龍之介

東京大学大学院人文社会科学研究科基礎文化研究専攻倫理学専門分野修士1年 片麻痺性偏頭痛…

龍之介

東京大学大学院人文社会科学研究科基礎文化研究専攻倫理学専門分野修士1年 片麻痺性偏頭痛持ち/jazzとお酒と芸術一般についての話題をこちらに書き散らす予定。

マガジン

  • 短編置き場

    僕の書いた短編小説たちが置いてあります。完全に不定期更新です。

  • 誰でもない「ひと」たちについて

    「ひと」は、私やあなたの会話から漏れ出続ける一方で、全体的言説に取り込まれてしまうような「語りの<他者>」である。不定期に更新。正確性とかはあまり気にしない。

  • 【連載】たまには、くだらないことを話そう

    たまには、くだらないことを話そう。 そういう心意気で書いた適当なエッセイである。将来これが世に出回ることはおそらくない。ならむしろ今のうちに有料にした方がよいのではないか。 そんなわけで、一部の記事は最後が有料である。面白そうだと思ったら払ってくれたまえ。 こんなへたくそな文章で、あなたも何かが書きたいとおもったら、”#くだ話”  ぜひこのタグを、あたなも使ってほしい。

  • 下手糞な文章についてクソ真面目に語ってみる記事

  • 【哲学】「境界」についての考察

    このシリーズでは、僕なりの哲学をもって「境界」という事象について深く考えていきたいと思う。何度も繰り返し言うことではあるが、本記事は僕が記事の読者とともに、「境界」ということについて哲学的考察を深めていくことに意義がある。それに、僕はソクラテスにならって「無知」から始めていこうと思っている。つまり、事前に何らかの書籍を熟読しているわけではないということである。未熟な僕の考察に、少しでも良い素材となりえる本や作品を知っている方がいるのであれば、ぜひ教えてほしい。僕のTwitter、この記事のコメント欄を含めて、自由に。

記事一覧

固定された記事

「誰かの何かになりたい」ということ

巷でよく言われる言説の中に、「誰かの大切な人になりたい」「好きな人の好きな人になりたい」という言葉がある。直近(というわけでもないのだが)「別の人の彼女になった…

龍之介
4年前
18

片麻痺性偏頭痛になった #1

お久しぶり。龍之介です。 誰にも心配されることのない入院生活を終え、つい昨日家に帰宅。「頭いてえなぁ」で大学の保健センター行ってみたら、脳梗塞の疑いあるからすぐ…

龍之介
2週間前
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渋谷のバーにて

 昨日、後輩たちと飲んだ後に、一人で道玄坂の洒落たバーに行った。いつも僕が言っているジャズバーではない。白黒の無声映画を流している、「Baron」という名のバーだ。…

龍之介
4週間前
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【詩】虻の祈り

(1) 「もう何もうむな」と言われたから おれは 闘うのをやめた 闘いとは うむこと まもること 何もうまないなら まもるものもない そうして何もうまずにいたら 虚…

龍之介
2か月前
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言葉について

 作家志望の僕にとって、言葉は自分の住む家みたいなものだ。実際、この感覚は、僕が哲学を志し、哲学者ハイデガーの「言葉は存在の家である」という言葉に出会うよりもは…

龍之介
2か月前
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【詩】冬

 畳を静かに揺らすような  低く、うなるような除夜の音  雪たちが、ひそひそと  主のいないキャンパスを飛び回る  正月ーあるいは、質素な部室   渦巻く嫌悪感の方…

龍之介
2か月前
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【短篇】大人になると言うのは、いつでも死ねるようになるってことだ。

 生まれてから、インターネットが当たり前にある時代の僕にとって、世の中にあふれる膨大な数の言葉たちは、まるであらゆるものを破壊しつくした聖書の大洪水のようだった…

龍之介
4か月前
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【短篇小説】死に場所を探していた。

 死に場所を探していた。できれば君の隣がよかった。  そう考えたのは、これが初めてのことではない。ずっと前にも、同じことを考えた。君と出会う前に、半年ばかり付き…

龍之介
5か月前
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【詩】寸劇

呼吸すら許さぬほどの静寂の内で  ―宇宙が目覚める。  泣きたい時に限って泣けなくて 死にたい時に限って死ねなくて  生きているから苦しくて  けれども、時々楽しい…

龍之介
6か月前
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【詩】吐きそうだ

吐きそうだ 吐きそうだ 全部吐き出してしまいそうだ 朝起きて 君のいない隣を見つめて 残酷に照り付ける太陽に気が付いて 何にも悪くない鳥の鳴き声が バタン と 車に…

龍之介
6か月前
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【詩】夕焼けに染まったので

夕焼けに染まったので ぼくの身体は赤く燃える てのひらから 足の指先まで じんわり じんわりと 燃えていく 身体の輪郭が身体から解き放たれて ぼくの内側にまで入りこ…

龍之介
6か月前
3

【詩】どうせ人生、一度きり

どうせ人生一度きり いずれ死ぬさ灰になって だからハイになって生きようと思った。 けれどイキるのは嫌だ。 いやだな、こんなこと言う大人になるのは 大人はみんなみっと…

龍之介
6か月前
1

愛することは難しい

人を愛することは、他のどんなことよりも難しい。心の底からたとえ嫌いになったとしても、それでも人は人を愛さねばならない。愛とは何も恋や友情だけではない。そこに人が…

龍之介
6か月前

【詩】誰がこの絵を描いたのか?

誰がこの絵を描いたのか? 知らんとは言わせぬ その眼で見よ 朽ち行く廃墟のその片隅で 泣き崩れた少年が 声をかけ続ける母親の腹を貫く 鉄くずを 誰がこの絵を描いた…

龍之介
6か月前
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【詩】不完全なそれは

不完全なそれは、 知らん顔で飛んでいく晴れた日の雲 戦争や災害や、悲しみが 過ぎ去る都市の片隅で、 鉛のように重く横たわる私の身体 不完全なそれは、 私を見つめる物…

龍之介
6か月前
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【哲学的考察】誰でもない「ひと」たち#1

俺のことなんて、何も分からないくせに 弟にそう言われた言葉が、私の中に引っかかっている。彼は家族の一員であり、私は彼を弟だと思っている。しかし、私は「彼」のこと…

龍之介
6か月前
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「誰かの何かになりたい」ということ

「誰かの何かになりたい」ということ

巷でよく言われる言説の中に、「誰かの大切な人になりたい」「好きな人の好きな人になりたい」という言葉がある。直近(というわけでもないのだが)「別の人の彼女になったよ」という曲のタイトルも、この種の言説であろうし、現に多くの人から支持されている。僕自身、この曲はとても好きである。

さて、何か一通りの言説が見られるとき、それをある程度抽象化しようと思うのが哲学を志す者の癖である。ここでいう場合は、「誰

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片麻痺性偏頭痛になった #1

片麻痺性偏頭痛になった #1

お久しぶり。龍之介です。
誰にも心配されることのない入院生活を終え、つい昨日家に帰宅。「頭いてえなぁ」で大学の保健センター行ってみたら、脳梗塞の疑いあるからすぐに緊急で行けや、ということになり、ものの数時間の間にCT、MRIその他の検査を受けた。そのまま丸3日ほどを病院で過ごすことになった。殆ど寝たきりで風呂も行けず、課題やら何やらもまともに手が付けられなかった。

元々自分は偏頭痛持ちで、薬も飲

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渋谷のバーにて

渋谷のバーにて

 昨日、後輩たちと飲んだ後に、一人で道玄坂の洒落たバーに行った。いつも僕が言っているジャズバーではない。白黒の無声映画を流している、「Baron」という名のバーだ。映画館の建物のすぐ近くのビルの地下にあるその店の雰囲気が好きで、時折僕は足を運ぶ。それほど頻繁に、というわけでもないのだが。
 オードリーヘップバーンの美しいポスターがカウンター横に張られている。酒瓶の並んだ棚の中央から、大きな桜の造花

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【詩】虻の祈り

【詩】虻の祈り

(1)
「もう何もうむな」と言われたから
おれは 闘うのをやめた
闘いとは うむこと まもること
何もうまないなら まもるものもない

そうして何もうまずにいたら
虚しさが よみがえった
それはあっというまに 地球のすべての場所を
覆い隠して 夜にした

けれどもニュクスは なにもうまない
死も 運命も 眠りも 夢も
繋がれ 喰らわれる創造の神も
すべて まどろみの内に微笑む

どうしたことか? 

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言葉について

 作家志望の僕にとって、言葉は自分の住む家みたいなものだ。実際、この感覚は、僕が哲学を志し、哲学者ハイデガーの「言葉は存在の家である」という言葉に出会うよりもはるか以前から、漠然と心の中に持っている感覚である。
 言葉の中に人は住む。美し夕焼けを見た瞬間、そこに感じて、そこに見ることがあの純粋な感覚について、いろいろと言葉をひねって表現する方法を考える時の、心の中の内声みたいなものの感覚が無ければ

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【詩】冬

 畳を静かに揺らすような
 低く、うなるような除夜の音
 雪たちが、ひそひそと
 主のいないキャンパスを飛び回る
 正月ーあるいは、質素な部室

  渦巻く嫌悪感の方向ベクトル見失って
  とりあえず自分を刺す 冬

【短篇】大人になると言うのは、いつでも死ねるようになるってことだ。

【短篇】大人になると言うのは、いつでも死ねるようになるってことだ。

 生まれてから、インターネットが当たり前にある時代の僕にとって、世の中にあふれる膨大な数の言葉たちは、まるであらゆるものを破壊しつくした聖書の大洪水のようだった。僕にとって箱舟は、あふれかえった言葉の海を渡ろうとする、必死の抵抗だった。既存の表現、美しい言葉なんていう幻想に縋りつく、愚かな自称文学者の努力、というような意味ではない。むしろどちらかと言えば、もっと個人的な叫びである。僕が僕であるため

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【短篇小説】死に場所を探していた。

【短篇小説】死に場所を探していた。

 死に場所を探していた。できれば君の隣がよかった。

 そう考えたのは、これが初めてのことではない。ずっと前にも、同じことを考えた。君と出会う前に、半年ばかり付き合っていたある女の子のことだ。その時も、今も、僕は隣で死にたいと思っていた。暖かい日差しの差し込む縁側で、君のそばでこくり、こくりと居眠りをしたいと思っていた。そう思うことは、悪いことではないはずだった。

 病院のベッドの上で目を覚まし

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【詩】寸劇

【詩】寸劇

呼吸すら許さぬほどの静寂の内で 
―宇宙が目覚める。

 泣きたい時に限って泣けなくて
死にたい時に限って死ねなくて
 生きているから苦しくて
 けれども、時々楽しいことがあるから、
  のうのうと生き延びているあたしを
無残に喰い尽くした一匹の獣が
  車裂きの刑に処されて 息絶えた

 内側から壊れていくものは 
 何も、花瓶だけではない



あたしは、真っ黒な夜だ。

 真っ黒で、何も見

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【詩】吐きそうだ

【詩】吐きそうだ

吐きそうだ 吐きそうだ
全部吐き出してしまいそうだ
朝起きて 君のいない隣を見つめて
残酷に照り付ける太陽に気が付いて
何にも悪くない鳥の鳴き声が
バタン と 車に轢かれて途絶えて
         -私の一部がそこから漏れ出した
口を押えていたら 腸(はらわた)の方から出ていくなんて
ナンセンス! そう笑う道化は斜陽に照らされて
ああ 吐きそうだ 彼岸に咲く一輪の華

【詩】夕焼けに染まったので

【詩】夕焼けに染まったので

夕焼けに染まったので
ぼくの身体は赤く燃える
てのひらから 足の指先まで
じんわり じんわりと 燃えていく
身体の輪郭が身体から解き放たれて
ぼくの内側にまで入りこんでくるそれは
心臓すらも高鳴らせる
どくん どくん
それは水平線に沈む 
ぼやけた熱気に包まれて
白雲の内にまどろみながら

【詩】どうせ人生、一度きり

【詩】どうせ人生、一度きり

どうせ人生一度きり
いずれ死ぬさ灰になって
だからハイになって生きようと思った。
けれどイキるのは嫌だ。
いやだな、こんなこと言う大人になるのは

大人はみんなみっともない
みっともなくて、見たくもない
けれどもその見たくも無い物に近づくから、
泣いているんだ 海際で一人
泣いたイルカは、海に帰りたいといった

海に帰れば何かが変わるか
変われば何かが起こるのか
起これば何かが生れるか
生れればす

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愛することは難しい

愛することは難しい

人を愛することは、他のどんなことよりも難しい。心の底からたとえ嫌いになったとしても、それでも人は人を愛さねばならない。愛とは何も恋や友情だけではない。そこに人が人としているからこそ、その人の尊厳に対して敬意を持って接することが、僕にとっての「愛」だ。
そこには欲望は存在しない。あるとすれば、その人の幸せを心から願いたいという僕の勝手なエゴだけだ。愛はいつも一方向だと弁えなければならない。見返りを求

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【詩】誰がこの絵を描いたのか?

【詩】誰がこの絵を描いたのか?

誰がこの絵を描いたのか?
知らんとは言わせぬ その眼で見よ
朽ち行く廃墟のその片隅で 泣き崩れた少年が
声をかけ続ける母親の腹を貫く 鉄くずを

誰がこの絵を描いたのか?
見たくないとは言わせぬ その耳で聞け
嘆きと憎悪の渦巻く 渇きの平原を木霊する
耐えがたきほどに厳粛な 死者たちの声を

誰がこの絵を描いたのか?
聞かぬとは言わせぬ その肌で知れ
慰めの少女を貪る悪魔を焼いた業火の中で
お前を

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【詩】不完全なそれは

不完全なそれは、
知らん顔で飛んでいく晴れた日の雲
戦争や災害や、悲しみが
過ぎ去る都市の片隅で、
鉛のように重く横たわる私の身体

不完全なそれは、
私を見つめる物言わぬ軍人の眼差し
慰めを知らぬ骨とう品はたとえ、
火薬のと血の匂いで汚されるとも、
なおも無垢なる肉として 蠅たちの祝福を受ける

不完全なそれは、
子供の頃に追いかけた一握の希望
爪と肉の間に砂を詰まらせながら、
波際で描いたスケ

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【哲学的考察】誰でもない「ひと」たち#1

【哲学的考察】誰でもない「ひと」たち#1

俺のことなんて、何も分からないくせに 弟にそう言われた言葉が、私の中に引っかかっている。彼は家族の一員であり、私は彼を弟だと思っている。しかし、私は「彼」のことが、ほんとうに「わからない」。私は理解しようとしているが、そのことは「彼」の中の歪んだ自己意識をさらに歪ませる様な種類のものらしいのだ。「分かろうとするな!」と彼は僕や僕の両親に言う。「分かってほしい、でも分かるはずがない。だって気づかない

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