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哲学・心・思想

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記事一覧

「資本主義的な承認」と「全人格的な承認」の考察

「資本主義的な承認」と「全人格的な承認」の考察

前回、資本主義社会におけるコミュニケーションは、「資本主義的な承認」しか与えず、かつて存在したであろう「全人格的な承認」がなくなっていることを述べた。

今回は、「資本主義的な承認」と「全人格的な承認」の本質を考察してみたい。

そもそも「承認」とはなにか?

それは、私は価値があるということを他者が認めること、と定義したい。

仕事でよい成果を出したから、上司が褒めたり、接し方がよくなったり、な

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教育におけるAIの限界(人の「目」の欠落)

教育におけるAIの限界(人の「目」の欠落)

教育とAIについて、最近よく考えており、noteにもいくつか記事を書いた。

ある学習者が学ぶ場合、

その「成果」は、「学習プラン(調整を含む)」×「実行量」で表すことができる。

学習者の現在のレベル、目標、学習ペースなどを考慮して最適な「学習プラン」を作り、定期的に調整していく、という作業は、着々とAIで代替されていくだろう。(代替されるだけでなく、精度も高まる。必要な変数をもれなくとり、多

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”普遍志向”の西洋、”物語志向”の中国

”普遍志向”の西洋、”物語志向”の中国

中国と西洋の考えが相容れないのは、その思考の底板が何か?ということに由来するのではないか。

中国の場合、孔子や四書五経など中国哲学と言われるものがほどんど物語である。つまり、人や世界の存在をベースにその中で筋立てされた物語である。

物語の良さは、「理解しやすい」ということに尽きる。

一方で、悪いところは、多数の人々に間で共通了解を作りづらいというのがある。(なぜその物語が正しいの?と言われた

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実存勝負とコスパ糞野郎

実存勝負とコスパ糞野郎

社会学者の宮台真司さんが、昔の朝ナマは「実存勝負」で見る価値あったが、今の朝ナマは「いかに賢くみられるかの勝負」になっていて一秒も見る気がしない、と言っていた。

グローバル資本主義が浸透した現代、

如何に賢そくみえるかに生きているかの争いになっている。

いかに少ない労力で、大きな成果を得るか、で評価される。

そして、その「成果」とは往々にして売上や利益である。より個人の生について言えば、年

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「好きなことで、生きていく」のではなく「嫌いなことで死なない」 #年収90万円で東京ハッピーライフ

「好きなことで、生きていく」のではなく「嫌いなことで死なない」 #年収90万円で東京ハッピーライフ

大原扁理さんの『年収90万円で東京ハッピーライフ』を読んだ。

この本、自分がここ数年読んだ中で一番おもしろかったかもしれない。

森永卓郎さんの『年収300万円時代を生き抜く経済学』(2005年)が話題になってから早くも16年が経つ。

そして、2012年には、イケハヤが『年収150万円で僕らは自由に生きていく』を出版。

そして2016年に、本書、「年収90万」とどんどん年収が下がってきている

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仕事における「構想」と「実行」の統一 #人新世の「資本論」

仕事における「構想」と「実行」の統一 #人新世の「資本論」

斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』 からの引用。

**引用開始

アメリカのマルクス主義者ハリー・ブレイヴァマンの言葉を借りれば、社会全体が資本に包摂された結果、「構想」と「実行」の統一が解体されてしまったのである。

どういうことか、簡単に説明しておこう。本来、人間の労働においては、「構想」と「実行」が統一されている。例えば、職人は頭のなかで椅子を作ろうと構想し、それをノミやカンナを使って実

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努力は相手の研究から

努力は相手の研究から

人は自分の欲望を基に対象を認識している。これを看破したのはニーチェである。欲望とは、自分が生まれてから形成してきた価値観と世界観を基に発展していく。

誰かを動かしたいなら、また、誰かに何か伝えたいことがあるなら、それをただ主張するだけではうまくいかない。

まずはその人の世界、つまり欲望に関心をもってもらわなければならない。

大きなことを成し遂げたいなら、いや小さなことでもそうだ。

相手に合

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「境遇の被害者」という視点〜「意思」と「責任」の再考〜 #ゲンロン #シラス

「境遇の被害者」という視点〜「意思」と「責任」の再考〜 #ゲンロン #シラス

ゲンロンが主催するシラスという意識高めの動画プラットフォームで、國分功一郎×東浩紀「哲学にとって愚かさとはなにか――原子力と中動態をめぐって」という動画を視聴した。

ゲンロンの動画は6時間くらいがデフォルトになっているので、めちゃくちゃ長いが、BGM的にゆるく観ているとけっこういける。

ここで、國分さんがとても興味深いことを言っていた。

刑務所の受刑者たちは、自分の罪を咎められても釈然としな

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内心にひそむ確信を語れば、それは普遍に通ずる by エマソン

内心にひそむ確信を語れば、それは普遍に通ずる by エマソン

これはアメリカの哲学者エマソンが『自己信頼』というエッセイで述べたものである。

私は今後の世の中でこの考え方が重要になってくると思う。

もう、顕在化された課題という視点では、どんどんビジネスや団体が立ち上がりその解決を図る。

今は世界中の誰もが主役になれる時代だ。

その心は?というと、

誰もが自分の抱えている課題を深く考察し、それを社会に共有することで、主役になれる、

ということ。

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「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?」への決定的な答え〜AIに「存在」という語をどのように学ばせることができるか〜

「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?」への決定的な答え〜AIに「存在」という語をどのように学ばせることができるか〜

私はこの問いに興味をもって哲学をやったといっても過言ではない。

先日、これについての議論を聞く機会があったが、どれも正直全く前に進まないような答えばかりであった。(何かしらの領域では意義あることだったと思うが、この問いへの回答としてはダメだった)

まず、考え方のルールを決めなくてはならない。

私は、これを哲学の現象学のアプローチで考えれば完全解決とは言わないまでも、かなり視界がクリアになると

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作りたいものがない人はつまらない、という話

私はよく誰かの就職や転職の相談に乗るときに、次のように聞く。

仕事をするなら次のように沢山の観点があるが、

あなたにとって、

どの観点が重要なのか?

・プロダクト(その組織(会社)が作っている)

・年収

・肩書

・勤務地

・人事制度

・働いている人々(同僚、上司、経営者など)

・業界の伸び率

・勤務時間

・ストレス度合い

などなど。

こういういろいろな観点の中で、あなた

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よい創作の方法〜「自分が本当に作りたいもの」と「ニーズに応える」の境界線 #村上隆 #紀里谷和明

よい創作の方法〜「自分が本当に作りたいもの」と「ニーズに応える」の境界線 #村上隆 #紀里谷和明

絵、小説、映画のような芸術作品を創作するには、自分がこれだと思うものを突き詰めて試行錯誤して完成させる、というような漠然としたイメージがある。

でも、多くの人は自分の中にそんな芸術の基になるようなものはない、とか、試行錯誤の方法がわからない、とか、死ぬほど作りたいものなんてない、といった考えに至るのではないか。

村上隆さんと紀里谷和明さんという芸術家が、その創作方法について対照的なことを述べて

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多くの人が自分と世界を深く理解できるようになるために #ハンナ・アーレント #教養

多くの人が自分と世界を深く理解できるようになるために #ハンナ・アーレント #教養

私は大学生の頃から、何か今までにない面白いプロダクトを作りたいとずっと考えてきて、今でもそれは変わらない。プロダクトとは、別に形あるものでなくても、サービスでもいいし、ある個人に体験を与えるもの全てが含まれる。

現時点で、語学コーチングサービスを提供しているのは、個人の体験として最も価値あるものが語学力が確実に伸びることだと考えているからだ。世の中には時価総額何兆円とか、ブロックチェーンとかいろ

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自分の価値観を持てというが、その最終根拠なんてあるのか?

自分の価値観を持てというが、その最終根拠なんてあるのか?

よく、他人に惑わされないで自分の価値基準で行動しなさい、などというアドバイスを耳にする。

私は、自分の価値基準で生きてきたほうの人間なのだが、それでもやはり、自分の価値基準って何?と思うことがある。

他人のマネばかりしたり、他人の意見に左右されまくってしまう人からすると自分の価値基準なんんてわからないだろう。

例えば、「人に親切にすべき」というのは良いといえるが、なぜ「良い」か言えるだろうか

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