青豆ノノ

小さなわたしの世界を、この“街“で育ててみようと思いました。 短編小説、ショートショー…

青豆ノノ

小さなわたしの世界を、この“街“で育ててみようと思いました。 短編小説、ショートショート、日記、エッセイ、20字小説を書きます。 好物は豆です🌸 作品についてはサイトマップをご覧下さい→https://note.com/aomame_nono/n/n073dd36a34e6

マガジン

  • 恋しちゃうマガジン#ひかそこ

    初めて書いた長めの小説です。 創作大賞2023応募作「光り輝くそこに あなたがいるから」を纏めます。 全13話です。

  • 青豆の『スキ』マガジン③

    『スキ』です。ともう一度伝えたくなる記事を集めさせていただきました。クスっと笑えるものや、熱いメッセージを感じた記事、などなど。私の心に残った素敵な記事をご紹介させていただきます。

  • 青豆の自己満足

    自作のショートショート・短編小説の中で、気に入っているものを纏めます。 他人の評価は関係なく、自己満足のためにここに集めていきます。

  • 青豆エッセイ

    エッセイを纏めます。

  • おじさんマガジン

    長年の文通相手である「おじさん」に関する記事を纏めます。

記事一覧

固定された記事

エッセイ | 40歳差の私たち。文通30周年メモリアルイヤーはエメラルドグリーンの輝き。

 祝日の朝早く、ゆうパックが届いた。 私にゆうパックを送ってくれる相手で思い当たるのは一人しかいない。おじさんだ。  おじさんというのは、私の長年の文通相手…

青豆ノノ
9日前
170

日記 | セルフプロデュースとだし巻き玉子。

昔働いていた美容室の社長から言われたことを、ふと思い出した。 「セルフプロデュースをしなさい」 「半年間、同じスタイルを貫いて、半年後にガラッと変えなさい」 私…

青豆ノノ
16時間前
92

掌編小説 | 家族

 インターホンのカメラに映らないように顔を隠した。 「だれ?」と姉が訝しむ。 「わたし」とわたし。 「くだらないことやっていないで、上がってらっしゃい」  勝手に上…

青豆ノノ
3日前
116

日記 | 今日の珈琲。

 突然話しかけられ、片方だけイヤホンを外した。今日もその瞬間まで彼女がいることに気が付かなかった。私は基本的に店員の顔は見ない。  私が聞きとれなかった言葉を、…

青豆ノノ
6日前
155

掌編小説 | 未練

 床にころがる男と女。それから、壁に背をつけうずくまる若い女。三人は俺がよく知る人間で、死んでいるわけではなさそうだ。  どうやってここへ来たのだろう。狭い半地…

青豆ノノ
8日前
100

日記 | 美容室が混み始めた結果、麗子像に仕上がった話。

 久々に美容院へ行きました。  10時に予約していて、事前に13時までには帰りたいと伝えていました。 カットとカラーなので2時間、多くても2時間半で仕上がるだろうと、…

青豆ノノ
13日前
112

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅 ~完~

   帰りの特急くろしおの発車時刻は13:26。三段壁を後にした時点でまだ時間には余裕があった。そこで私は、歩いて数分の千畳敷にもう一度立ち寄ろうと思った。  時間に…

青豆ノノ
2週間前
162

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅③

 旅行とはいえいつも通り五時のアラームで目覚めた。  なんだか体が浮腫んでいる。昨夜のラーメンだ。ラーメンは年間通して二、三回しか食べない。体が驚いている。 …

青豆ノノ
2週間前
144

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅 (号外)

旅館の入口ですれ違ったカップルは、何気なく二人で立っているとき、体の片側をぴたりと合わせている。 下駄箱から履物を取る、そんな些細な動作の間でさえ、二人…

100
青豆ノノ
2週間前
108

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅②

特急くろしおに乗ってやってきたのは南紀白浜。ネットで〝日本のビーチリゾート〟だったか、検索をしてたまたま見つけた場所だった。 バスの移動が便利で観光しや…

青豆ノノ
2週間前
150

『見ず知らず』 #新生活20字小説

泣いているあなたを見ながら、音楽を流す。 [完] #新生活20字小説

青豆ノノ
2週間前
100

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る女のひとり旅①

 旅の始まり、早速新幹線の揺れに酔っている。4月某日、新大阪へ向かう新幹線のぞみの指定席は満席だった。 私は窓側に座り、隣には男の人が座った。音を一切立てな…

青豆ノノ
2週間前
149

日記 | やせたガールな日常?

青「やせたガールな日常って言うけど、それってわたしのことかな?」 いやいや。あなたは〝ガール〟じゃないから。 青「・・・・そっか。」 それにあなた。昨日旅先でラ…

青豆ノノ
2週間前
115

掌編小説 | レディー・キラー

 〝花 吹雪〟と書かれた名刺を渡された。綺麗な名前だねと言ったら、左隣に座るその女性は僕から少し体を離して、嘘でしょ?、と笑った。 「うそじゃないよ。なんで?」 …

青豆ノノ
2週間前
124

『もしかして』 #新生活20字小説

息子のクラス名簿に、元彼と同じ苗字の子。 [完] #新生活20字小説

青豆ノノ
3週間前
109

『ようきたね』 #新生活20字小説

今日は梅干しと粥。 少しずつ。 またおいで。 [完] #新生活20字小説

青豆ノノ
3週間前
88
エッセイ | 40歳差の私たち。文通30周年メモリアルイヤーはエメラルドグリーンの輝き。

エッセイ | 40歳差の私たち。文通30周年メモリアルイヤーはエメラルドグリーンの輝き。

 祝日の朝早く、ゆうパックが届いた。
私にゆうパックを送ってくれる相手で思い当たるのは一人しかいない。おじさんだ。

 おじさんというのは、私の長年の文通相手のことで、昭和19年(1944年)生まれの八十歳である。

 おじさんとは、私が一歳の頃に出会った。

おじさんは当時私が住んでいた家の、真向かいにある古いアパートの一階に夫婦で住んでいた。
その頃から、家の前で会えば

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日記 | セルフプロデュースとだし巻き玉子。

日記 | セルフプロデュースとだし巻き玉子。

昔働いていた美容室の社長から言われたことを、ふと思い出した。

「セルフプロデュースをしなさい」

「半年間、同じスタイルを貫いて、半年後にガラッと変えなさい」

私にこう助言した社長本人は、確かにある一定期間、オールバックを貫いたり、ハットを被り続けたりしていた。

社長の顧客の多くは、半年間で3回ご来店くださる方々だったので、3回同じ格好の社長を見て、4回目でガラッと雰囲気が変わっていると喜ん

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掌編小説 | 家族

掌編小説 | 家族

 インターホンのカメラに映らないように顔を隠した。
「だれ?」と姉が訝しむ。
「わたし」とわたし。
「くだらないことやっていないで、上がってらっしゃい」
 勝手に上がれないからインターホンを押したんじゃないか、とつぶやきながらエントランスのドアを通過した。
 姉が住むのはマンションの三階フロアだ。廊下を歩きながら、ひとつひとつ、家の表札を読む。
「しばた…かなもり…にしだ…キム…さかもと……」
 

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日記 | 今日の珈琲。

日記 | 今日の珈琲。

 突然話しかけられ、片方だけイヤホンを外した。今日もその瞬間まで彼女がいることに気が付かなかった。私は基本的に店員の顔は見ない。

 私が聞きとれなかった言葉を、店員の彼女は笑顔で繰り返した。

女「今日の珈琲、美味しかったですか?」
青「あ、はい。美味しかったです……(?)」

女「その珈琲、わたしがいれたんです」
青「あ、そうなんですか。珈琲、いれられるんですね」

女「いれられないと思われて

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掌編小説 | 未練

掌編小説 | 未練

 床にころがる男と女。それから、壁に背をつけうずくまる若い女。三人は俺がよく知る人間で、死んでいるわけではなさそうだ。

 どうやってここへ来たのだろう。狭い半地下の部屋だ。何もない。ただ真四角のこの部屋で、俺が過ごせる時間はわずかだろう。誰に言われたわけではないが、わかるんだ。これは現実ではないからだ。俺にとっての現実など、いまはどこにも存在しない。

「なあ、あんた」
 俺とは対角に位置する場

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日記 | 美容室が混み始めた結果、麗子像に仕上がった話。

日記 | 美容室が混み始めた結果、麗子像に仕上がった話。

 久々に美容院へ行きました。

 10時に予約していて、事前に13時までには帰りたいと伝えていました。
カットとカラーなので2時間、多くても2時間半で仕上がるだろうと、無理のない範囲でお願いしました。担当美容師も「13時ですね、全く問題ないです」と言いました。

 ところが最後のシャンプーを終えると、普段見かけないスタッフが二人がかりで私の髪を乾かし始めました。隣の姉妹店からの助っ人でした。

 

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旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅 ~完~

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅 ~完~

 
 帰りの特急くろしおの発車時刻は13:26。三段壁を後にした時点でまだ時間には余裕があった。そこで私は、歩いて数分の千畳敷にもう一度立ち寄ろうと思った。

 時間には余裕があるといいながら、今にも雨になりそうな空に心が急いて落ち着かない。三段壁洞窟で買った記念写真を手に持ったまま歩き始めてしまった。
 
 記念写真はQRコードからダウンロードもできる。せっかくなので歩きながらデータを取得。その

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旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅③

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅③


 旅行とはいえいつも通り五時のアラームで目覚めた。
 なんだか体が浮腫んでいる。昨夜のラーメンだ。ラーメンは年間通して二、三回しか食べない。体が驚いている。

すぐに大浴場に行って朝風呂で体をほぐす。白浜温泉は少し塩辛い。

***

朝食は食堂でフレンチを出してくれるらしい。朝からフレンチて。朝でも昼でも夜でも、フレンチなんていつ食べたんだろう。たしか誰かの結婚式が最後。フレン

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旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅 (号外)

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅 (号外)


旅館の入口ですれ違ったカップルは、何気なく二人で立っているとき、体の片側をぴたりと合わせている。
下駄箱から履物を取る、そんな些細な動作の間でさえ、二人からは離れたくない意志を感じた。それは私の思い込みかもしれないけど、たぶん当たっている。

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旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅②

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る、女のひとり旅②

特急くろしおに乗ってやってきたのは南紀白浜。ネットで〝日本のビーチリゾート〟だったか、検索をしてたまたま見つけた場所だった。
バスの移動が便利で観光しやすい。小説の主人公、18歳の女子高生が訪れるにはちょうどいいかなと思い、その地を舞台に決めた。そして物語に誘導され、私も初めて訪れている。

主人公はこの旅で、架空の安宿に泊まったけれど、私は彼女の倍以上生きているので、ちょ

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旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る女のひとり旅①

旅行記 | 東京から和歌山。小説の舞台を巡る女のひとり旅①

 旅の始まり、早速新幹線の揺れに酔っている。4月某日、新大阪へ向かう新幹線のぞみの指定席は満席だった。

私は窓側に座り、隣には男の人が座った。音を一切立てない、黒縁メガネにマスクでゲーマーな彼は、右手の親指以外、ほとんど動きがない。静かだという点で、なんとも私好みだ。
有り難い人の隣になったわ、と幸運を噛みしめるついでに豆腐ドーナツを食らい、プラックの缶コーヒーを飲む。時々、窓

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日記 | やせたガールな日常?

日記 | やせたガールな日常?

青「やせたガールな日常って言うけど、それってわたしのことかな?」

いやいや。あなたは〝ガール〟じゃないから。

青「・・・・そっか。」

それにあなた。昨日旅先でラーメン食べた後に足りなくて、宿に戻ってからからあげクンとチーズケーキも食べてたよね?
#青ブラ文学部 #やせたガールの日常

山根さん、よろしくお願いします°・*:.。.☆

掌編小説 | レディー・キラー

掌編小説 | レディー・キラー

 〝花 吹雪〟と書かれた名刺を渡された。綺麗な名前だねと言ったら、左隣に座るその女性は僕から少し体を離して、嘘でしょ?、と笑った。
「うそじゃないよ。なんで?」
「ねえ。これ、読めないの?」
 そう言って、名刺の文字を細い指先でなぞりながら、僕にもう一度読むように促す。
「はな、ふぶ……えっ」
 女性は笑い出した。
「ね、面白いでしょ」
 彼女が体を揺らして笑うので、いい香りがする。カウンターの中

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