【詩】寸劇
呼吸すら許さぬほどの静寂の内で
―宇宙が目覚める。
泣きたい時に限って泣けなくて
死にたい時に限って死ねなくて
生きているから苦しくて
けれども、時々楽しいことがあるから、
のうのうと生き延びているあたしを
無残に喰い尽くした一匹の獣が
車裂きの刑に処されて 息絶えた
内側から壊れていくものは
何も、花瓶だけではない
*
あたしは、真っ黒な夜だ。
真っ黒で、何も見えない、
目玉を失った烏みたいに真っ黒な夜だ
確信なき悪意に切り裂かれた羽を抱く
側溝に落ちた煙草の吸殻みたいに無様な夜だ
あふれだす感情に
一つ一つ名前を付けていったら
最後まで残ったのは、そんな私を構成する
病名の書かれたカルテとレッテル
磔のキリストは学ランを着て
ぼそりと、つぶやいた。
―本当に、先生は、いい人でした。
*
逆さまの契りを結んだのは赤子と胎盤だった
目覚めの声が悲しみに満ちて
砲弾が砕け散った破片が
むき出しのマリアの肺に刺さる
彼女は涙すら流さない
粉塵吸って夏を吐く
汗でぐしゃぐしゃに汚れた私を
貫いた鉄の塊が罪を産む
罪は白痴の宿り子
致死量の幸福で 君の手のひら埋め尽くす
私をどうか 赦してください
幸せは 罪なのです
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