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せーかつ

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まいにちのららら。*・゚
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#暮らし

菜の花といちご、それから玉子焼き

菜の花といちご、それから玉子焼き

菜の花が
風に吹かれて
ゆうらり、ゆうらり、と波を打ちます。

一面の黄色。ビタミンイエロー。
花盛りを迎え、
彩度に満ち満ちた葉の花のパノラマが
目の前に広がっています。

黄色い海のように広大な光景も、
そのひとつひとつをよく見ると
それは小さな花たちの集合体。
すっくと伸びた茎先が枝分かれして
そこにいくつもの十字状の花を
ほころばせています。

今日は、近隣の町で開かれた
菜の花まつりにや

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美しく着るということは

美しく着るということは

喫茶店の窓から午後の街並みを
ながめていたときです。
交差点をゆく、
お洒落上手なひとを見かけました。

白いシャツに重ねているのは、
エメラルドグリーンのたっぷりしたセーター。
シャツの襟元には
ネイビーと緑と白のチェック柄スカーフが、
ちょうど
セーラー服の三角タイのように
結んであります。

バッグは黒のショルダー。
ボトムは濃いデニムの長いタイトスカート。
真っ白の靴下と
黒く艷めくバレエ

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思い出の玉子かけごはん

思い出の玉子かけごはん

ひんやりする朝。
ちょっと、あたたかくなれるものを食べたい、
そんな朝です。

キッチンに立って思い付いたのは
子供のころ、日曜日に
父がよく作ってくれた
朝ごはんでした。

作りやすいふたり分の分量を、
ここに書いてみます。

炊きたてのごはんに
鰹のふりかけをさっくり混ぜ込んで
お椀に二膳、よそっておきます。

つづいて
玉子を2コといて
牛乳を大さじ2ほどと、塩を少々。
タネを作ります。

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長月に 揺れる 風鈴のこと

長月に 揺れる 風鈴のこと

まだ残暑の厳しい九月のはじめ。
灼けるアスファルトの上を
先へ先へと急ぎ歩くなか、
信号待ちに
足を止めたときのことでした。

凛、、凛、、、

どこからか、懐かしい、涼やかな音がします。
日傘を下ろして、あたりを見廻すと、
道沿いの家の軒先に
綺麗な風鈴が一鈴、
下げられているのが見えました。

海月のように丸く
下の方だけ少しすぼめた外見は
縁に向かって青いグラデーションの入った
薄手のガラス

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自分の感受性くらい

自分の感受性くらい

窓を網戸にすると
足先へ、僅かにひんやりした空気が
流れてきました。
つい先日までのハッキリした夏が
少しずつ姿を消して
秋の気配が滲みはじめた
過ごしやすい夜です。

リィン、リィンと
遠くの暗がりから聞こえる、鈴虫の声。
さざ波のような、透明な音が
耳当たりよく吹き抜けていきます。

思うようにいかないことばかりで
心が埋もれそうになる毎日。

足元に扇風機のよわい風をあて、
ソファの背もたれ

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海辺の街のコーヒーフロート

海辺の街のコーヒーフロート

デザートの、無花果とヨーグルトを
食べ終えて
時刻はまだ午後六時。

窓の外はほんのり明るく、
そのまま一日を終えてしまうのは
ちょっと勿体無いような、金曜日の夕方です。

本棚の脇の
一冊の写真集が目に留まりました。
ドイツの美しい港町が表紙のその本は
主人のものです。

そうだ、海を見にゆくのも楽しそう。

新しく越してきたこの街は
30分も車に乗れば港へ着きます。
かんたんに身支度を整えて

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ステキな笑顔の裏側に。

ステキな笑顔の裏側に。

店内に、綺麗なピアノの音色が
流れ始めました。

中庭に面した大きな窓には
午後のまぶしい光を背にして
男の人の横顔とグランドピアノのシルエットが
浮かんでいます。

「ここのお店ね、13時になったら
ピアノの生演奏が始まるの。
その席からだとよく見えるでしょう?
ぜひ楽しんでほしいなと思って
予約の時、席まで指定させてもらったの。」

弘子さんは
頬にキュートなえくぼをつくりながら
ふふふ、と笑

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花 見 月 の お 粥 さ ん 。

花 見 月 の お 粥 さ ん 。

寝ているのか、それとも起きているのか
自分でも分からないような
曖昧な眠りは一晩中続き、
時刻はとうとう午前4:30。

仕方なく観念して、今日は起きてしまうことに。

ぽっかり空いた朝時間を何に使おうか、
ちょっと迷って
いいことを思いつきました。

「こんな日は、お粥さんびより。」

コトコトじっくり時間をかけて
体にやさしい朝ごはんをつくろう。

そう決めると、とたんに
この早すぎる朝が、楽

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--- 人と人の  あいだ  を繋ぐ糸 ---

--- 人と人の あいだ を繋ぐ糸 ---

冷たい雨の降る土曜日。

立春も過ぎたというのに
ほんものの春が来るのはまだ、
幾分先のことみたいです。



やって来たのは一軒のカレー屋さん。
気分まで塞ぎがちなこんな日は
刺激的なスパイス料理に力をもらおう作戦です。

外壁に這う深みどりの蔦は
屋根の方まで登っています。
店内は昭和ふうの装いで
ラジカセから、歌謡曲が
遠く懐かしく流れてきます。

カウンター席に女の人がひとり。
あとはテ

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一編のエッセイと、やさしいミルククラウンの夜

一編のエッセイと、やさしいミルククラウンの夜

最近、大好きな本。
「すてきなあなたに」
というエッセイ集。

シリーズが1から6まであって
単行本は一冊300ページほど。
季節に沿ったショートエッセイが
たっぷりと、収録されている。

今までエッセイ集って
あまり読まなかったのだけど、

この本は、著者・大橋鎭子さんの
上品な言葉選やちょっと古風な言い回し、
描かれる場面の温かさが好きで

今ではベッドに入ってから眠りに落ちるまでの
まどろみ

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お 手 紙 の お は な し 。

お 手 紙 の お は な し 。

初めて入った雑貨屋さんで
小花柄のレターセットを買った。
友人に手紙を返すためだった。

お会計をしてもらっている時、
店員さんが声をかけてくれた。

「お手紙、お好きですか?」

私はもちろん、好きだと答えた。

すると、店員さんが
お手紙交換リレーについて教えてくれた。

『知らない誰かさんとのお手紙交換』

①特定の相手を決めずに手紙を書く。
②とある郵便局宛に送る。
③そこで自由にシャッ

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休職と、母のことば。

休職と、母のことば。

今日はぷかんと浮かぶ
お花を書いた。

赤のチェックがよく似合う。

影がゆらゆらしてる。

透けてるって可愛い。

私が休職して間もない時。

休みをもらったのに
毎日泣いて、ボロボロになって
早く人の役に立てる人間にならなきゃ
今の自分ではダメなんだ。
常に焦って追い込んでいた。

そんな時、母は私に言った。

今は焦らなくていい。
ほかの誰かの役に立とうなんて
そんなこと考えなくていい。

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