ほんとうのわたしをさがして⑤


ピアノは、大学4年の10月で辞めた。
発表会を区切りにした。

今現在の私なら、私のためにピアノができると思うので、発表会のあとのコンクールも出ますとか言えるけど、あの時の私はほんとに、地獄からはい出せるきっかけにしか思ってなかったので、早く辞められる方をとった。そんなに時期は違わないけど。

弾き終わって花束もらって、最後一言言わなければならなかった。私はその時泣いた。自分でもびっくりした。そんなに思い入れあったかな?って。

でも、思い入れの涙ではない。
刑務所からの出所と同じ。
やっと出られましたっていう。
過去の全ての辛さの涙。
みんなはそう思ってないけれど。
地獄が終わった安堵の涙に近かった。

だけど、ピアノをやめたからといって
幸せを感じることはひとつもなかった。
少しラクにはなれたのだろうか。

卒業するのに就職していない私は
公務員試験対策講座を受けることになった。
父から10万もらって。
全然公務員になりたくないし
就職もしたくなかったけど
何もやらないのはさすがにやばいと思って
言われるがまま講座を受けた。

講座に行かない日は家で勉強していた。
ちょうど同時期に、家の改修をしていて、
私のおじさんが大工なので、おじさんと後輩の人がふたりで作業をしていた。

ある日、屋根付近を作業中に強風が吹いて
おじさんは高いところから落ちた。

私はその現場に居合わせた。

人の死というのは、急に来る。


おばあちゃんのときもそうだった。

おばあちゃんは中学3年の時に亡くなった。
心の病気だった。
池に落ちて死んでしまった。

どうやって亡くなったのかは絶対誰にも言うなと言われていたが、1人のクラスメイトに話した。
辛かったから。誰かに聞いて欲しかったから。
ただそのクラスメイトはそれを自分の親に話、結局うちにそれを聞いてきたりして、私が怒られた。最悪。


おじさんの葬儀が終わるまで大変だった。
毎日泣いた。
でも泣いてばかりもいられない。


公務員になんかなれるはずもなく
落ち込んでばかりいた私は
とりあえずアルバイトを増やすことにした。

大学生の頃から
塾の講師をしていたので
それは続けながら
昼間は、最初コーヒーショップで働いた。

でも、そのお店は社員同士で怒鳴り合う人たちだったため
半年で辞めた。
怒鳴り声は1番キツい。
開店しても怒鳴り合ってるのは良くない。

そのあと違う個人のカフェで
5年働くことになる。

これもまた地獄だった。


よく生きられたなと思う。

でも、残された道がこれしかないし、
道を探す元気もなかった。

ストレスでガンガン食べて
ガンガン太っていた。

働き始めて2年くらいで
精神的に辛くて、
本当に辛くて
仕事もつらい、
家もつらい、
つらくてつらくて
1週間ホテルに住んだ。

とにかくひとりになりたかった。
ひとりになって、しんとしたところで過ごしたかった。
毎日泣いた。意味もなく。

でも、その間、仕事は行った。
これで仕事を休んでしまうと
店長と私の母が繋がっているので
余計な連絡をされてしまうだろうし
精神的に辛いなんて親に言ったところで
甘えてるだの、みんな辛いだの、
そんなことばかり言うと思ったから
仕事には行った。

家に帰らないことで
父はまた的外れな連絡を私にしてきていたが
母には無視されていた。

母は鬱とか、そういうメンタル的に弱ることを、認めないし、許さない人間だった。私はそれ自体がメンタルやられてると思うが、そういう話に理解を全く示さなかった。私は絶対鬱にはならない、なるなんておかしいみたいなことを言う人なので本当に嫌だった。

どうしようもなくてメンタルクリニックに行った。
というより、私は鬱だって医者に言って欲しかった。
証明して欲しかった。私は病気だって。
病気だったら、ちゃんと理由があって、病気が理由でこんなに辛かったんだなと認められると思ったから。

だけど先生は、うんうん、そうなんだね〜と言いながら
効かない薬をくれた。

病気じゃないのか。
じゃあなんなの?これは。

私はそのころから、心理学的なことを調べ始めた。
あんなに泣いてわめきながら辛いと言ったのに
病院の先生はにこやかに
そうなんだね〜しか言わなかった。

自分でどうにかしなきゃいけないんだ、と絶望もした。だけど、このつらい状況をなんとかしないと、とも思っていた。
クリニックが、なんとかしてくれるわけじゃない。
誰かがなんとかしてくれるわけじゃない。

わたしの考え方ひとつなんだ。

そう思って
必死に心の整理をした。

ここで一回私は持ち直した。

誰にも何も言わずに
一人で立ち直った。

立ち直ったというのは、
家からちゃんと仕事場に通えること、
泣かなかったこと、
これくらいだろうか。
このころの自分の普通は
その程度のものだった。





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