ほんとうのわたしをさがして②

中学にあがった。
学童はやめた。いわゆる鍵っこになった。
おばあちゃんは来なくなった。

まだピアノは続いていた。当たり前だ。
やめられてたならもっと早くやめていた。

4つの小さな小学校が集まる中学校だ。
私は中学でだんだんとリーダー格になる。

3年生のとき彼氏ができた。
だけど、流れでそうなったくらいの感じで
いつもMという奴に
「もっと毎日あいつと話せよ」
「付き合ってるのに話さないとかおかしいだろ?」
「そんなんじゃ嫌われるぞ」
と言われ続けた。

今になってわかったことだが、
そもそもみんなの前で話したいわけじゃなくて
私たちはお互い、周りの人の会話を優先するタイプだった。
心配されなくても、2人きりであれば何時間でも話した。
ただ、恋愛のことなんかひとつもわからなかった私は、Mの言いなりになっていった。Mは私たちに別々に話をふっかけて、コントロールしていたようにも感じる。
それで私たちは一回別れた。
だけど自力で私たちは半年後やり直した。

Mは彼の友達だったために、言うことを聞かなきゃと思っていたが、今考えると本当にバカなことをしたと思う。
もっと自分がしたいようにしたかった。
彼との時間を大切にしたかった。
私たちは不器用なりに、あの時はお互いを大切にしていた。
そんなことも、今になってからしかわからない。

私は大人になっても
中学時代は順風満帆の最高の時期だったと思っていた。

好きな人がいて
友達もいて
いつもリーダーやってて
慕われて
先生にもほめられた
合唱とか伴奏もして
運動会は軍長をやって
文化祭は劇の演出を全部やった

素晴らしい働きだったと思う。
あれが仕事だったなら高給だったはずだ。

でも今思い返すと、
全部人のためにやっていたことだった。


自分がやりたいからやっていたと思っていたが、
人の役に立っている自分でないと
生きていられなかったのかもしれない。

役に立っていると思うことで、
生きていていいと許可を出していたのかもしれない。

役に立っていると思われるような役職について活動するには人の信頼を得なければならない。無意識ではあったが、たぶんここでずいぶん無理をした。あまり好きではない人たちにも、かなりいい顔をして言いたいことを我慢したと思う。
しかし、これは子供のころからの延長だ。
親に何も言わないで、いつも顔色を伺い、親のテンションに合わせてきたのが、ここでも活かされていただけだった。

自己犠牲というのは一番簡単にできる技だった。

当時自己犠牲なんて言葉知らなかったけど、
「自分が我慢すれば全ておさまる」
そのことは知っていた。

リーダーとして、みんながやりたがらないことを
率先してやることは意味があると思うが

私はなんでもかんでも背負いすぎた。

心の中の奥底の奥底では、辛かったんだろう。
何が辛かったかは思い出せない。
でも、担任に一回だけ相談した記録がある。
私は悩んでいた、その時。
今はもう何で悩んだかは思い出せないけど。
たぶん、表面的には行事の運営についてだったと思うけど。


学校の中では活発で、大人に負けることなく、
意見をしっかり言うタイプの人間だった。
周りにもしっかりそう見えていたようだ。

でも家に帰れば今までと同じ。
何も喋らない奴。その場の空気に合わせて
相槌なり話しかけたり。

ある時、ピアノの曜日であることをすっかり忘れていたわたしは文化祭の準備をしていた。既に母が迎えに来ていて何十分か待たせてしまったときも、死ぬほど怒鳴られた。

放課後に行事の準備をしたくても、友達と遊びたくても、ピアノが最優先だった。

どうして私だけがこんなめにあっているのだろうかと少し思ったこともあったが、もう逃げられないという諦めもあったので、そういう思いはねじ伏せていた。無かったことにしていた。それがずーっと続いた。

きっと、理想の自分を学校の中で作り上げていたんだと思う。ピアノとか、親とかは学校にはいないから、何層にも重なった仮面をつけて、素晴らしい自分を演じていたのだろう。演じていたという自覚はない。今になって、そう思うということ。
ピアノを無理やりやってる自分とか、
やめたいって言えない自分とか
親の顔色ばっかり見てる自分とか
弱くて、弱くて、怖くて何にもできない自分を隠して
すごい人を演じていた。
私の迫真の演技は、皆を騙した。
友達を騙し、先生を騙し、親を騙し

自分を騙した。

心を殺し、自分を騙した。

私は、これが正解だと思っていた。
誰も困らない。
みんなには私の偽りの良い面が見えて
親も何も言わなかった。


ただ、彼には
彼にだけは
仮面は外して対面した。

いらなかったから。

彼はきっと見透かしていたのかもしれない。
でも何も言わなかった。
私は、彼の前では偽ることなく話ができた。
たわいのない話を、心の底から楽しんでできた。

ただ、だんだんと恐怖が襲ってきた。
この人に嫌われたらどうしよう。

恐れからのコミュニケーションは
破壊を生む。


これもあとから知ったことだ。








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