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#創作大賞感想『腐るまで待って』 たらはかにさん

作品の引用等がありますので、先に『腐るまで待って』本編をお読みいただくことをお勧めいたします。

初めから自分語りで恐縮ですが、私は頭がカタいです。
ショートショートを書く場合、柔軟な発想というもの無くして良作は生まれないので(ショートストーリーはまた別です)、当然のごとく私はショートショートがあまり得意ではありません。

その柔軟で奇抜な着想がぶんぶんと縦横無尽に飛び交うショートショートの世界にあって、なおまばゆい異彩を放つ人(ヒト?  ハコ? カニ?)。
それが『腐るまで待って」の著者、たらはかにさんです。

そのたらはさんが、今年の創作大賞2024で長編に挑まれました。しかも何と3作も! その最初の1本が、この『腐るまで待って』です。

……。

……………………。

『腐るまで待って』


もうこのタイトルだけで、私は思わずノートPCの上に突っ伏しました。

何これ! 何なの、このタイトル!!!

このタイトルを見た瞬間にそう思った方、ハイ手を上げて。
――ほぉら、いっぱいいる(決めつけ)

このタイトルを考えつくセンス! さすがたらはさん! とか思っているそこのアナタ。
違うんですのよ。
あ、いえ、それはそのとおりなんですけれども。

たらはさんのすげえところはですね、この思わず口が開いちゃうようなタイトルを持ってして、見事に振り切った物語ストーリーを展開しちゃうところ。いわゆる ”タイトル倒れ” にならない、ということですね。
たまにないですか? タイトルに惹かれて読んでみたら、肝心の内容がちょっとビミョウなこと。

『腐るまで待って』は、まさにそのたらはさんの真骨頂とも言うべき着想と、実は慎重な細部へのこだわりを織り交ぜるようにして展開されていきます。

政治家が寿命を延ばすために、皆ゾンビ化するんです。(第2話)

これね、これ。いやもう、現代でも半ばなってるでしょ、とついシニカルに鼻を鳴らしたくなっちゃいますね。
「国や国民でなく私利私欲のためにゾンビ化する」ということより、「そのためにゾンビ化を可能にする法案を通してしまう」とあたりが、いかにも的な風味満載です。
奇抜な設定の中でふいに顔を出すリアリティ。これもまたたらはさんの武器ですね。いったいあのハコの中で、どんな計算が為されているのでしょうか。(本能という説も)

「殺してやる」
『分かりました。【腐るまで待って】を流します』(第2話)

ここだけ読んだら、何が「分かりました」なのか、てんで分かりません。
そして流れる【腐るまで待って】……あまりにシュールな歌詞に、またも突っ伏します。この物語を読んでいるうちに、いったい何度突っ伏したことでしょう。ただでさえ低い鼻が顔面にめり込みそうです。


しかし。
しかしですね。
ここまで取り澄まして書いてきましたが、ついに私は覚悟を決めて告白します。最初に申し上げたとおり、私はとかく頭がカタいのです。
ですので恥ずかしながら、物語が進むうちに私のアタマはだんだんとこんがらがってきました。

何が、うそなのか。
何が、真実なのか。

だから最初は掴めなかったんです。物語のコアが。たらはさんが物語のあちこちに仕込んだトラップに、見事全部引っ掛かって右往左往。
なので何度も何度も読み返しました。
そしてようやくひとつの結論(正解かどうかはまた別)に辿り着いた時。

私は思わず「どはあああああ」とお腹の底から息を吐きました。

「……たらはさんのアタマの中って、どないなっとんねん……」

たぶんこれがいちばん素直な感想かもしれません。


――この感想文を書くにあたり、本当はもう少しあちこちに触れたかったんです。でもそれをやると、この話はマズいかもしれない。
通常でもネタバレはもってのほかですが、それ以外でも、私には到底及びもつかない緻密な計算(≒構成)を損なってしまうかもしれません。
何しろ私自身がきちんと細部まで掴み切ったという自信がないので。

なので感想文としてはかなり半端ですが、ここで止めておきます。
「何やそれ」と言う方には、こちらの感想文をおススメいたします。

豆島さんが、いかに楽しんで読まれたかがびんびんと伝わってくる、秀逸な感想文です。こちらの記事を読むと『腐るまで待って』の絶妙な味わいがよりいっそう増すと思います。
本編をお読みになった方はぜひぜひこちらも!!!


では、最後に一言。

物語に出てくるクッキーが食べたいぞう!!!


(クッキーやフィナンシェなどの焼き菓子が大好物の秋しば)


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