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ウクライナ

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ウクライナ関連でこれは記録しておきたいと感じた記事を不定期に集めておきます。製作はキリスト教メディア、クリスチャントゥデイの編集長です。
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#ロシア

映画 『マリウポリの20日間』 : 事実をして語らしめる、 結果としてのプロパガンダ映画

映画 『マリウポリの20日間』 : 事実をして語らしめる、 結果としてのプロパガンダ映画

映画評:ミスティスラフ・チェルノフ監督『マリウポリの20日間』 (2023年・ウクライナ映画)

「第96回 アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作」である。
だからこそ、終わりの見えない「ウクライナ戦争」に、いささか倦み疲れてきた私たちの間でさえ、話題にもなり得た作品だ。

だが、「アカデミー賞」が、アメリカ映画界の賞だということを意識した人が、いったいどれだけいただろうか?
例えば、カンヌ映

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新連載『サバキスタン』のお知らせ

新連載『サバキスタン』のお知らせ

新連載のお知らせです。
普段はこういう告知みたいなことはあまり書いたりしないのですが、今回はかなり特殊な事例なので最初に説明があったほうがいいかもしれないと思いまして、ここに書きます。
端的に言いますと、ロシアからとあるコミックが届きまして、その日本語翻訳をはじめることにしたのです。
ちょっとだけ紹介しますので、よかったらお付き合いください。

その作品の名は『Sobakistan(サバキスタン)

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ウクライナ人の目の前で「戦争は絶対悪」を説く違和感

ウクライナ人の目の前で「戦争は絶対悪」を説く違和感

先日、NHKの報道特集において、ある高校生が主催した「ウクライナの学生と戦争を無くすための議論をしようぜ」的な趣旨のイベントが紹介された。
特集の中で紹介されていたのはそのごく一部であったため、全体としてどのような議論が交わされたのかは分からないものの、その切り出された質疑の一部分がひどく違和感を覚えるものだった。

質問者は、どういう神経で同世代のウクライナ人を目の前にしてその質問をぶつけたのか

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ロシア・ウクライナ・ベラルーシの宗教史2 ルーシの受洗

ロシア・ウクライナ・ベラルーシの宗教史2 ルーシの受洗

1.はじめに1988年、モスクワでは「ロシア正教受洗千年祭」が挙行されました。反宗教政策を掲げたソヴィエト政権は、1917年のロシア革命以降、ロシア正教会に対し徹底的な弾圧を加えてきましたが、ゴルバチョフ政権下では宗教的寛容と政教和解へと政策を転換しました。「千年祭」は、まさに正教会の復活を象徴する出来事でした。

ロシアの改宗は1988年の1000年前、すなわち988年とされています。当時はまだ

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地政学から見たウクライナ戦争     なぜロシアはクリミア半島にこだわるのか 海洋への出口をめぐる300年の闘争   ウクライナ戦争に関する私見10     2022年5月16日現在

地政学から見たウクライナ戦争     なぜロシアはクリミア半島にこだわるのか 海洋への出口をめぐる300年の闘争   ウクライナ戦争に関する私見10     2022年5月16日現在

今回の論考は、視点を大きく広げて考えてみようと思う。空間軸を地球全体、時間軸を100年単位に広げた「ビッグ・ピクチャー」にウクライナ戦争を置いて、それがどう見えるか考察する。

こうしたビッグ・ピクチャーから国際安全保障を考える思考については、拙著「世界標準の戦争と平和」(悠人書院)で詳しく述べた。興味のある方はそちらを参照してほしい。

同書で、地球を「海」「陸」「空」の3つの空間に分類し、地理

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"あいだ"にある国家、フィンランドとウクライナ

"あいだ"にある国家、フィンランドとウクライナ

2月24日のほぼ同時刻、フィンランドの首相サンナ・マリン氏および大統領のサウリ・ニーニステ氏は、ウクライナへの侵攻を強い言葉で非難する投稿を行った。

フィンランドにとって、現在ウクライナで起きている出来事は、決して対岸の火事ではない。

以下の図を見てみよう。青色がNATO加盟国である。ご覧の通り、フィンランドは2022年現在、隣国スウェーデンとともに、NATOには加盟していない。

ロシアが戦

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【緊急掲載】戦争という完全な悪に対峙する──ウクライナ侵攻に寄せて|ドミートリー・ブィコフ/奈倉有里編訳

【緊急掲載】戦争という完全な悪に対峙する──ウクライナ侵攻に寄せて|ドミートリー・ブィコフ/奈倉有里編訳

1.形而上学的な憎悪にかられている今日の放送をしないで済むのなら、高い代償を払ってでもそうしたかった。自分の母親が亡くなった日と同じくらいの悲しみを抱え、それでも今日、逃げ出すことはできなかった。私たちが生きているあいだに、またもや戦争が起きた。

ロシアがどうやってこの戦争から抜け出すのか、そのときどうなっているのか、私にはわからない。おそらく、とても長い時間がかかるだろう。ロシアにとってこの戦

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ウクライナとロシアの未来──2022年のあとに|ミハイル・シーシキン/奈倉有里訳

ウクライナとロシアの未来──2022年のあとに|ミハイル・シーシキン/奈倉有里訳

2013年末から2014年の2月にかけて、EU加盟をめぐり「ユーロ・マイダン革命」と呼ばれる大規模な反政府デモ運動がウクライナ国内で起こった。デモ参加者らに夥しい数の犠牲を生んだこの運動ののちに、当時のウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコヴィチは失脚。しかしその直後、事態はロシアのクリミア半島併合、ウクライナ東部紛争へと動いていく。
以下、シーシキンがアフガニスタンで戦死した幼なじみのことを思い出し

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スマホ+SNS時代の戦争ニュースを      理解するためのメディアリテラシー          国際世論を戦場に          「ハイブリッド・ウオー」が進んでいる      ウクライナ戦争に関する私見4       2022年3月23日

スマホ+SNS時代の戦争ニュースを      理解するためのメディアリテラシー          国際世論を戦場に          「ハイブリッド・ウオー」が進んでいる      ウクライナ戦争に関する私見4       2022年3月23日

<前置き1>今回も戦争という緊急事態であることと、公共性が高い内容なので、無料で公開することにした。

<前置き2>今回もこれまでと同様に「だからといって、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を正当化する理由にはまったくならないが」という前提で書く。こんなことは特記するのもバカバカしいほど当たり前のことなのだが、現実にそういうバカな誤解がTwitter上に出てきたので、あらかじめ封じるために断っておく。

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