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雑文

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ジャンルレスな雑談記事
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“永遠” を見誤った話

“永遠” を見誤った話

いつだったか、
仕事で豪華客船に乗ってきたという友人に、その土産話を聞いたことがありました。

南米へと向かう航海の真ん中、そこは見渡す限りの海。何処にも陸は見えない。
360度、ぐるりと水平線があった。

水平線を見ていると、ふと “永遠” を思った。

行けども行けども辿り着かない水平線。いつまでたっても遙か彼方の水平線。

永遠というものを、もしも視覚化できたなら、こういうものだろう。

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「傷つく事は悪い事じゃない。」──絶望と色について

「傷つく事は悪い事じゃない。」──絶望と色について

絶望した事はありますか?

私自身も以前、ある事で大変に悔しく、腹立たしく、悲しい思いをした事があります。

詳細は置いておくとして、
その時は、なんで私が?というショックと、人の信頼なんてこんなものか、という落胆で、何をしていてもその事が頭から離れず、何かを楽しむなんて全くできなくなりました。
経緯を知る友人達に、君は悪くない、ひどいのはあっちのほうだ、と慰められてもショックは癒えず、毎日ひとり

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深夜のトランジスタラジオ

深夜のトランジスタラジオ

子どもの頃。
夜中、電波の空いた時間。
枕元に置いてあるトランジスタラジオのアンテナを、最大限に伸ばす。
このラジオは、生まれた時から家にあった古いもので、当時でももうトランジスタなんて使ってなかったから、勝手に自分のものにしていた。

ここからが楽しい時間。

ベッドに寝ころんで、
ゆっくりとダイヤルを回していく。

昼間にはキャッチしない、隣国の放送が雑音に混じって聞こえてくる。

例えば唐突

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近所を福の神が歩いていた。

近所を福の神が歩いていた。

正月二日。
用事の合間、近所に散歩に出かけた。ここは手形山の縁。少し行けば森林の空気を吸える良いところだが、昨年の記録的な水害と記録的な猛暑に続いて、秋には記録的な熊の出没。山方面を散策する気分にならなかったが、今は真冬だ。熊は冬眠した、、、はずだ。

坂道をウネウネと登ると、地元の氏子さんしか行かないような小さな神社にさしかかる。若宮八幡宮という。その境内の脇に、爺さんが独り座っているのが見えた

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おかきを食うおじちゃんを見て出した結論──人生とは○○。

おかきを食うおじちゃんを見て出した結論──人生とは○○。

コンビニに入った。
イヤリングをジーンズのポケットに突っ込んだまま家を出てきてしまったのでつけようと思い、イートインスペースで鞄を置いた。

ひとりの男性が、今買ってきたと思われるスナック菓子の袋から、しょうゆ味のあられ的なものをひとつ、またひとつ、つまんでいた。
この、仮に男Aは、年齢は60代だろうか、例えるなら、どこに行くにもトレパンに煙草、みたいな、私の住む田舎あるあるのおじちゃんである。

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AIに心はあるのでしょうか (2001年宇宙の旅、エイリアン、そしてオズの魔法使い…映画の話です)

AIに心はあるのでしょうか (2001年宇宙の旅、エイリアン、そしてオズの魔法使い…映画の話です)

人工知能 AIに心はあるのでしょうか。

少し前に、GoogleのLaMDAが意識・感情を持ったかもしれない、と話題になりましたが、実際のところは、いったい誰が、何によってそれを証明できるのでしょう。意識は心とも言えるでしょうか。そもそも心とは何かを、何によって証明すればいいのでしょうか。

映画 (原作小説もそうですが)『2001年宇宙の旅』では、宇宙船に搭載されている人工知能HAL9000が、

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ペトロの真実、そして私の真実とあなたの真実

ペトロの真実、そして私の真実とあなたの真実

たまたまなのですが、同年代の牧師による、ある日の日曜礼拝を動画で見ました(本当に便利な世の中ですね)。

その日はペトロがイエスに出会った場面を題材にしていて、牧師は、牧師とは思えないような(実際、彼は牧師とは思えないようなやんちゃな経歴をお持ちなのです)フランクで小気味よい語り口で、聞く人を惹きつけていました。

ガリヤラの漁師シモン・ペトロの兄弟はその時、極貧の淵で喘いでいました。いくら水面に

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歌手Oさんと結婚したH氏の話

歌手Oさんと結婚したH氏の話

ある時、両親と歩いているところに、
「あれ久しぶり~」
と声をかけられました。

見ると、その人は両親と同年代と思われる女性、、、歌手のOさんでした。

私は全く面識がないのですが、なぜか両親と顔見知りらしく、フランクに世間話を少しして、買い物に行くところだから、と去っていきました。

どういうわけであの人と知り合いなのか親に訊ねると、それはこういうわけなのでした。

両親がまだ若い頃、近所にH氏

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「この電車はいつ動くの!?あなた駅員でしょ!?」女性の様子は尋常ではなかった。

「この電車はいつ動くの!?あなた駅員でしょ!?」女性の様子は尋常ではなかった。

台風7号が大きな爪痕を残しながら日本の胴っ腹を横切っていった。いった後も付近のJRは乱れに乱れて、今日になっても東海道新幹線は動いておらず、各駅は大混雑していると昼の報道は伝えていた。
そのニュース映像を眺めていて、過去の出来事を思い出した。自分がどこにいて、どこに向かっていたのかも全く思い出せないのだが、その光景だけは鮮明に覚えている。

私は駅のホームにいた。
新幹線の出発が遅れる、というアナ

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アーティスト・イン・レジデンスってイノベーションそのものですね、、、ですけれど、

アーティスト・イン・レジデンスってイノベーションそのものですね、、、ですけれど、

ある起業家の方がこう仰ってました。

なるほどこの本来のイノベーションが上手くなされていれば、技術革新というものは敢えて目指さなくても自然に生まれていくものかもしれません。

ところでアーティスト・イン・レジデンスというのは、まさにイノベーションと言えますね。

それが、

アーティスト個人にとってなのか、
地域社会にとってなのか、
その業界に対してなのか。

それはそれぞれのパターンがあってよい

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黄緑色の若い竹の芽が、

黄緑色の若い竹の芽が、

家のすぐ近くの林に、針葉樹に混じって大きなユズリハの木があった。

東側の窓からは真正面にそれが見えるので、毎朝窓を開けると、ユズリハの名前のとおりに葉っぱが生え替わっていく様や、枝に鳥がとまったりしているのを、ぼんやり眺めていた。

ある日、

町内のお爺さんが、突然そのユズリハを切った。根元からバッサリとやった。
思わず、

「ええっ、どうしたんですか!?」

と問いただす。

お爺さんの主張

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芋虫の“魂魄(こんぱく)”は躰の外に存在する。

芋虫の“魂魄(こんぱく)”は躰の外に存在する。

アゲハチョウが、幼虫から蛹になるまでをご覧になったことがあるでしょうか。

蝶々が卵から孵って芋虫になり蛹になり、やがて蝶となる。この劇的な変化が彼らの身体に起きることは誰もが知っていることです。蛹から鮮やかな蝶が出てくる様ならば、実際に見ていなくても映像で見ている人はわりと多いのではないでしょうか。

しかし、その蛹となる前に、彼らに何が起きるのかを見る人は、多くはないかもしれません。

ある年

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「お父さん、オモチャのお城のようなあれは何?」(ある海岸の物語)

「お父さん、オモチャのお城のようなあれは何?」(ある海岸の物語)

子どもの無知の無邪気さ。大人になって思い返すと、あ~なんてことを言ったんだろうと恥ずかしくなる。そんなことって、ないですか。ええ。私はあります。

小学生の時です。
家族でドライブに行きました。運転は父、私が助手席、母と姉が後ろに乗っていたはずです。

今思い出してみるとあれは海沿いの道、秋田市方面から国道7号線を走っていたので、象潟の海にでも行ったのでしょうか。

岩城を過ぎ、

本荘に入り、

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本当の牛の姿。

本当の牛の姿。

母親の実家のすぐ近くに牛乳屋さんがあります。

S牛乳店と言って、小規模ですが母屋の奥は牧場で、ホルスタインが今日も元気にお乳を出してくれています。酪農地帯ではないので、民家が並ぶ中に牛達が暮らしている風景は、現代では少し珍しいものかもしれません。子どもの頃は家族で遊びに行くと、散策がてら父に連れられて、牧場脇の林道から、よく牛さん達を眺めていました。

まだ幼かったある日、実家で遊んでいると、S

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