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かったぱしから読書生活

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大学卒業以来、ずっと出版業界。本が好きで、ずっとこの世界で暮らしている。読書はフィクション派。ファンタジー好きなれど、時代物、ミステリー、純文学、何でも来いで、ひたすら濫読。読書… もっと読む
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2024年2月の記事一覧

趙将「李牧」の魅力

趙将「李牧」の魅力

原泰久「キングダム71」。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0CQY63QYN/
 宜安の戦いで、六大将の桓騎を喪った秦軍。捲土重来を期して、王翦将軍を総大将として、趙北部に25万の大軍で攻め込む。副将軍は山の民を率いる楊端和。李信(飛信)も左翼で3万を率いる要となった、対する趙軍は決死の覚悟で30万で迎え討つ。戦場は宜安かと思われてい

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「復刊ドットコム奮戦記」が復刊ドットコムから電子復刻

「復刊ドットコム奮戦記」が復刊ドットコムから電子復刻

拙著「復刊ドットコム奮戦記」が復刊ドットコムから電子復刻するそうだ。既に電子出版契約書に調印済み。配信予定は3月とのこと。もともとは築地書館で刊行して頂いていたが、電子版は本家本元の復刊ドットコムで配信してもらえることになった。
 尚、復刊ドットコムはオープン25周年を迎えたので、記念ブログ「復刊ドットコム25年間の歩み〜温め、繋いだ、本のバトン」を公開している。自分もライターから取材を受けており

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八木書店の力と新たな役割

八木書店の力と新たな役割

7年前に「大相撲錦絵」を刊行した。相撲博物館所蔵の相撲錦絵を高解像度にデジタルアーカイブして、その中から時代を代表する錦絵を、相撲博物館の学芸員の解説で一冊ものの豪華画集とした。銀座蔦屋書店のオリジナル商品として刊行した。インバウンドを意識したので、解説には英訳も付けた。値段を下げるため、徳間書店でも在庫を持って販売することになった。内容はともかく、なにしろ本体価格185千円の豪華本だったので、売

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雑誌「イコール」の創刊

雑誌「イコール」の創刊

橘川幸夫氏が始めた雑誌「イコール」。ただ厳密に言えば雑誌コードがなく、ISBNが掲載されている書籍。ロッキンオンを渋谷陽一氏たちと立ち上げた橘川幸夫氏。「齢74歳にして立つ」である。表紙イラストは、球体関節人形を想起させる幻想的なイメージ。内容は濃くギッシリ。執筆陣には、自分たちが高校時代からリスペクトしていた岩谷宏氏もいる。まだご存命で「イコール」にも「ザ・ポップ宣言」として「MILE」を投稿さ

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NHK 「韓流スター・チャン・ドンゴンと行く世界’夢の本屋’紀行」は、本の可能性を再発見できる番組

NHK 「韓流スター・チャン・ドンゴンと行く世界’夢の本屋’紀行」は、本の可能性を再発見できる番組

NHK 「韓流スター・チャン・ドンゴンと行く世界’夢の本屋’紀行」は、素敵な番組だった。
https://www.nhk.jp/p/ts/V8JK8RKK2Q/
 韓流のイケメン俳優であるチャン・ドンゴンが世界の美しい書店、ユニークな書店を巡る番組。一言で「書店」と言っても、いろいろある。日本で「書店」と言えば新刊の雑誌・書籍を売るお店。しかし海外では雑誌と書籍の販路は分かれていて、雑誌は街のスタ

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石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』

石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』

石井暁『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B07J4L83HX/
 堺雅人が主演で大人気だった番組「VIVANT」で取り扱われたことで、6年前の本が一気にブレイクした(こういうところが出版という事業の面白いところ)。「別班」とは、自衛隊内の非合法組織で、米軍と情報を共有するスパイ組織として発

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新築トーハンを再訪

新築トーハンを再訪

7年半ぶりにトーハンを訪問。業界では「ごけんちょう」と呼ばれている。それは住所が東五軒町だから。前回から建て替えた新ビル。ピッカピカの社屋だった。1階ロビーには絵画や新規事業の展示。入場には事前にQRコードの発行が必要。以前の取次なんて、セキュリティもヘッタクレもなく、事務所には出版社、印刷屋、保険のおばちゃんなどが自由にたむろしていた。まさに隔世の感がある。新ビルのエレベーター前には、旧ビルの外

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梓林太郎「人情刑事・道原伝吉 松本−日本平殺人連鎖」(徳間文庫)

梓林太郎「人情刑事・道原伝吉 松本−日本平殺人連鎖」(徳間文庫)

梓林太郎「人情刑事・道原伝吉 松本−日本平殺人連鎖」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CV3YBTJF/
 松本市内で上条貞彦夫妻の自宅が火事で全焼した。松本署では放火の疑いを持ったが、老夫婦には怨恨の心当たりはない。静岡市清水に住んでいる認知症らしき味川星之介が松本旅行に来ていて周辺を徘徊。行動時刻と出火時間帯の一致から犯行を疑われる

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鈴木涼美「YUKARI」

鈴木涼美「YUKARI」

鈴木涼美「YUKARI」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHDN138/
 全編7章が手紙で構成されている。こんな文体は、太宰治「駆込み訴へ」以来である。歌舞伎町でホステスを務めていた30歳の女性が、結婚に先立って、かつて浮き名を流した男の数々に出した書簡。マリッジブルーの衝動が、筆を走らせる。学校の先生、親の大きな病院を継いだ医者

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伊岡瞬「水脈」(徳間文庫)

伊岡瞬「水脈」(徳間文庫)

伊岡瞬「水脈」(徳間書店)。電子書籍はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTK5GVYG/
 小学校の夏休み研究で、神田川を散策中の母娘が、排水口から人間の脚が突き出しているのを発見。杉並区の和泉署に合同捜査本部が立ち、高円寺北署の宮下真人巡査部長は本庁一課の真壁修巡査部長とペアで遊軍部隊として参加することになった。しかも雲の上の人である高橋宏一郎審議官の姪であ

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秋山香乃「無間繚乱」

秋山香乃「無間繚乱」

秋山香乃「無間繚乱」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHDF516/
 平安貴族の歴史物語は、戦さのない、社交の駆け引きということで、これまで食指が動かなかった。そもそも登場人物を知っているようで、よく知らない(大河ドラマ「光る君へ」も)。しかし読み進むうちに、ヒロイン2人の想いの深さに圧倒された。藤原道隆の娘である皇后・定子と、藤

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武尊「ユメノチカラ」

武尊「ユメノチカラ」

武尊「ユメノチカラ」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CT5741M4/
 読んでいて、これが格闘家の本だとはとても思えなかった。小さな身体、弱った心。いつも自信が持てなくて、明日の自分を憂う。これがK-1チャンピオンの実像なのか。格闘家の本と言えば「俺は強いぞ」「努力で世界一」という自慢話かと思っていた。しかし武尊は違う。弱かった自分

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ケン・ジョセフ「隠された十字架の国・日本」

ケン・ジョセフ「隠された十字架の国・日本」

ケン・ジョセフ「隠された十字架の国・日本」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTK3DTB8/r
 クリスチャンである自分には非常に興味深い本であった。景教研究所を創設したケン・ジョセフ親子が2,000年に書いた名著の新装版である。この本には二つの骨子がある。一つは東方基督教と景教について。ローマカトリックやプロテスタントしか知られてい

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岡元大「まちかどガードパイプ図鑑」

岡元大「まちかどガードパイプ図鑑」

岡元大「まちかどガードパイプ図鑑」(創元社)。購入はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/4422241117/
 面白いところに眼をつけたものだ。道路に設置されたパイプ柵。「ブラタモリ」などでマンホールはよく取り上げられるが、「ガードパイプ」本は初めて見た。ものごとは極めれば価値が出る。初版カバーには「Amazonランキング1位」と目立つマーク。『えっ❗️』と思って、

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