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ゆっくり読みたい創作大賞記事

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#エッセイ部門

死ぬかと思って救急車を呼んだ話

死ぬかと思って救急車を呼んだ話


プロローグ
それは地吹雪が吹きすさぶ寒い2月のある日。

そもそも、そのふた月前あたりから、わたしの体調はイマイチどころかイマサンくらいよくない状態が続いていました。
主な症状は胃腸です。ご飯は食べられるのだけれど胃もたれします。しかも食べた後、背中が痛くなるのです。まるで水分を取らないまま大きなパンや中華まんを急いで飲み込んだように、胃の左後ろあたりが圧迫されて痛みます。

近所のクリニックに

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ヘタレのオバサンが、ほぼ無一文から移住生活を始めた経緯

ヘタレのオバサンが、ほぼ無一文から移住生活を始めた経緯

2024年5月18日、わたしは片道切符で新幹線に乗りました。行き先は広島。引っ越しのお供は、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』 前田将多 著 旅と思索社。

この本は4月の終わり、スナワチポップアップストアにて、前田さんご本人にサイン頂き購入したものです。“cowboy up!” とも書かれていました。その時は何の意味かわからないまま受け取りました。

ひと夏をカナダの牧場でカウボ

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ここにいるよ、ここにいる。

ここにいるよ、ここにいる。

じぶんの歩いてきた道をたとえば
白い地図に点と点でつないでゆけば
どんな線を描くんだろうって時々
夢想してしまう。

でたらめな線を描きながらも、変わらず
そこにいてくれたのは母かもしれない。

結婚もしなかったから。
離婚した母と暮らしてどれぐらいに
なるだろう。

太陽がいっぱいみたいに、わたしにとっては
まぶしいほどいっぱいだ。

昔は喧嘩もしたし、悪態もついてシカトもした。
沈黙戦を決めて

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インドに行ったら、変わったのは、人生観だけじゃなかった話

インドに行ったら、変わったのは、人生観だけじゃなかった話

インドは、海外旅行の行き先として誰もがその国の名前を知っているし、雰囲気もなんとなく想像できます。

日本とは異なる文化が色濃く発展し、幸運にも行くことが叶ったならば、観るもの聞くものは新鮮な驚きに変わります。

いつしか「インドに行けば、人生観が変わる」というキャッチフレーズが浸透し、異国情緒あふれるインドは、旅人たちの憧れの旅先になったのではないかと思います。

かくいう僕も、そんなふうに憧れ

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心ととのえる銭湯

心ととのえる銭湯

最近なんだか体が重い。
1日ゆっくりした休み明けもこの感じが続いている。きっと少し疲れているんだと思う。

今年の初めにアルバイトからの正社員登用を果たし、新しい環境で働き始めた。仕事の内容はこれまでしてきたことと変わらないし、好きな仕事で正社員として働ける喜びを噛み締めていた。新入社員研修だったり、勉強の機会もたくさんもらえて、モチベーションも高く、側から見たらかなりキラキラしていたと思う。

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八年間で習得したのはエレベーターのボタンを押すこと

八年間で習得したのはエレベーターのボタンを押すこと

八年間勤めたホテルでの仕事を終えた。この記事では八年間の出来事や感謝を綴らせてください。

八年で僕はエレベーターの下行きのボタンを押せるようになった

食べさせてもらってばかりの八年間

仕事での出来事を振り返ろうとしているのに思い出すのはあの人やその人が作って食べさせてくれたもののことばかりです。

入社したてのころに同じ時間帯に入っていた定年間際の長井さんは毎朝お弁当を作ってきてくれました。

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【ばあちゃんと僕と金ちゃんヌードル】

【ばあちゃんと僕と金ちゃんヌードル】

僕が小学2年生の時だった。父親の両親、つまり僕にとってじいちゃんとばあちゃんと同居することになった。
当時中学生だった姉はばあちゃんたちに甘えることは少なかったが、もともと二人が大好きだった僕はそれはもうベタベタに甘えさせてもらった。
両親が共働きだったこともあって、学校から帰宅するとすぐにばあちゃんたちの部屋を訪ねてはお菓子をもらったりカップ麺を作ってもらったりしていた。
その頃、僕が1番好きだ

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信じる何かをもっている、ということ

信じる何かをもっている、ということ

子どもたちが驚いたのも無理はない。大人のわたしだって初めてそれを目にしたとき、視線が釘付けになった。

ホストファミリーをしていた頃、ムスリム(イスラム教徒)の留学生を何度か受け入れたことがある。彼らは1日5回、決まった時間にメッカの方角を向き、お祈りをする。彼らにとっては幼い頃からの習慣で、母国では、家族も友人も近所の人も会社の人も、みんなお祈りをする。

そのお祈りの様子を見た子どもたちは「う

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父が危篤のとき、僕はゲームをしていた。

父が危篤のとき、僕はゲームをしていた。

「お父さんが救急車で運ばれたから、お母さん行ってくるね」

動揺を隠し切れない母が、気丈なフリをして病院へ向かった。

家には、姉と僕の二人だけが取り残された。

あれからもう20年近くになるか。当時僕は高校2年生だった。

土木現場で重機の運転手をしていた父が、仕事中に突然呼吸困難となり、救急車で搬送された。後から知った話では、気管支炎だったそうだ。
得てして現場作業員は喫煙者が多く、父もその一

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誰かいる場所

誰かいる場所

「芋の子を洗うよう」と言ったら失礼かもしれないが、
実際に目の前に広がっている光景はまさにそんな感じだった。
そう広くもない中学校の図書室に沢山の生徒たち。
見慣れたその光景は、
私が想像していた
「一般的な図書室」とはちょっと違うものだった。

図書室。
それは、
人が本を求めてやってきて、
読んだり借りたり調べたりする場所。

しかし、本とはまったく関係なしにやってくる人もいる。
半分くらいは

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白髪染めの呪い

白髪染めの呪い

 寄る年波、という言葉がある。
 幾重にも波が寄せる様子を、年を重ねていくことに例えている言葉だ。
 確かに、波打ち際の海面を見ると、目尻に刻まれた皺のようでもある。

 寄せる波、返す波。
 波はきちんと返ってきてくれるのに、若さというものは、そう簡単には返ってこない。筋トレ、ダイエット、化粧、整形、ありとあらゆる手を使って、押し寄せる波を自力で返すしかない。

 私は体格に恵まれ過ぎていること

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人生最後の挑戦! 推し、母。

人生最後の挑戦! 推し、母。

「わたし、YouTuberになったよ!」

あるとき、68歳の母からLINEが届いた。動画を観ると、確かに母は料理をするYouTuberになっていた。

母は、iPadもパソコンも持っていないので、撮影はスマホ一台でしている。

「びっくりしたー。どうしてYouTuber?」

「わたしより年上の90歳でも、YouTuberになれる時代だよ! わたしにも、できると思って」

よくよくヒアリングして

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トイレットペーパーへの疑念

トイレットペーパーへの疑念

 私は今、疑念に駆られている。

 最近、お店に行くと、様々なトイレットペーパーを見かけることがある。昔はトイレットペーパーといえば、シングルかダブルくらいしか選択肢がなかったが、最近は本当に種類が多い。

 どこぞのお姫様が使うのか、と思わせるような、花柄プリントのものや、フローラルなどの香り付きのもの。ウォシュレット用の破けない丈夫なものまで、使う人に合わせたラインナップが豊富だ。

 私は実

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茶碗が割れたら、転換の合図/2023.12.05

茶碗が割れたら、転換の合図/2023.12.05

朝から炊き立てのごはんを、お気に入りのお茶碗に盛って食べれるのは、すごく幸せなことだ。

朝ごはんはごはん派だ。
子供のときから、卯ノ花家の朝ごはんの主食はごはんだった。

上京したばかりの頃。
シェアハウスの備品としてあった炊飯器を使うのに抵抗があり、しばらくの間、パンを毎朝食べていた。

しかし、パンはすぐにお腹が空いてしまい、お昼ごはんを多く食べてしまいがちだった。
さらにパンを毎朝食べるの

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