ぬっく

ゲームしたり、文章を書いたり。仕事したり、ぐっすり寝たりしたい。Xジェンダー、HSS型…

ぬっく

ゲームしたり、文章を書いたり。仕事したり、ぐっすり寝たりしたい。Xジェンダー、HSS型HSP(おそらく )

記事一覧

マスクを身に着けるようになって

早朝、二回目の目覚ましで起床。 制服に着替えて顔を洗い、スキンケアをして弁当をつめ、ニュースを見ながら朝食を取る。 片付け後、歯を磨いて戸締まりをし、マスクをつ…

ぬっく
1年前
4

ちゃんと丸をくれたい

 未だにどうすればいいのか悩む事がある。  会員登録やアンケートで求められる男か女か問題である。名前と住所、電話番号は分かる。クレジットカードなんか個人情報が必…

ぬっく
2年前
2

髪が伸びると必ず右前髪がうねる

 物心ついてから髪を長く伸ばした記憶がありません。  幼少期は祖母に髪を二つにくくってもらっていたようですが、小学校低学年からスポーツを始めたため母お手製で短く…

ぬっく
2年前
7

朝ラーのある未来

 新生活への緊張がほぐれ、新しいクラスの雰囲気に馴染み始めた四月下旬、茶農家の朝は早い。学校に向かう四時間も前に起こされて、ヨレヨレの麦わら帽子と青臭さが染み付…

ぬっく
2年前
3

たまには、自己中心的に生きてみる

 高校生の時、初めて『お付き合い』というものをしました。私は女子バレーボール部に所属していて、彼は男子バレーボール部で、隣のコートで毎日顔を合わせていました。 …

ぬっく
3年前
14

夏休みの課題とシンデレラ

 夏の暑さに溶ける。熱されたアスファルトに垂れて地面に染みて、地下水源まで下っていったなら少しはましかもしれない。  折角の長期休みだというのに、暑さは日増しで…

ぬっく
3年前
3

春、穏やかな日に

爽やかな風が、俯く私の顔を上げた。 見渡す限りの快晴。この暖かな陽気は、今日一日一切曇ることなく色めく学生を祝福し続けるだろう。卒業証書を片手に泣き笑い、群れを…

ぬっく
3年前
3

私が私を、私として

私は自分が『あまり好きではありません』。 なぜならば、性格も見た目も理想とは程遠いからです。 人と話すのが苦手で、内にこもってばかりだからです。 理由を上げれば…

ぬっく
3年前
1

楽しくなれたなら

我が家では幼少の頃から、朝からしっかりとした食事をとることが絶対でした。 朝はコーヒーだけ、寝坊したから食べないなどという考えは許されず、量の多い料理が毎日用意…

ぬっく
3年前

すがたかたち

鏡に写った自分の体つきや下着姿を見ることが苦な時期がありました。出来るだけ目に入らないように、過ごしていたように思います。それは年々存在を主張してくる下っ腹や短…

ぬっく
3年前
2

私的解釈ことわざ小話②鬼に金棒

ここからずっと南にいくとひとつの島がある。土地は枯れ、空はどんよりと暗い。近海は常に荒れ、世界より隔絶された島だ。風は一年中冷たく、生きるものの命を削る。食料を…

ぬっく
3年前

私的解釈ことわざ小話①井の中の蛙

誰もが井の中の蛙で、遠い未来を仰いでいる。生まれた時はその空さえも認識できず、狭い世界で生きていることにすら気づかない。 その蛙は、古びた井戸の底に溜まった泥水…

ぬっく
4年前
3

君と夏が鉄塔の上―読書感想文

今年も蝉の声と共に暑さがやってきた中学最後の夏。 長期休み真っ只中、ぐうたら過ごしていた伊達成実が、久しぶりの登校日に帆月蒼唯に話し掛けられ物語は始まる。 教…

ぬっく
4年前
6

マスクを身に着けるようになって

早朝、二回目の目覚ましで起床。

制服に着替えて顔を洗い、スキンケアをして弁当をつめ、ニュースを見ながら朝食を取る。
片付け後、歯を磨いて戸締まりをし、マスクをつけて出勤する。

上着や帽子を着るように、マスクを最後に身に着けてから家を出るようになって三年。
今やマスクは、生活の流れの一部になっていて、日常に違和感なく馴染んでいる。

ストックは切れないように気にしてその都度買い足して、ドラックス

もっとみる
ちゃんと丸をくれたい

ちゃんと丸をくれたい

 未だにどうすればいいのか悩む事がある。

 会員登録やアンケートで求められる男か女か問題である。名前と住所、電話番号は分かる。クレジットカードなんか個人情報が必要不可欠だ。

 ただ、解せない。必須と書かれた赤い文字を掲げて、男と女を選ばせることに。それは本当に必須なのだろうか。

 腹が立ったことがあった。けれど、次第にもう少し選択肢をくれてもいいんじゃないかと思うようになった。

 アンケー

もっとみる
髪が伸びると必ず右前髪がうねる

髪が伸びると必ず右前髪がうねる

 物心ついてから髪を長く伸ばした記憶がありません。

 幼少期は祖母に髪を二つにくくってもらっていたようですが、小学校低学年からスポーツを始めたため母お手製で短く切られ、赤いランドセルを背負っていても男の子と間違えられるほどの仕上がりでした。

 高校生の時、サラサラロングヘアーに憧れて伸ばしてはみたものの、肩から跳ねる髪を束ねるのが面倒になって、結局短く切ってしまいました。

 大学に通っていた

もっとみる

朝ラーのある未来

 新生活への緊張がほぐれ、新しいクラスの雰囲気に馴染み始めた四月下旬、茶農家の朝は早い。学校に向かう四時間も前に起こされて、ヨレヨレの麦わら帽子と青臭さが染み付いた軍手を手渡され、外に引っ張られる。

「おはよう」

 外で待ちかまえていた父ちゃんの挨拶を合図に、玄関先で立ち止まり、母ちゃんと爺ちゃんと、大人三人で深呼吸する。早く起きた朝、余裕をもち効率的に作業するのが、我が家の教訓だった。

 

もっとみる
たまには、自己中心的に生きてみる

たまには、自己中心的に生きてみる

 高校生の時、初めて『お付き合い』というものをしました。私は女子バレーボール部に所属していて、彼は男子バレーボール部で、隣のコートで毎日顔を合わせていました。

 はじめは男子バレー部の他の同級生が格好いいなあと思っていたのですが、彼が私に好意があるという噂を耳にして、分かりやすく意識し始めたのを覚えています。

 バレーボールをしているくらいですから、彼は背が高くシュッとしていて、誰もが羨むモデ

もっとみる

夏休みの課題とシンデレラ

 夏の暑さに溶ける。熱されたアスファルトに垂れて地面に染みて、地下水源まで下っていったなら少しはましかもしれない。

 折角の長期休みだというのに、暑さは日増しで襲ってくる。

 ニキビを隠すファンデーションもお手上げ状態。日焼け止めを忘れたなら次の日悲惨だし、汗の染みが目立つ服は一日中憂鬱。

 気合を入れて駅前に集合しても、結局空調の効いた部屋で籠もることになる。一日中涼んで暑さを忘れる。それ

もっとみる

春、穏やかな日に

爽やかな風が、俯く私の顔を上げた。
見渡す限りの快晴。この暖かな陽気は、今日一日一切曇ることなく色めく学生を祝福し続けるだろう。卒業証書を片手に泣き笑い、群れをなし空を飛ぶ鳥でさえ声高らかに楽しげだ。

はらはらと白い粒が舞っている。昨年に次ぐ暖冬で、入学式に満開をむかえるはずの桜が、学生を送り出すようにと早くも散りだしていた。花化粧した沿道をゆっくりと歩く。
この日を迎えられたという安堵が、ここ

もっとみる

私が私を、私として

私は自分が『あまり好きではありません』。

なぜならば、性格も見た目も理想とは程遠いからです。
人と話すのが苦手で、内にこもってばかりだからです。

理由を上げれば切りがありませんが、ここまででしたら、数多くの共感をよせられるかもしれません。

しかし、私はあまりに卑屈で、ネガティブの上、内弁慶です。自分を皮肉る言葉を沢山持っています。最大の欠点は、何かにつけて否定するところでしょうか。

幼い頃

もっとみる

楽しくなれたなら

我が家では幼少の頃から、朝からしっかりとした食事をとることが絶対でした。

朝はコーヒーだけ、寝坊したから食べないなどという考えは許されず、量の多い料理が毎日用意されるのです。
もちろん、お残し厳禁です。

今となれば、それは母の食に対する並々ならぬ思いからであると分かりますが、体重を気にし始めた思春期には迷惑極まりなかったです。幾度となく悪態をついてしまったのは、私にとっても母にとっても苦い思い

もっとみる

すがたかたち

鏡に写った自分の体つきや下着姿を見ることが苦な時期がありました。出来るだけ目に入らないように、過ごしていたように思います。それは年々存在を主張してくる下っ腹や短い足のせいだけではありません。

私は自分の性別に疑問があったのです。

明確に自認したのはだいぶ歳をとってからでしたが、片鱗はそこかしこにありました。
制服を着たくなかったり、長髪の自分を気持ち悪いと感じたり。下着などというものは、女性の

もっとみる

私的解釈ことわざ小話②鬼に金棒

ここからずっと南にいくとひとつの島がある。土地は枯れ、空はどんよりと暗い。近海は常に荒れ、世界より隔絶された島だ。風は一年中冷たく、生きるものの命を削る。食料をかき集め暖を取り、やっとこさ生きられる環境だったとしても、一週間ともたないだろう。なぜなら、その島には鬼が住んでいるからだ。島の至るところでそれらは徘徊し、血走った赤黒い目で獲物を探している。何十といる鬼に見つかったなら最後、無惨な死に様に

もっとみる

私的解釈ことわざ小話①井の中の蛙

誰もが井の中の蛙で、遠い未来を仰いでいる。生まれた時はその空さえも認識できず、狭い世界で生きていることにすら気づかない。

その蛙は、古びた井戸の底に溜まった泥水の中で生まれた。何故こんなへんぴな場所で生まれたのか。母親蛙の姿がない今、その理由を知ることはできない。
卵から孵った蛙の周りには、自分と同じ形の生き物がたくさんいた。あっちにもこっちにも数えられないほどたくさんいて、皆目を真ん丸くして互

もっとみる

君と夏が鉄塔の上―読書感想文

今年も蝉の声と共に暑さがやってきた中学最後の夏。

長期休み真っ只中、ぐうたら過ごしていた伊達成実が、久しぶりの登校日に帆月蒼唯に話し掛けられ物語は始まる。

教室の隅で波風たてずにひっそりと生きてきた伊達は、クラスの中心からはほど遠い位置で周りの動向を気にしつつも、その輪の中に入ることなかった。机に顔をうつぶせ聞こえた事は、画面越しに眺める遠い国の話に等しく、少しの好奇心を抱くことがあっても

もっとみる