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今週読んだ本。【ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた】青山通

ウルトラセブンの最終回で流れた曲に感動した小学生が、
クライマックスで流れるあの曲は何なのか、どこで手に入るのかと調べ、出会うまでの7年にわたる歳月の中で、音楽評論家としての基礎がつくられていく。

主人公のダン隊員が、自分の正体はウルトラセブンだとアンヌ隊員に告白する。
その場面を、子供が必死で観ている。ノートにセリフを書きうつしながら、お小遣いで買った貴重な録音機材をそろえて。

クライマックスで流れる曲は何度も何度も聞いて、もはや血肉と化した。どうしてもどうしてもこのレコードが欲しい!

そんなとき、偶然テレビから「その曲」が流れてくる。
オーケストラを左上から俯瞰で映したアングルを、作者は今でも覚えているという。
シェーマンのピアノ協奏曲。
これなのか!

親にたのみこんで、ついに念願の曲を手に入れた。

だが、そこからが長い。聞いてみると、なんだか違う。明らかに違う。
最終回の情熱的なピアノの盛り上がりがない。

なんとか自分を洗脳して「これはあの曲なんだ、夢にまで見たあの場面の曲なんだ」と言い聞かせて聞く、涙ぐましい努力が語られる。

だが、その経験から、クラシックは同じ曲でも違う表情を見せることを知った。あの場面で流れた曲名はわかった。だけど、誰の指揮で、誰の選曲で、なぜそこまで感動的になったのかを徹底的に語る。
ウルトラセブンやクラシックの解説は、正直
「は、はい、なんかよくわからないけど、とにかく凄そうだ!」
ぐらいしか理解できないけど、それだけ、この人にとってはクラシックもウルトラセブンも、かんたんな言葉で伝わるような浅いものじゃないんだ。

今だったら「ウルトラセブン 最終回 曲」
とか検索して終わりだけど、情報が限られていた時代だからこそ、スポティファイもYOUTUBEもない時代だからこそ、好きな気持ちが熟成できた。熱っちい一冊。


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読書感想文

読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。