秋田柴子

一人BARが趣味の物書きわんこ(SS~長編) 東京新聞300文字小説優秀賞、小学館「第…

秋田柴子

一人BARが趣味の物書きわんこ(SS~長編) 東京新聞300文字小説優秀賞、小学館「第2回日本おいしい小説大賞」最終候補、Panasonic×note 思い込みが変わったことコンテスト企業賞、第31回やまなし文学賞佳作→作品集として書籍化。餃子とピザとあんこが好物。

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なぜ小説を書くのか ~公募落選の現実と、その先に見えるもの 〈3385字〉

2021年11月11日。 全力を尽くして書き、応募した文学賞に見事落選した。 初っ端から暗い書き出しで恐縮だが、事実だから仕方がない。恥ずかしながら相応の自信はあったのだが、残念なことに結果はついてこなかった。 同様の経験をされた方は、この世界に多くおいでのことと思う。成功を手にできるのは、ほんの一握りの人たちだけだ。 それが判っていても、やはり、書く。 プロアマ問わず、物書きの業とも呼ぶべきものだろう。 「好きなものを好きなように書き散らして、それを適当に投稿したら受

    • 【#創作大賞2024】聖地・宇都宮を歩く ~秋田柴子の餃子探訪

      冒頭からなんの装飾もなくて恐縮だが、私はとにかく餃子が好きである。 時に秋柴餃子右衛門とまで名乗り、一部の方々からは「餃子犬」などという不本意な名前を頂戴している私の悲願。 それは 「本場・宇都宮の餃子が食べたい!!!」 この一言に尽きる。 実は昨年も、東京の仲間を訪ねる旅の中に組み込もうと企みはしたのだ。 だが 「いや秋田さん、東京から宇都宮はけっこう距離がありますよ……」 と何人もの方からご忠告をいただき、結局断念したという経緯がある。 というわけで、今年はそのリ

      • #創作大賞感想『夢と鰻とオムライス』 花丸恵さん

        いきなり、何の脈絡もなくて恐縮ですが。 山梨は、いいところです。 この物語の中盤は、その山梨が舞台となっています。 住宅よりも数が多いんじゃないかと思えてくるぐらい、街のあちこちにひろがる葡萄畑。 その葡萄畑にもれなくセットでついている販売所。そう、そこでは試飲もでき(できないところもあるけど)、ワインや葡萄ジュースが一升瓶で、どん! と並んでいて、どえらい迫力を醸し出しています。 (自宅の冷蔵庫に入らないので、私は泣く泣く買うのを諦めました) そんな山梨が、物語の中

        • #創作大賞感想『僕は超能力者になりたい』 射谷 友里さん

          まずタイトルを見て。 「ああ、超能力に憧れる男の子の話なんだな、なんか目的があるのかな、好きな子の心の中が見たいとか……」 ……とか勝手に考えつつ、あらすじを見たら 「この世界で僕だけ超能力がない」 あー、そりゃあかんですわ、そりゃ欲しくもなりますわ、とまだ見ぬ主人公に同情した秋しばでございます。 「平凡な両親ですら」とあるものの、座っただけで椅子潰せるぐらいの怪力とか、それを一瞬で直せるとか、なにも平凡じゃない(笑) てか、これを「平凡」と言える世界にお住まいだと

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          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 終 章

          ←  前の話・5ー⑦ 慟哭 「――純江伯母さんは、本当にそれでいいんですか?」 結依の問いに、純江は穏やかな表情で頷いた。 「私一人で決められることじゃないけど、本音を言うなら、私はもうこのままそっとしておいて欲しい。確かに母の命と、私たち家族の生活を奪った犯人を憎む気持ちは今も変わらない。でももうあの事件から50年以上が経ったわ。父も、そして沙和子もいなくなって、残っているのはもう私だけになった。また世間の好奇の目に晒されたくはない。そしてもうひとつ、あなたや大樹くん

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 終 章

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ⑦ 慟哭

          ←  前の話・5ー⑥ ギフト 晃雄はそんな純江の視線も気にならないのか、面倒そうに肩をすくめた。 「そうだ。だがただ火をつけるだけじゃ、すぐ消えるかせいぜい壁を焦がす程度だ。それでも最初は面白かったが、だんだんそれぐらいじゃ物足りなくなってきた。やるならちゃんと成果を出さなきゃ意味がない。その辺の凡俗な奴らと一緒にされたくないからな」 誰も口を開かないのをいいことに、晃雄はあたかも武勇伝を語るがごとくに滔々と続けた。 「だから一計を案じた。どうやったら確実に火をつけら

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ⑦ 慟哭

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ⑥ ギフト

          ←  前の話・5ー⑤ 暴挙 ちらほらと人影が見え始めたものの、墓地の中はまだ閑散としている。豪奢に構えた墓の前で佇む晃雄や結依たちの姿は、遠目にはただ墓参りに来た家族連れにしか見えないだろう。だがその場に漂う空気には敵意と嫌悪が渦巻き、肌を切るような緊張感に包まれていた。 『私のことは何とでも仰ってください。でも結依ちゃんに危害を加えるのは許しませんよ。たとえ電話が繋がってなくても、今の結依ちゃんの姿を見れば何があったか大体の想像はつきます。これ以上の真似はさせません』

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ⑥ ギフト

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ⑤ 暴挙

          ←  前の話・5ー④ 決行 「きゃっ!」 尻もちをつく形で後ろに倒れ込んだ結依は、敷石にへたり込んだまま仰ぎ見た。そのすぐ脇から冷然と自分を見下ろしているのは、予想どおり父の晃雄だった。 「お父さん……何でここに……」 結依の途切れ途切れの声に、晃雄はふんと冷笑を投げて寄こした。 「もう仕事もなくなったんでな。たまに来てやることにしてるんだ。もっとも俺が来るのは、いつももう少し早い時間だがな」 そのわりには草刈りもせず、花ひとつ供えていない。早い時間に来るのは人目

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ⑤ 暴挙

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ④ 決行

          ←  前の話・5ー③ 地震 ――少し早すぎただろうか。 結依は不安げに時刻を確かめた。9時半前というところだ。早朝というほどではないが、まだ墓地にはほとんど人影がない。 結依は墓地の入口でうろうろと足踏みをした。実は四十九日の法要の時に、遺族への注意という形で岡崎から釘を刺されていたのだ。お墓参りは一人で行かないこと、早朝や夕方などの人の少ない時間帯は避けること。 「昔から言われることですが、墓地というのはあまり人気がありません。そして皆さん、自分の手元に一生懸命にな

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ④ 決行

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ③ 地震

          ←  前の話・5ー② 絶景 岡崎清松は、本堂で毎日の朝の勤めを上げると、ふうっと大きく息をついた。 岡崎が父からこの寺を継いで、早や8年になる。本来ならばもっと後の予定だったのだが、父が病に倒れたためにそうせざるを得なかったのだ。 今や寺の役割は減少の一途を辿っている。幼い頃に父から聞かされていたような、葬式と言えばまず僧侶を呼ぶような時代は、とうの昔に過ぎ去ってしまった。今はごく一部の高齢者や、潤沢な経済力を持つ家庭の何割かが形式的に依頼してくるに過ぎない。反面、昔に較

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ③ 地震

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ② 絶景

          ←  前の話・5ー① 変貌 どれぐらい走ったのか、結依はようやく足を止めると、膝に手をついて肩で大きく息をした。呼吸よりも動悸が収まらない。ついさっき見た自分の父だとは到底思えない変貌ぶりに、結依はぶるりと身を震わせた。 『結依ちゃん、大丈夫? 怪我なかった?』 手にしたブイホが、ふわりと純江の姿を映し出す。 「大丈夫です。ありがとうございました……伯母さんの言うとおり、万が一の時のために、電話で繋がっててもらってよかったです」 結依が実家に乗り込んで晃雄と交渉する

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ② 絶景

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ① 変貌

          ←  前の話・4ー⑦ 覚悟 純江の電話から十日後、結依は久しぶりに実家を訪れた。 いささか威圧感のある門をくぐり、玄関脇のインターフォンを押す。だが何の応答もない。 「あれ、おかしいな……留守かなあ」 結依は間を置いて、何度もインターフォンを押してみた。いちおう鍵は持っているが、家を出た身としてはやはり遠慮もある。日曜だから父も兄も在宅の可能性が高いと思ったのだが、家の中からはまったく反応がない。 ここに来る前に、結依はあらかじめ父へ電話をかけてみた。いきなり散骨の話

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第5章 ① 変貌

          #創作大賞感想『残夢』 豆島 圭さん

          もう、ね。 この作品については、今さらワタクシが…… そう、今さら!!!!!!!! 何ですか、この出遅れ感! なんですか、あのコメント欄や感想文の盛り上がりよう!! ええ、判っております。判っておりますとも。 自分の『創作大賞2024』に取っ散らかって、落ち着いてコメントや感想書く余裕のない、秋しばのマルチタスク苦手ぶりを晒しているだけでげす。 でも。 そんなヘタレな私でも。 毎日、読みました。 どんなに自分の原稿がしんどい時でも、これは投稿されるのを心待ちにして読

          #創作大賞感想『残夢』 豆島 圭さん

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第4章 ⑦ 覚悟

          ←  前の話・4ー⑥ 交流 伯母である純江の説明は、結依にとってはあまりに知らないことばかりで、いかに純江の説明が整然としていても、結依の困惑は増すばかりだった。 『要するに理由や根拠はともかく、私たちは晃雄さんに交流を禁じられた。でもこの時代、隠れて連絡を取る方法はいくらでもあるわ。でもさすがに父や私が富山から東京の家まで行くわけにはいかないし、沙和子も富山まで来ることはできなかった。だからせめて私と沙和子の間だけでも、こっそりと連絡を取り合ってたの。もっともバレるとい

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第4章 ⑦ 覚悟

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第4章 ⑥ 交流

          ←  前の話・4ー⑤ 電話 『突然電話してごめんなさい。お仕事中よね、きっと』 「大丈夫です。ちょうど今日は午後から休みだったんで」 もちろん大嘘である。晴天の霹靂のような電話に驚いた結依が、目の前にいた木下に頼み込んでその場で早退を申請する力技に出たというだけのことだ。 『本当にごめんなさいね。びっくりしたでしょう』 「いえ、えーと……はい。あの今までお会いしたことなかったと思うんで……あの、伯母さんと」 純江はくすりと控えめに笑った。 『伯母さん、ね。そう呼んで

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第4章 ⑥ 交流

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第4章 ⑤ 電話

          ←  前の話・4ー④ 決断 それからの結依の日常は多忙を極めた。 何しろ毎日の仕事の傍ら、海洋散骨について調べたり、様々な手配を進めていかなければならない。 岡崎にはああ言ったものの、結依自身は、父が散骨を許可する可能性は万に一つもないと確信していた。事の達成ということだけで考えれば、このまま無断で実行に移した方がはるかに成功率は高い。だがさすがに肉親の情が揺さぶりをかけるのか、結依もそこまで思い切った手段を取るには抵抗があった。 「うーん……聞いた限りではお父さんに話を

          【#創作大賞2024】蒼に溶ける 第4章 ⑤ 電話