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日出処というのはこの国のことだ

日出処というのはこの国のことだ

『日出処の天子』を読んだ。
初めは美しい毛人(蘇我蝦夷)しか目に入らなかったんだけど、気付いたら厩戸王子(聖徳太子)しか見ていなかった。
「完」の字が目に入った読了の瞬間にほろほろと涙が流れた。

毛人は大臣蘇我馬子の長男。厩戸は皇族。
毛人には明るくて仲の良い妹がいて、父も母も毛人を愛してる。
厩戸は母から避けられ、弟たちとも親しいとは言えない。

厩戸の毛人への執着の理由は、母から畏れられてき

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9月の読んだ本たち

9月の読んだ本たち

最近内定式とか授業とか色々忙しくしててnoteサボってました。
今回は9月の読んだ本の感想を書きます。

先月は小説11冊と詩集1冊と漫画1冊です。
すごく偏っててこれからは注意したいのですが、殆どの作品が20世紀のものでした。
たぶん初めてイタリア文学を読みました。『猫とともに去りぬ』です。本当に面白かったです。

ここ最近、長かったり短かったりしたけど一冊読み終えるごとに感想をnoteで投稿し

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堤中納言物語を読みました(超面白かった!)

堤中納言物語を読みました(超面白かった!)

一昨日ぐらいに蜂飼耳さん訳の堤中納言物語を読みました。全部は読んでないです。
これは平安時代とかに書かれた物語で、短い物語が沢山収録されていました。
光文社古典新訳文庫なので、原文じゃなくて現代の言葉遣いで書かれています。もちろん、身分とか通い婚とか和歌とかそういうストーリーの部分はそのままで言葉だけ新しい感じです。

高校時代、私は古文や日本史は大嫌いでこれらについてはいくらでも語れるくらいエピ

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『車輪の下』へルマン・ヘッセ読了。十代の価値について考えた。

『車輪の下』へルマン・ヘッセ読了。十代の価値について考えた。



この小説には周囲の人々からの期待を一身に背負って、その軋轢の中で心を踏み潰されていく少年が描かれている。

小説には車輪が度々出てくるが、これは否定的で抑圧的なものを象徴していると考えられる。

多分、自分もそうなんだけど、どんな人も、学校に通いながら自然と抑圧を受けているんだと思う。
私の場合は、学校は楽しい場所であったという認識よりもそういう面がよく思い出される。
学校は、常に知的好奇心と

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ツルゲーネフ『初恋』読了

ツルゲーネフ『初恋』読了

この小説は主人公が16歳の頃の初恋について回想し、初恋相手のコケティッシュなヒロインに弄ばれるなど非道徳的な内容を詩的な文章で記した手記の形式になっています。

この小説の読了直後の感想は、何かが気に入らなくて不満でした。
二回目にさらっと目を通してその正体が分かりました。主人公の初恋相手への感情と、主人公への感情がぐちゃぐちゃしていたのを整理して、ようやく分かりました。

まず、主人公の初恋相手

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武者小路実篤『愛と死』読了

武者小路実篤『愛と死』読了

あっという間でした。

崇高な恋愛。喪失。悲哀。
言葉で表せません。

夏子の死の電報の場面、鳥肌が立ちました。そこからずっと泣いていました。


武者小路実篤先生の小説は『友情』に次いで二冊目なのですが、どちらも、どうしてこんなに純粋な美しいものなのでしょう!

全く、派手じゃないんです。でも、美しい。
たくさん装飾して飾り立てるような派手さも美しいけれど、それだけが美しいってわけじゃないんで

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八月に読んだ本(15作品)のまとめ

八月に読んだ本(15作品)のまとめ

8月の下旬は大学もないしバイトもなくて退屈だったので毎日本を読んでいました。その作品をまとめて、自分なりのお気に入りを決定しました。
あえて19-20世紀の名著を選んでばかりいましたので、どの本もかけがえのない素晴らしいものであったことを最初に述べておきます。

読んだ本(読了順)
①トルストイ『人はなんで生きるか(Чем люди живы)』1891年(寓話)
②ブレヒト『ガリレオの生涯(Le

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嵐が丘(上・下通しての感想)

嵐が丘(上・下通しての感想)

嵐が丘、読了。
あまりにも深遠。不朽の愛とか復讐とかそんなものじゃない。愛や友情よりもっと、大いなるものを感じる。ミスティシズムって言うでしょうね。
でも本当にそう感じるの。
悪魔になってまで復讐するほどの熱烈な愛なんて持ってないでしょ。私には信仰心みたいな風に見えたわ。

数マイルの距離にある二つの家、幸福で優雅で暖かい慈愛に満ちたスラッシュクロス屋敷と、憎しみと暴力に満ちた地獄のような嵐が丘。

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