏の正解」

【読書感想】コロナに傷つけられない程度の人生のぼくと高校球児「あの夏の正解」

コロナで甲子園が中止になった年に、
死にものぐるいで練習してきた愛媛・済美高校と石川・星稜高校の野球部に取材したルポ。

作者の早見和真さんも元球児で、プロを目指していたが有名選手を見てから自信を失い、ずっとだった。そのせいか、甲子園こそ清々しい青春の舞台!とはとらえてなくて、一歩引いて、野球好きなんだけど甲子園のちょっと異常なかんじもわかっている。

補欠だった経験を小説にして作家になったけれど

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「最悪の予感」は伝え方が9割

「最悪の予感」は伝え方が9割

この本ではパンデミックを山火事にたとえる。
火が出たときに全速力でバケツを抱えて、慌てすぎだろうと笑われても水をかければ「じゅっ」と消える。
みんなが炎を確認したときにはもう遅い。

新型コロナの被害をバッシバシに浴びている最中のアメリカでベストセラーになったノンフィクションだ。

感染症が流行したときのシミュレーションをしていた科学好き親子。
男社会で軽く見られている、聞きなれない職業「保険衛生

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【読書記録】ワクチンによる腕の腫れは、花である。吉村昭「雪の花」

【読書記録】ワクチンによる腕の腫れは、花である。吉村昭「雪の花」

ワクチンによる治療を福井県に普及させた医師の伝記です。
冒頭から、天然痘の死者を乗せた大八車が町を走り回る。その感染力はすさまじく、一人かかれば家族とその周囲は全身にボコボコと赤黒いあざをつくって死んでいく。

全身に醜いできものができるのが特徴だ。
命が助かっても、醜く変貌した顔で生きるのに耐えられず自殺した女もいる。
これが毎年のように流行する。

治療法は、牛糞を粉末にして飲むといった迷信や

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「後ろ手はやめろ、飯を食うときどうするんだ」吉村昭「破獄」ネタバレ有

「後ろ手はやめろ、飯を食うときどうするんだ」吉村昭「破獄」ネタバレ有

昭和11年の青森刑務所を皮切りに、秋田刑務所、網走刑務所、札幌刑務所、4回脱獄した佐久間清太郎の生涯を、それぞれの看守らの視点でたどる。

実際の証言を元にした小説です。

まずむかしの刑務所の様子だけで面白い。その中でこっそり練る策略。ミステリー的な脱出の面白さと、佐久間という得体の知れない男。
ひとつ刑務所を突破してはなぜか捕まってくる。

日本の状況が変わって、いちばんつらい戦時下では敗戦ム

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【読書記録】「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」自撮り登山で指9本を失った男と、爆笑問題太田の共通点

【読書記録】「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場」自撮り登山で指9本を失った男と、爆笑問題太田の共通点

「自撮り登山家」栗城史多さんは、学校祭の演劇になるとはりきって、脚本も主演もなにもかもやりたがる生徒だった。

1年のときは原始人の話。
2年ではラーメン屋の話。
3年のときは「踊る大捜査線」のパロディをやった。

3年間通して受け持った担任の先生は、これに気づいて大変驚いた。
話が全部続きものになっていたのだ。
3年目に出てきた悪者が1,2年のときの出来事を仕組んでいた。

爆笑問題の太田光が、

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【読書記録】高野秀行「幻のアフリカ納豆を追え!」

【読書記録】高野秀行「幻のアフリカ納豆を追え!」

危険な本だ!
ここには旅がある。出会いがある。
世界中の人が、家にこもっての生活に慣れてきたというのに。外の世界に出る驚きと喜びを思いださせようとしている。

「幻のアフリカ納豆を追え!」は、海外にも納豆があることを知った作者が、韓国とアフリカの納豆世界を探る一冊。

まずは韓国納豆「チョングッチャン」。
これまでどこの地域も
「うちの納豆が一番うまい」
と手前納豆精神を押し出してきたのに、韓国人

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【読書記録】エンタメノンフィクションの到達点「謎のアジア納豆」が文庫化!

【読書記録】エンタメノンフィクションの到達点「謎のアジア納豆」が文庫化!

世界の未知を求めて旅する作者が、ジャングルの奥地で見た納豆ごはんの幻影を追い求める。発売当時に単行本で読み、文庫版を買い足そうかと思っている大好きな本。

東南アジアの秘境で、現地の人が振る舞ってくれた食事が、絶対に日本にしかないはずの「納豆卵かけごはん」だった。
あとになって考えるとあれは何だったのか?日本に帰りたい気持ちが生んだ幻覚なのか?

ぼんやりした記憶と、ある留学生の「日本の納豆はバリ

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【読書】タバコは体に負荷がかかるからトレーニングになる。上原善広「一投に賭ける」

【読書】タバコは体に負荷がかかるからトレーニングになる。上原善広「一投に賭ける」

日本人で初めて、投てき種目で世界トップレベルになった男、溝口和洋。
体が壊れる寸前までトレーニングをこなす一方、酒とタバコは欠かさない。いい加減な記者は追いかけて袋叩き。引退後はパチプロになって生活しつつ室伏広治に指導するなど、記録以外が気になる男でもある。

日本スポーツ界の重要人物でありながら、あの人は・・・と敬遠されてきた「人生やり投げ男」が半生を語る、のか?語っていないのか!?

取材内容

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今週読んだ本。【ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた】青山通

今週読んだ本。【ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた】青山通

ウルトラセブンの最終回で流れた曲に感動した小学生が、
クライマックスで流れるあの曲は何なのか、どこで手に入るのかと調べ、出会うまでの7年にわたる歳月の中で、音楽評論家としての基礎がつくられていく。

主人公のダン隊員が、自分の正体はウルトラセブンだとアンヌ隊員に告白する。
その場面を、子供が必死で観ている。ノートにセリフを書きうつしながら、お小遣いで買った貴重な録音機材をそろえて。

クライマック

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