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#208 「ビジネス頭の体操」 今週のケーススタディ(2月8日〜2月12日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


2月8日(月) かんぽの不正販売問題は構造問題!?

1887(明治20)年のこの日、逓信省(後の郵政省、現在の日本郵政グループ)のマークが逓信の「テイ」に合わせて甲乙丙丁の「丁」に決定したことから「〒マークの日」です。
しかし、万国共通の郵便料金不足の記号「T」と紛らわしいことがわかり、6日後の14日に、「テイシンショウ」の「テ」を図案化した「〒」の誤字だったことにして変更したそうです…

郵便局、ご案内の通り、民営化され、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社に分割されました。

郵便事業を引き継いだのが日本郵便です。
2019年以降、全国で約2.5万箇所もある郵便局のネットワークを維持する(郵政事業のユニバーサルサービスを確保する)費用の一部、という理由で交付金が支払われることになりました(以下スキーム図:同社決算資料より)。

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2020年度にはなんと2,952億円も支払われています(下図:)。

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電子メールの発達や携帯電話の普及によってハガキや封書のやり取りはかなり減っていると思われますが、実際のところはどうなのでしょうか?

各種統計データから、郵便局数、郵便物総数、小包数の3つの推移をまとめたものがありましたので転載します(出典:「郵便事業の現状とデジタル時代の郵便サービス」通信研究会報告(2020年2月25日))。

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ご覧のように、通常の郵便物は約270億通程度をピークに減少傾向が続いています。ちなみに、昨年度実績は約163億通と減少は続いています。
一方で、ゆうパックを代表とする小包は大きく伸びていることが分かります。ゆうパックの昨年度実績は9.7億個となっています。
そして、郵便局数はほぼ横ばいで推移していることが分かります。

郵便物減少の背景を考えるために、日本郵便の「郵便事業の現状について(2018年8月30日)」という資料に、郵便物数とインターネット普及率、スマートフォン契約比率とを併記したものがありましたので転載します。

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やはり相関が、ありそうですね。

さて、郵便事業は労働集約的なコスト構造であることは容易に想像がつきます。実際売上高人件費率は約62%と、ヤマトHDの約51%、サービス業平均の約27%と比較しても圧倒的に高くなっています。

この背景には、先程の郵便物の減少が大きく関係しています。
例えば、1箇所に多くの郵便を配達するのであれば、一度に処理できますから効率が良いのですが、少なくなってもコストはほとんど変わりません。具体的には、以下の通りです(出典:同資料)。

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つまり、1996年度には1箇所に1.39通配達していたものが、2017年度には0.92通と減少し、経営効率が悪化していることが分かります。

一方で、「ユニバーサルサービス維持」という足枷があり、郵便局を大幅に削減することはできません。

となると、どこに皺寄せがいくかというと、もっとも大きなコスト、人件費です。以下の通り日本郵便の正社員平均賃金は民間企業平均と比べて低い傾向にあります(出典:同資料)。

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しかし、正社員の給与を抑え気味にしても、人手不足で臨時でアルバイトを募集しなければならない状況です。そのコストは業界よりも上昇傾向です。

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このように、郵便事業を取り巻く環境は厳しいものがあります。

こうした厳しい環境下で少ない収入源の一つであったかんぽ生命保険商品の販売手数料に対する高い目標が課され、不正に繋がったとも言えます。

→一般の事業会社でも、ある事業分野の低迷を補うため他事業への目標配分が高くなることはないだろうか?それ自体は問題ないとしても、高すぎる目標はなんからの不正のきっかけになる可能性があるかもしれない。自社ではその危険はないだろうか?


2月9日(火) 鬼滅効果で2桁成長した漫画市場

漫画本専門古書店「まんだらけ」が制定した「漫画の日」です。
漫画家・手塚治虫の命日にちなんでいます。

漫画。
最近はビジネス書も漫画化されたりしていますね。
一方で、書籍自体が低迷している印象もあり、伸びているのか減少しているのか予想がつきません。
まずは、全体の売り上げを見てみましょう。

公益社団法人全国出版協会によると、日本の出版物推定販売金額の推移がこちらです。

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書籍、月刊誌、週刊誌いずれも減少傾向です。
特に、月刊誌、週刊誌はインターネットやスマホの普及で情報を得るスピードが格段に速くなったことに加え、無料でそこそこのクオリティの情報が手に入ることなどもあり、書籍よりも減少のペースが早くなっています。
書籍は、自己啓発書、ビジネス書が売り上げを伸ばす傾向があり、また、児童書はヒットが多く、毎年手堅く売れていることもあり、減少ペースは緩やかです。

さて、いよいよ漫画です。
出版科学研究所「出版月報」によると、2019年のコミック市場(電子版含む)は4,980億円と推計されています。これは、対前年12.8%増と大幅に伸びています。
(グラフ中、黄色が紙のコミックス、水色が紙のコミック誌、黄緑が電子)

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紙のコミックス(単行本)は、『鬼滅の刃』の社会現象的なヒットなどによりプラス成長で1,665億円(同4.8%増)。
紙のコミック誌は722億円(同12.4%減)。
紙の市場合計は2,387億円(同1.0%減)。
電子コミック(コミック誌含む)は2,593億円(同29.5%増)。
電子の市場占有率は52.1%と、ついに紙の市場を逆転しました。

このように、漫画市場は長期的にはやや縮小傾向ではあるものの、大きなヒット作などでプラスとなる可能性はあること、電子コミックのシェアが半数を超え、今後も伸びていくことなどが伺えます。

最後に、世代的にちょっと前の世代になると思いますが、少年ジャンプなどのいわゆる「四大少年誌」の発行部数推移がありましたので、転載します((出典:日本と世界の統計データ)。

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やはりジャンプはすごい…
ちなみに、1995年3−4号合併号で達成した653万部というのはギネスにも登録されていて、今でも破られていないそうです。

→音楽CDはiTunesなどの普及により、アルバム単位で買うのが普通であった購入単位を、1曲づつに変え、今ではサブスクリプションにより定額聞き放題が普及している。このような購買パターンの変化は、電子化が進んできた漫画市場ではどのような展開を見せるだろうか?


2月10日(水) ふとんはどんどんハイテクに!?

全日本寝具寝装品協会が1997(平成9)年に制定した「ふとんの日」です。
「ふ(2)とん(10)」の語呂合せによるものです。

ふとん。実は正確な市場規模は探せませんでした。一つには、業界団体が2つに分かれていることがあります。

「ふとんの日」を制定した全日本寝具寝装品協会、ともう一つ、日本寝具寝装品協会、という団体があるのです(こちらの協会も「ふとんの日」を制定していますが、10月10日です。10が2つで…だそうです)。

ということで、まず、家計調査から「寝具類」の年間消費支出額の推移を見てみました(出典:家計調査(財務省))。

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年間で平均8千円から1万円の間で推移していることが分かります。

次に、寝具寝装市場、の推計がありましたので、少しデータが古いですがご紹介すると、2017年で8,256億円(前年比1.4%増)となっています。

特に、ニトリの「Nクール」シリーズの寝具の伸びが顕著で、16年度582万点だったものが、17年度には860万点、18年度には938万点にもなっているそうです。

さて、もう少し市場を幅広に捉えた、データもあります。

矢野経済研究所の「ホームファッション小売市場に関する調査(2020年)」によると、2020年のホームファッション小売市場規模は前年比1.4%増の3兆3,845億円と予想されています。

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2019年実績は対前年で1.8%のマイナスでしたから、やはり、巣ごもり消費が牽引したようです。

好調なアイテムとしては、「ホームファニチュア」、「寝具」、「キッチンツール」などを展開する企業は軒並み好調となったそうです。

実際、巣ごもり消費を取り込もうと各社様々な取り組みをしています。

大丸東京店では、外商顧客を対象にZoomを用いたオンライン接客に着手、オンライン商談以外の売り上げも含めて、昨年10月の寝具の売り上げは前年比24.6%増だったそうです。

オンライン商談は概ね好評で、顧客の寝室を見てアドバイスできるというメリットもあるそうです。

また、成長分野として、「スリープテック」が注目されています。
これは、快適な睡眠を得られるとする寝具や環境を提案するもので、
寝具ではオーダーメイドの枕、睡眠中の人の動きをセンサーで測り、快適な睡眠と起床を促すベット、電化製品では入眠時間に合わせて自動的に明るさを調整するLEDシーリングライト、サプリメントでは熟睡ができると謳うもの、などがあり、正確な統計はないものの、すでに1兆円の市場規模があると推定されています。

→「良い眠り」に対するニーズは高まっているようだ。実際「スタンフォード式最高の睡眠」は30万部を超えるベストセラーになった。今後は眠りに関してどのような商品、サービスが伸びるだろうか?


2月11日(木) 「の」が入った理由は?

“建国をしのび、国を愛する心を養う”国民の祝日。
1966(昭和41)年から国民の祝日になった「建国記念の日」です。

あまり深く考えたことはなかったのですが、「建国記念日」ではなく「建国記念の日」なのですね。

戦前もあったこの祝日の由来が「紀元節」であり、天皇制を強化する策の一つとして、戦後になってこの祝日はGHQの指示により廃止されました。

その後復活の動きがあり、1957(昭和32)年以降9回の議案提出・廃案を経て、1966(昭和41)年に、日附は政令で定めるものとして(つまり日付は未定のまま)国民の祝日に追加されたのです。

日附は内閣の建国記念日審議会でも揉めたが、10人の委員のうち7人の賛成により、2月11日にするとの答申が1966(昭和41)年12月8日に提出され、翌日政令が公布され現在の形になりました。

「建国記念日」ではなく「記念日」なのは、建国された日とは関係なく、単に建国されたということを記念する日であるという考えによるもの、とされ、当時の意見の対立が伺えます。

他国では、同じように建国を記念する日はありますが、ほとんどは、はっきりとこの日に国ができた、と分かる日付があるものです。

例えばアメリカであれば、「独立記念日」ですし、元植民地であった国であれば、やはり、独立した日が明確です。

しかし、日本の場合は「この日にできた」という明確な日付がわからないのです。もともとの「紀元節」というのは、神武天皇が即位された日、という日本書紀に書かれている日付なのですが、そもそも真実かわからないです。なにせ紀元前660年の話ですから…

と、ここで、アメリカの占領が終わった日、というのは明確ではないか?と思ったら、すでに安倍前首相が1952年4月28日のサンフランシスコ講和条約発行が「主権回復の日」にあたるとして、2013年の閣議で決定し、政府主催の式典を行なっていました。

ところが、私も反省すべきなのですが、このサンフランシスコ講和条約時点では、沖縄、奄美群島、小笠原諸島はまだ主権を回復していないのです。当事者からすれば、日本から切り捨てられたという日なのに、首相が「主権回復の日」として式典を、というのですから、厳しい反応がありました。

事実、当時の琉球新報では、同じ4月28日を「屈辱の日」として報じています。

自国の歴史、抑えるべきところはきちんと抑えておきたいですね。

→「県民の日」を決めていない県も多い。これだけ議論がある建国記念の日、なくす、という発想はないだろうか?その場合何が問題になるだろうか?


2月12日(金) がんより怖い!?薬剤耐性菌

1941(昭和16)年のこの日、イギリスのオックスフォード大学附属病院が、世界で初めてペニシリンの臨床実験に成功した「ペニシリンの日」です。

ペニシリン。
よく耳にしますが、1928年にイギリスのアレクサンダー・フレミング博士によって発見された、世界初の抗生物質だそうです。
抗菌剤として実用化され、第二次世界大戦で多くの命を感染症から救いました。博士はこの功績によってノーベル生理学賞・医学賞を受賞しました。

病院でよく「では、抗生物質を出しておきますね」と言われる、あれ、なんですね(もちろん、ペニシリンそのものではないですが)。

で、さぞかし利用されているのだろう、と厚生労働省の「薬事工業生産動態統計」を調べてみると、意外な事実がわかりました。

「抗生物質製剤」の生産金額が減少しているのです。医薬品全てにおけるシェアも低下しています。

具体的には2019年と2005年とを比較すると以下の通り、半分以下になっています。医薬品におけるシェアも3分の1以下になっています。

2019(令和元)年:1,554億円(医薬品におけるシェア1.6%)
2005(平成17)年:3,469億円(同5.5%)

理由を調べてみると、感染症の切り札と言われる抗菌薬(抗生物質)が効かない薬剤耐性(AMR)の問題が世界中で深刻化していることと関係があることがわかりました。

日本でも「薬剤耐性菌」によって2017年に8,000人以上が死亡したとの推計が出ており、世界的にも、国連がこのまま何も対策をとらなければ2050年までにAMRによって年1,000万人が死亡する事態となり、がんによる現在の死亡者数を超える恐れがあると警告したそうです。

問題の大きさがわかります。

正確な内容をご確認頂いた方が良いと思いますので、以下に国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンターのHPを掲載しますのでご参照ください。


抗生物質の話に戻りますと、抗生物質の使いすぎや正しい使い方がされていないことで、AMRが発生している恐れがあることから、2016年にAMRアクションプランが策定され、2020年までの目標として抗菌薬(抗生物質)の合計量を33%、減少させることが目標となっているそうです。その推移も公表しており、以下が2013年からの販売量の推移となります。

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抗生物質の販売が減っている背景にこうした状況があったのです。

→「使いすぎたり正しく使わないことで悪影響が出ること」というのは医薬品の他にもある現象に思える。具体的に思いつくものはあるだろうか?そしてその対策はどういったものが考えられるだろうか?


最後までお読みいただきありがとうございました。

1つでも頭の体操になるネタがあれば嬉しいです。

昨年7月から毎週日曜日にこんな投稿をしています。
だいぶ溜まってきました。
よろしければ過去分も覗いてみてください。
「へぇ〜」がいろいろあると思います。


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