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2020年4月の記事一覧

機械調律師と廃棄人形 -Code-Zara-

機械調律師と廃棄人形 -Code-Zara-

-動かない人形-

廃ビルの奥深く
堆く積まれたガラクタの山
その天辺に彼女はいた

隙間からこぼれる光が
ガラス玉の瞳に反射する

表情からは何も読み取れない
中空を見つめ続ける瞳は
深く淡く澄んでいた

カチリカチリと鳴る音
私の内側から響く音 鼓動

ピイピイと鳴く音
羽ばたくものが歌う音 飛翔

教えてくれたあの方は
いない

私は

私は

ワタシハ ………………

木々の音
鳥の音

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over

over

新しい朝を迎えに行こう

早起きの小鳥たちが鳴くより前に
(光の粒のような星が消えてしまう前に)

愛していると誓った君の、瞳にはまぶしいなみだ

幾千もの「終わり」を越えて会いに行こう

そこには新しい光がある

まばゆい明日を描きに行こう

手に取るように群青。

夜を越えて。

あの日見た円盤、夜空を照らすサーチライト

どこまでも静かな青い海に、星空は沈んでいく

-平行世界線-

-平行世界線-

愉快に遊んでいる人がいる
熱心に仕事をしてる人もいる
夢を追い一途に頑張っている人もいて
皆同じ時間を生きている

選択肢は自由で
何をしてもしなくてもいい

時間だけが1つまた1つと零れ落ちていく

選んだ道の答えを知っているのは
数年後の傷ついた自分だけ

いつか何かが出来ると
純粋に信じた自分は過去にしかいない

現在の自分は何も知らず
空っぽの自由を生きている

透明で空虚な音を奏で
永遠

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放課後から砂場まで

スターチスの紫が錆びて
幼いウサギの瞳の色に 変わりゆく
チャイムで守られた箱庭に
片足だけ靴を落として 君は卒業した

初めて見たクラスメイトは 春の雨の日
右の頬を濡らして 笑っていた
2人に1人が 黄色い傘を開かない 通学路
空いた片手は アドレセンスの無防備さで

赤信号が膨張して 進めない夕暮れ
あどけなさで 足踏みする ステップに
うつむく君は バランスを崩した
不意に目に入ったの

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独白、蒼い手を引いて

時計の音は大きく 乾いた時を刻み
壁は白く垂れ込めて 腫れぼったく見えた
もう一人の僕が僕を見て 君も一人だねと笑って
更けゆく 今夜の呼吸は 凪ぐでしょうか

僕を今日まで生かしてきた思い出が
君を巻き込んで フラッシュバックする
図書室の夢は 光の筋に舞うダストとアンニュイ
梟の瞳で本を読む 星の欠片をガラス瓶に詰めた

記憶の中の待ち人 誰よりも知っていた
本当に 捨てられないものは

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詩・「山葡萄の詩」

詩・「山葡萄の詩」

黒澤はるお

コトリは たべたかな 

山葡萄

コダヌキは たべたかな

 山葡萄

子グマは きっと 

たべたろな

 山葡萄

もうすぐ 冬が来る 

ぼくも すこしだけ 

いただきます

山葡萄

詩・「山葡萄の詩」

終り

2020.4.27

雑踏とビジョン

用済みのカプセルが散乱 欲しがりは底無しで
開けても開けても 昔見た夢に踊らされていた
都市の憂鬱は 灰色の鳩と煙草の吸い殻
ビル壁面の大型ビジョン 黒いスーツで眺めた

追いかけていたこと 辞めてしまった
この先何があるか分からないって言った
あいつの言葉が 結果論で赤丸 付けられていく
悔しさの裏で安心して 今を肯定出来てしまった
私は 大人になってしまったようだ

あの曲が新譜だ

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薄桃の絨毯に乗って 詩・散文

薄桃の絨毯に乗って 詩・散文

桜降りしきる

目を閉じずとも
懐かしい影が
重なっていく

舞い落ちる花びら
ふわり巻き戻って

硬く澄んだ
チャイム
射しこんでくる

窓ガラス
溶かしそうな
細くとがった光

君の
声色
耳元で
聞こえてしまう

足音と喧騒に
誘われて

つるつるの
机に
いつものように
ほおづえついて

鼻をくすぐる
若い人々の
雰囲気

風になでられて




ゆるむまなじり

花びら揺れて
落ち

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色栞一枚目 「枯林」

色栞一枚目 「枯林」

枯れていることは
なんも悪いことではないと
祖父が言っていたことを
幼心にじっと受け止めた頃

枝の語る昔話と
落葉の刻む時のリズムが
魂の一隅となって働いた

枯れた林は遠くまで見える
すぐ根元に寝転んでも
空がつかめる

鳥のさえずりもうまく行き渡り
吹き抜けていく風は峻烈で
引き締まる身が
湧き立つ命を抱えている

そして何よりも閑かで
体内の気と水分が
底の方にゆったりと
落ち着いてゆくの

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白い安らぎ

白い安らぎ

ベランダからのぞいた青空に飛行機雲が見えて、遠く去っていく白い機体。
そこに乗る人たちの顔を私は知らない。
存在さえ感じとれない遠い距離。

なのに、私は彼らに愛おしさを感じている。
知らない人のことばかり考えて、いつだって他人のために働いてきたから。

部屋に戻ろう。
コーヒーを淹れよう。
マグカップを二つ。
この白い湯気の安らぎをあなたと分かちあいたい。

歩道イーストの恋  詩・散文

歩道イーストの恋  詩・散文

ガラスに映りこんだ
反対側の植え込みは
純朴な影
叶わない想い
抱えながら
風に身をゆだねるだけ
いつだって重ならない

思いの丈抱きながら
来る日も来る日も
憧憬を映してる

よく晴れた日は
ずっと近づけたようで
胸躍らせていつもより震える

あまりに曇り
淡すぎる影の日は
つらく小さく風が冷たくて

けして縮まらぬ
等距離を包んで
馳せる影が
今日も揺れている

すましたガラスに
ささやかな華

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ある晴れた日に

ある晴れた日に

おだやかな晴れと
ゆらゆらの風

土を掘れば
小さな生きものが

騒ぐでもなく
急ぐでもなく

だけど
何か言いたげ

そして雑草にも
雑草なりの理由があって

何より
雑草と決めつけているのは
人間の勝手な理由

全く関係のないものは
どこにもなくて

自然に習って
おだやかにゆらゆらと

おだやかにゆらゆらと

蕾が紡ぐ軌道

蕾が紡ぐ軌道

まだ春を迎えてない蕾

あなたの望む春はどんなもの?

それがもし叶わないものだとしたら

ずっと閉じたままでいるのかい?
                                                  

苦しいだろう

待ってるだけの時間は

何もしないなら尚更

                                                  

もう想

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幸福論

幸せとは
あなたが生まれ
あなたが啼き
あなたが微笑み
あなたが立ち上がり
あなたが歩きはじめたこと

いつのころからか
あなたは私の手を離れ
地平線の向こうに旅立った

いつか
光の中で
時が折りたたまれるとき
あなたも知るだろうか
幸せとはなにか