恋とそれは、、
誰もいない校舎、セミの鳴き声。
青空と、照りつける太陽。
夏休みなのに学校にいるのは、
園芸係の、水やり当番だから。
そして、…あの人に会う為。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『 だーーれだ!! 』
突然、視界が暗くなり、
目元に、柔らかい手の感触。
そして、耳をくすぐる可愛らしい声と、
甘い香り。
「……このみ、、せん、せい? 」
『 んふふ…、あたりー! 』
視界が明るくなり、
先生のいたずらな笑顔が、ぼんやり見える。
僕より小柄で、長くてサラサラの髪。
ネコみたいな愛らしい目。
園芸係の、このみ先生。
生物基礎を、担当している。
僕が、園芸係になったのは、
先生との接点を、作りたかったから。
僕が、生物のテストで96点取ったのは、
このみ先生だから。
僕は、、、
……このみ先生のことが、好きだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
先生と、水やりをする。
校舎前のプランター、ひまわり。
運動場の花壇、ペチュニア。
玄関の小さな植木鉢、マリーゴールド。
花に水をやりながら、
最近、ハマってる食べ物を言い合ったり、
「生き物しりとり」をしたりして、楽しかった。
何気ない話で笑い合う時間が、幸せだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
水やりを終え、
ホースやジョウロを片付ける時、
先生が、話しかけてきた。
『○○くんってさぁ、、好きな子とかいるの? 』
……って、へっ? えぇ? あぁ、、
急な話題すぎて、変な声が出てしまった。
『ごめんごめん笑、そんなに動揺しなくても、、
○○くん、身長高いし、そこそこ頭も良いし、
優しいし、、、
モテそうだなぁって思っただけ。」
………先生は、ずるい。 …ずるい大人だ。
「……何ですか、それ笑、
誠に残念ながら、全然モテないですよ、僕。」
ーーーーーーーーーーーー
とてもじゃないけど、
( 僕が好きなのは、このみ先生ですよ。 )
とは言えなかった。
帰り道、夕焼け空の下。
もどかしい気持ちと、
少しの期待と、
経験したことのない苦しさで、
胸が熱くなり、涙が一筋流れた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?