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腐る前に読んで!【#創作大賞感想】

「毎週ショートショートnote」を企画運営されている、たらはかに(田原にか)さんを存じ上げない人は note では少ないでしょう。

でも、創作大賞 ホラー部門に投稿されていることに気付かなかった! 読む読む! と思った人は、下記のリンクから 今すぐGO!
この記事は読まなくてもOKです。

もし、「あまり存じ上げないわ」「ホラーは興味ないわ」という方がいらしたら、ぜひ下記を読んでね。

たらはかに(田原にか)さんと言えば、2023年の「ひなた短編文学賞」で大賞を受賞されたり、2022年の「#2000字のホラー」で受賞されていたり。

他にもきっと色々受賞歴がある方だとは思うのですが……プロフィール見ても自慢されてないのでイマイチ分かりません。
私もそんなに交流ないので紹介するほど存じ上げてなかったわー。

じゃあ、なんでお前が応援するのさ って話です。

いや、この小説が! 純粋に! 
めちゃめちゃ面白いから!!
間違いないから!!

そういうことです。はい。
これでもまだ最初の記事をクリックしない人は、黙って以下を読む。はい。



この物語は、動画撮影現場で「藍一」がインタビューされる場面から始まります。

それは「未解決事件や理不尽な出来事について当事者の皆様の声をお聞きして、真実を追求していく」チャンネル。

今日は藍一さんに結婚を決めていた恋人を何者かに殺されてしまった事件についてお話をしていただきます。

「腐るまで待って」第一話

ああ。視聴者を煽るようなサムネイル画像が脳裏にチラつく。ホラーっぽく、じっとり嫌な空気が漂う。

最初の質問は、恋人との出会い。
ここがまず、静かに怖い。だが同時に、滑稽さもある。

私の脳内では「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」に出てくるような女性が動き出す。
そう、操り人形のような不自然な動き。
主人公の藍一は、「まるで生魚に触れたかのように冷たかった」という美しい彼女、夕那に一目惚れ。

ただし、相手が人間じゃないと気づかずに惚れてしまった、ということではありません。主人公は、その「ゾンビ」と分かっている女性と恋人関係になります。

なぬ。

つかみはオッケー。豆島の心はガッシリ掴まれたまま、第二話。
冒頭、その世界観が明らかになります。
ゾンビに襲われる? 人間との闘いが始まる? 
ノンノン。
これはホラーですが、そういうゾンビパニックではありません。

「(略)我々でゾンビと人間の共生するダイバーシティな未来を作ろうではありませんか!」

 大きな拍手が鳴り響いた。現職の総理大臣が自らゾンビであることを公表したのだ。その発表がきっかけとなり、この国は人間とゾンビが共存する世界へと大きく舵を切り始めていた。

「腐るまで待って」第ニ話

ど、どういう世界? (((( ;゚Д゚)))

実は、あらすじの冒頭にも書いてありますが、この話は「ゾンビが人間と共存を始めた時代」。

設定がかなり ぶっ飛んでる!

そんな世界観を受け入れて読むと、ゾンビとの生活はラブラブで幸せそう。人間の恋人たちとなんら変わりはありません。
恋人と暮らす家の中で何度か出てくる「腐るまで待って」というフレーズも、実は、ほっこり&ぎゃはは ポイント。

ははーん。これは、ホラーコメディだな。

また、主人公には梨花という幼馴染の女性がいる。恋人とのことを相談をしようとして、飲み過ぎた梨花は、ある勘違いをして……。

ははーん。恋愛要素もブッこんできたな。

という雰囲気で話は進んでいく。

怖くないじゃん。

そう。最後まで読んでの感想を先に書いてしまいますが、どちらかというと、オシャレ映画を観ている感覚。
海外のオシャレな、バイオレンス映画。短くて、知る人ぞ知る監督の。日本で言えば? 「カメラを止めるな」とか? 知らんけど。観てないし。なんか、そんな感じ。映像にしたらグロくてキモいところもありますよ。ゾンビですから。

そんな感じで、ぐいぐい引き込まれて行きます。
でも、徐々に雲行きが怪しくなっていきます。

ホラー的な怖さとは少し意味が違いますが、私がぞっとしたのは「ゾンビ法案反対」のデモをする人たちの言い分。

政治家が寿命を延ばすために、皆ゾンビ化するんです。そして今国会にいる政治家達がずっと引退をしないままこの国の政治を続けていくことになるんです。

「腐るまで待って」第2話

こわい、こわい。リアルに怖い!
これ、あり得ますよね? 
政治家って、自分たちに有利な法案をこっそり通すのが仕事だもんね(偏見)。政治家と金持ちって、火星移住計画で真っ先に地球を捨ててく生き物だもんね(偏見)。
山田宗樹さんの「百年法」とか頭をよぎったもんね。(オススメ)

ぶっ飛んだ設定なのに、その世界になった理由に説得力がある。

これは小説にとても大事な要素ですよね。
そういった細かい状況説明や描写がしっかりしているので、ゾンビと恋人になって展開される喜劇も、その後の二人の悲劇も、すべてリアルに感じられます。
それが怖い。

そんな中、たらはかにさんは、読み手の感情を激しく揺さぶってきます。

人権ならぬ、ゾンビの権利について語る首相の言葉には大いに吹き出します。その直後、まだ人権の無い恋人が、死にかけているのに助けてもらえないという主人公の焦りや怒りを、私たちは一緒に感じて藻掻き苦しみます。最初は笑った「腐るまで待って」のフレーズで、あなたは必ず涙します。

テンポよく進む展開と、その感情のアップダウンとで、スマホをスクロールする手が止まりません。

そして恋人が亡くなってしばらくしてから、主人公の藍一はあることに気付きます。

殺したのは誰か?
なぜ殺されたのか?

実は、本当の犯人が他にいるんです。

「腐るまで待って」第4話

おおっ! ミステリやん! 
これは完全にミステリー! 私の大好物やん!

そしてその謎が明らかになります。
ザ、どんでん返し。


えー!

からの、どんでん返し。


えー!



からの~!!


そう。ある程度 明らかになったと思って……「からの~」なんです。まだ続きがあるんです。

え? これって……? 
え? それって……?



もしかして――!


****(以下、花畑で踊る豆島)*****
うふふ。私はミステリーが大好きよ。
読む本はたいていミステリーなの。
多くのミステリーを読んできたわ。
もしかして。前に出た、あれが!
なんて振り返って読み直すの。そして
「まるっとお見通しよ」
なんて叫ぶの。それがミステリの醍醐味よ~。
あはは。うふふ
*******(ここまで)*******


この話も、ちゃんと誘導してくれます。
ミステリー好きには、たまらない展開です。

そろそろ行くかと、「実に面白い」のポーズで最後の「エピローグ」をタップします。


よし!来た!

「じっちゃんの名にかけ――」



!! えー!! (゚Д゚;) !
予想、はずしてるじゃーん!



最後の最後まで気が抜けません。

決して、あり得ないとか、なんじゃそれ、のラストではありません。納得できるラスト。
いかにも、毎週ショートショートnoteで鍛えて来ただけあるという、バチコーンと決まったラスト。

ああ。
大満足。

この満足感を、あなたにも。

もう一回 貼っとく。

たらはかにさん、「これは消して」って部分があったら教えてください。
勝手に応援させていただきました。m(_ _)m


最後までお読みいただき、ありがとうございました。 サポートしていただいた分は、創作活動に励んでいらっしゃる他の方に還元します。