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#エッセイ

雪と賢者の石

雪と賢者の石

昨日から降り始めた雪が朝見ると5cmくらい積もっていた。

関東の私の住むところはほぼ雪が降らない。積もるほどのレベルはまあ年1回くらいなので、ほんの5cmの積雪でも誕生日くらいの特別感を感じる。朝から寝ているこどもたちに「今日は雪が積もってるよ」と声を掛けると、いつもはなかなか起きないのにすぐに目を覚まし、窓の外をじっと眺めてわぁ~と言っていた。心のしっぽがブンブンと動いておる。

白い世界を長

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『人見知りの根暗が性格を変えるためにキャバ嬢になってみた話』

『人見知りの根暗が性格を変えるためにキャバ嬢になってみた話』

水商売。
はてさて、私のような人見知りの根暗にはとんと縁のない商売である。

知らない人と楽しげに会話をし、ありとあらゆる物事に気を遣い、視線と心を配り歩く。

水商売といえば未だに偏見に苛まれる職業の筆頭であり、事実「男に媚び売ってお金貰えるんだから楽でいいよねぇ」と口さがない人間に面と向かって言われたこともあるが。

ならば1度やってみると良い。
これがまあ、楽なことなんてひとつもない。
ほん

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藍を待つ。

藍を待つ。

人に習う、という機会は、歳を重ねるうち、減っているように思う。けれども、世の中まだまだ知らないことばかりなのだから、習うことは歓びだ。

「下絵付け」をさせていただいた。

普段、私のしている仕事は「上絵付け」というもので、釉薬で焼成の済んだ陶磁器の生地に、転写や絵の具で絵付けをしていくもの。
業務用洋食器などが大半で、飲食店やホテルのカップやプレートに転写を貼り、1日に150~200枚という地道

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エッセイ講座で人生を語る。

エッセイ講座で人生を語る。

なんやかんや、
1年以上noteの毎日投稿を続けている。

毎日だ。疲れたわ。

やめない。

絶対やめない。

読んでくれてる方がいるから、やめない。

いつのまにか、札幌市民向けにエッセイ講座の講師をやるようになった。エッセイや文章なんて、教えられる立場にないのにね。

……

今日は、札幌市民向けにおこなった全5回のエッセイ講座のうち、最終回でお話ししたことの一部を切り抜いて書いてみたい。

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モノノタトエ。

モノノタトエ。

と、なると。
半分にも到達していないのだ、私は。

あまり器用な生き方をしてこなかった。
例えば、「すんなり」と言えるような10代ではなかったし、かといって「荒れた」10代でもなかった、と思う、けれど。

何かしら思い悩むことが多く、躓きがちで、悲観的で、そうたとえば、「スイカ割り」のような。聴こえる声や情報を半信半疑に、あやふやな自信で、唐突に棒を振り下ろし、的はずれな地面を堂々と叩いては、腕を

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仕事を呼ぶ「手」。

仕事を呼ぶ「手」。

私の母の「手」は、大きい。
それはそれは大きい。
やなせたかし氏のアンパンマンに出てくる、クリームパンダちゃん に似て。
ムクっと大きい。

その昔、かの有名なピアニストのフジコヘミングさんが演奏するのをテレビで観て、
「みて!お母さんと一緒の手や!」
と母がやたら興奮していたのを覚えている。
確かに、フジコヘミングさんの手は、大きく力強い手だった。おおよそ、ピアニストなイメージの、指の長い細い綺

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タモリに憧れちゃう理由。

タモリに憧れちゃう理由。

タモリに憧れる時期があった。

タモリは福岡から上京して早稲田大学に入るも、ジャズに傾倒した結果、学費未納で除籍。

福岡に帰り、地元でボウリング場の支配人になって、生命保険外交員になって。かと思ったら福岡の喫茶店の名物マスターになって。

タモリが喫茶店のマスターをやっていたころのエピソードでお気に入りのものがある。ウインナーコーヒーのお話だ。

お客さんからウインナーコーヒーを注文された店主は

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そんなでも夫婦。

そんなでも夫婦。

私と夫は、結婚して20年になる。
たぶん、私たち夫婦は「変わっている」。

結婚して最初のころは、きっと「理想の夫婦」を目指していた。ゆえに、とても喧嘩が多かった。やれ、「帰りが遅い」だの「家事をしてくれない」だの「話を聞いてない」だの。今思うと、とてつもなく窮屈な日々だった。

あまりに喧嘩が多く、その度にいろいろと話し合った結果。

私は「普通のことが当たり前に出来ない」し、夫は「何もそんなこ

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4月・ピンクを着たい春の夜

4月・ピンクを着たい春の夜

シャツを買った。

白地にパキッとした濃いピンク色のストライプ柄。
メンズサイズ、やや大きめのサイズ感のもの。
ボタンダウンで、羽織りとして着てもボタンを上まできっちりしめても良い。
古着のラルフローレン。
その存在感に一目惚れした。

はー、眺めるだけでしあわせ。
そんな一着である。

「季節感」が大好物だ。

春はやっぱり明るい色や淡い色を選びたくなる。
その中でも桜に象徴されるピンクはまさに

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ゲームが下手で。

ゲームが下手で。

スーパーマリオは、得意ですか?

ファミコンが流行ったのは、私が小学生時代。ブラウン管のテレビに、有線でガチャコンとカセットをぶっ刺すファミコン。

私は、ゲームが下手くそだ。

私の操るマリオは、
「テテテッテッテテッテン」と軽快に1-1が始まったとたん、クリボーに勢いよく突っ込んでいく。ジャンプのタイミングがおそい。
おっきくなっても、すぐちっちゃくなる。
タイミングよくジャンプができないゆえ

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グレーだったけど意外と落ち着いてきた息子の成長記【1】

グレーだったけど意外と落ち着いてきた息子の成長記【1】

ウチの息子(小5)は、育てにくい子でした。

初めての子だったのでよくわからないまま育てていましたが、4年後に娘が産まれて、あまりの育てやすさに衝撃!

「あ、彦太郎(息子)は病気だったんだわ」

と、改めて認識しました。

結局、きちんと診察も受けなかったし、はっきり診断されたわけではないのですが、息子はおそらく発達障害のグレー領域だったんじゃないかな…?と思います。

療育センターは、初診の予

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『あの店は私のオアシス』

『あの店は私のオアシス』

私が前職で働いていたころ。
ズタボロに心を壊す、ほんの少し前の話だ。

別店舗への異動が決まった。
それは昇進してまもなくのこと。
私は入社時から「異動はしない」と公言してはばからなかったし、面接のときも、そこだけは社長に念を押していた。

だが、そんな口約束はなし崩し的に”なかったコト”にされて、”ならば明日から職を失うか?”と直接的に脅しをかけられれば「嫌」とは言えない。

仕方なかった。

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わたしはわたし。

わたしはわたし。

常に新しい自分でありたいと考えている。

毎月、毎年と区切りのいいタイミングで、何かしらのプチ目標をたてる。
Twitterの皆さんみたく「今月はフォロワー1,000人達成!」とかそういう素晴らしい目標ではなくて。ええ悪意あります。

わたし、目標っちゅうのはなんとな~く決めたほうが達成できる気がしていて。
6割くらいの力をふにゃ~んと出していればいいんだ。

今月はこれをこう!今年はこれをこうし

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ちっぽけでアホな自分に会いに行く

ちっぽけでアホな自分に会いに行く

「よくわからないものがこわい」と以前書いた。海洋についての知識がないから海の写真がこわいとか、高層ビルの構造がよくわかっていないから高所を避けてしまうとか、そんな話。

でも、と、ふと思う。

私は、自分の理解を超えた言説や事象に囲まれて育ったはずだ。

幼い頃から、私は祖父が大好きだった。元警察官だった祖父は、明治生まれにもかかわらず身長が175cmほどある、背筋もぴんと伸びた偉丈夫で、司馬遼太

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