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ち あ き
2024年3月10日 17:02
菜の花が風に吹かれてゆうらり、ゆうらり、と波を打ちます。一面の黄色。ビタミンイエロー。花盛りを迎え、彩度に満ち満ちた葉の花のパノラマが目の前に広がっています。黄色い海のように広大な光景も、そのひとつひとつをよく見るとそれは小さな花たちの集合体。すっくと伸びた茎先が枝分かれしてそこにいくつもの十字状の花をほころばせています。今日は、近隣の町で開かれた菜の花まつりにや
2022年10月29日 09:15
喫茶店の窓から午後の街並みをながめていたときです。交差点をゆく、お洒落上手なひとを見かけました。白いシャツに重ねているのは、エメラルドグリーンのたっぷりしたセーター。シャツの襟元にはネイビーと緑と白のチェック柄スカーフが、ちょうどセーラー服の三角タイのように結んであります。バッグは黒のショルダー。ボトムは濃いデニムの長いタイトスカート。真っ白の靴下と黒く艷めくバレエ
2022年10月19日 17:08
ひんやりする朝。ちょっと、あたたかくなれるものを食べたい、そんな朝です。キッチンに立って思い付いたのは子供のころ、日曜日に父がよく作ってくれた朝ごはんでした。作りやすいふたり分の分量を、ここに書いてみます。炊きたてのごはんに鰹のふりかけをさっくり混ぜ込んでお椀に二膳、よそっておきます。つづいて玉子を2コといて牛乳を大さじ2ほどと、塩を少々。タネを作ります。
2022年9月10日 06:18
まだ残暑の厳しい九月のはじめ。灼けるアスファルトの上を先へ先へと急ぎ歩くなか、信号待ちに足を止めたときのことでした。凛、、凛、、、どこからか、懐かしい、涼やかな音がします。日傘を下ろして、あたりを見廻すと、道沿いの家の軒先に綺麗な風鈴が一鈴、下げられているのが見えました。海月のように丸く下の方だけ少しすぼめた外見は縁に向かって青いグラデーションの入った薄手のガラス
2022年9月1日 21:34
窓を網戸にすると足先へ、僅かにひんやりした空気が流れてきました。つい先日までのハッキリした夏が少しずつ姿を消して秋の気配が滲みはじめた過ごしやすい夜です。リィン、リィンと遠くの暗がりから聞こえる、鈴虫の声。さざ波のような、透明な音が耳当たりよく吹き抜けていきます。思うようにいかないことばかりで心が埋もれそうになる毎日。足元に扇風機のよわい風をあて、ソファの背もたれ
2022年8月24日 07:49
デザートの、無花果とヨーグルトを食べ終えて時刻はまだ午後六時。窓の外はほんのり明るく、そのまま一日を終えてしまうのはちょっと勿体無いような、金曜日の夕方です。本棚の脇の一冊の写真集が目に留まりました。ドイツの美しい港町が表紙のその本は主人のものです。そうだ、海を見にゆくのも楽しそう。新しく越してきたこの街は30分も車に乗れば港へ着きます。かんたんに身支度を整えて
2022年6月7日 08:00
店内に、綺麗なピアノの音色が流れ始めました。中庭に面した大きな窓には午後のまぶしい光を背にして男の人の横顔とグランドピアノのシルエットが浮かんでいます。「ここのお店ね、13時になったらピアノの生演奏が始まるの。その席からだとよく見えるでしょう?ぜひ楽しんでほしいなと思って予約の時、席まで指定させてもらったの。」弘子さんは頬にキュートなえくぼをつくりながらふふふ、と笑
2022年3月12日 18:29
寝ているのか、それとも起きているのか自分でも分からないような曖昧な眠りは一晩中続き、時刻はとうとう午前4:30。仕方なく観念して、今日は起きてしまうことに。ぽっかり空いた朝時間を何に使おうか、ちょっと迷っていいことを思いつきました。「こんな日は、お粥さんびより。」コトコトじっくり時間をかけて体にやさしい朝ごはんをつくろう。そう決めると、とたんにこの早すぎる朝が、楽
2022年2月23日 05:50
冷たい雨の降る土曜日。立春も過ぎたというのにほんものの春が来るのはまだ、幾分先のことみたいです。*やって来たのは一軒のカレー屋さん。気分まで塞ぎがちなこんな日は刺激的なスパイス料理に力をもらおう作戦です。外壁に這う深みどりの蔦は屋根の方まで登っています。店内は昭和ふうの装いでラジカセから、歌謡曲が遠く懐かしく流れてきます。カウンター席に女の人がひとり。あとはテ
2021年10月10日 20:26
最近、大好きな本。「すてきなあなたに」というエッセイ集。シリーズが1から6まであって単行本は一冊300ページほど。季節に沿ったショートエッセイがたっぷりと、収録されている。今までエッセイ集ってあまり読まなかったのだけど、この本は、著者・大橋鎭子さんの上品な言葉選やちょっと古風な言い回し、描かれる場面の温かさが好きで今ではベッドに入ってから眠りに落ちるまでのまどろみ
2021年2月22日 22:34
初めて入った雑貨屋さんで小花柄のレターセットを買った。友人に手紙を返すためだった。お会計をしてもらっている時、店員さんが声をかけてくれた。「お手紙、お好きですか?」私はもちろん、好きだと答えた。 すると、店員さんがお手紙交換リレーについて教えてくれた。『知らない誰かさんとのお手紙交換』①特定の相手を決めずに手紙を書く。②とある郵便局宛に送る。③そこで自由にシャッ
2021年1月22日 15:30
今日はぷかんと浮かぶお花を書いた。赤のチェックがよく似合う。影がゆらゆらしてる。透けてるって可愛い。私が休職して間もない時。休みをもらったのに毎日泣いて、ボロボロになって早く人の役に立てる人間にならなきゃ今の自分ではダメなんだ。常に焦って追い込んでいた。そんな時、母は私に言った。今は焦らなくていい。ほかの誰かの役に立とうなんてそんなこと考えなくていい。ま