花丸恵
面白いことを、ちょろっと漏らしがちな夫が登場するエッセイです。面白いだけではなく、たまに哲学的なことも言ったりします。
思いつくままに書き留めたジャンルなしの日記やエッセイです。
自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん坊ほとばしる雑文ですが、楽しんで頂けたら幸いです。
自作の掌編小説(ショートショート)を集めました。
あれこれ考えるタイプです。思考の海に潜っていく人間です。 考えすぎてぐるぐるして渦みたいになります。 たまに地上に上がれなくなります。溺れたりもします。 それでも考えてしまう。そんな自作のエッセイや創作をまとめました。
◇ 飛んできたのは五百円玉だった。 よりによって一番攻撃力の高そうな硬貨の側面が、俺の眉間に命中したのだ。 鋭い痛みが目頭から眼球の裏へと伝わり、泣きたくもないのにじわりと涙が滲んだ。 「いってぇ……」 俺は両手で目を覆い隠した。痛みのせいで勝手に湧いてきた涙をそれとなく拭って、顔を上げる。 「何すんだよ!」 渾身の力を込めて睨みつけると、ほんの一瞬だけ、兄はうろたえた表情を見せた。だが、すぐに目を吊り上げ、 「呑気に家の中をうろうろすんじゃねーよ! とっととパ
創作大賞2024の中間選考を通過することができました。 読んで頂いた皆さんにお礼を申し上げます。 スキやコメント、感想を頂き、とても励みになりました。 本当に有難うございました。 嬉しいです。本当に有難うございます。 応募作品です↓ https://note.com/hanamarue8787/n/n47cfe30a780c
台風がのろのろと通り過ぎたと思ったら、また暑さがぶり返している。 暑さが苦手な私は、長々と続く猛暑にほとほと参っているのだが、ここにきてつけっぱなしのエアコンのせいで、喉がいがらっぽい。だからといってエアコンを止めたら、暑がりの私は何もできなくなるので、喉には辛抱してもらい、連日エアコンの乾いた風を浴び続けている。 そんな私と違って夫は、暑さに強い。 強いがゆえに、エアコンがどうも苦手らしく、乾いた風から逃れるように、夫は隣の部屋で扇風機のみで読書をしている。ここ
夏休みが終わると、ぐっと秋の気分が高まってくる。 九月、という数字だけ見ると秋なのだが、気温はまだ夏だ。 この夏の間、私は本当に何もできなかった。 考えてみれば、昨年も夏は何もできなかった。 何かを進捗させた、という実感もなく、今年も八月が終わった気がする。 ここ数日、台風の影響もあってか、湿気はあったがひと頃よりも、ずっと涼しかった。その間、ここ二か月ほど停滞していたものが、少し前へ進んだ。なんとなく復調の兆しを感じて、ほっとしたのと同時に、おや? と思った
子供の頃、数人で友達の家に遊びに行くと、おうちのお母さんが、冷えたコーラやサイダーなどを持ってきてくれたのを思い出す。 「ありがとうございます!」 皆でお礼を言い、ごくごくと喉を鳴らす中、なかなか飲み物に手を出さない子がいた。 「あら? どうしたの?」 お母さんが心配そうにその子の顔を覗くと、 「……ごめんなさい。私、炭酸飲めないんです」 そう言って申し訳なさそうに背中を丸めた。 「あらやだ。そうよね、苦手な人もいるわよね」 と、お母さんは彼女のために、オレンジジュ
面倒臭がりのうえに、筋金入りの出不精のせいで、毎日家に引きこもってばかりいる。そのせいで気づかぬところで損をしてきたかもしれない。でも、それを気に病んだりしないのは、やはり家にいるほうが性に合っているからだろう。 そんな私を外に連れ出してくれたのは夫である。 夫も特に活発なタイプではないが、若い頃バイク乗りだったこともあり、旅が好きだった。そんな夫に付き合って出かけるうちに、まぁ、旅行くらいなら出かけてもいいかな……と思うようになった。 旅の間は家事をしなくていい
目が覚めたとき、部屋は真っ暗だった。 夕方頃、異様な眠気に襲われて、そのままごろんと横になったら、いつの間にやら眠ってしまった。 出窓から、街灯の明かりだけが差し込んでいる。 カーテンを閉め、電気をつけようと思うのだが、それも面倒くさい。顔にずっとエアコンの風が当たっていたせいか、喉がからからだった。 とりあえず、ビールが飲みたい。 ゆっくり起き上がり、出窓から漏れる明かりを頼りにキッチンに向かう。暗い中、手探りで冷蔵庫を開ける。庫内の明かりにほっとしなが
私のかつての知人に、何かというとすぐに 「死んだらいいのに」 「死ね」 「マジで、殺したい!」 そんなことを言う子がいた。 彼女は人並みに気遣いもできる子で、特に問題行動もない。でも彼女は、何か気に入らないことがある度に、《死》を絡ませる言葉で、その場にいない誰かを罵ることがあった。 私はその言葉を聞く度に嫌な気分になり、 ……こういうことを言わなければ良い子なのになぁ。 と思うことが多々あった。 でも、それを咎めることができるほど、付き合いは深くない。 下
自分の銀婚式を間違える人なんて、この世にいるのだろうか。 私は茫然としながら、追いつかない頭で朦朧と考えていた。 ……きっと、私以外には、存在しないのではないか。 そう思えば思うほど、恥、という文字が私の頭の中をひしめきあった。 青い顔をしてため息をつく妻を見て、夫は言う。 「どうしたの? 随分と暑さにやられてるじゃないか」 そうだ。全部、この記録的な暑さのせいだ。 連日、エアコンのない34℃の台所で、夕飯をこしらえていたら、脳みそも熱々になって、何がなん
「ちょっとおやつが食べたいねぇ」 夫婦でそんな話になり、小雨降る中、私はコンビニへ出かけた。 夫は休みのとき、あまり外へ出たがらない。私も一人で商品をあれこれ見るほうが気楽なので、こういうときは、どんなおやつがいいかリクエストを訊き、それに見合ったものを買ってくることになる。 私にとってコンビニでおやつを買うのは、ちょっとした贅沢だ。コンビニでは大概のものはスーパーより値段が高いし、気を抜いて次々と商品をカゴに入れていくと、1000円なんてあっという間だ。我が家で
テレビやラジオ局にも地域密着型のローカル放送局があるが、インスタント麺にも、そんなローカル麺ある。 意外なことかもしれないが、ペヤングのカップ焼きそばは、元々は関東ローカルだったらしい。私は子供の頃からペヤングのコマーシャルを見て育ったので、正直、大人になるまでべヤングがローカルな存在であることを知らなかった。 「関西の人はペヤングよりもUFOを食べる」 なんて話を聞いたときには驚いたものだ。 ペヤングを製造する《まるか食品》が群馬県伊勢崎市にあり、長く関東ロー
前後編に分けてまで、読んでくださる方がいらっしゃるか甚だ疑問ではあるのですが、ここまで来たら書ききりたいと思います。 お付き合いいただける方、どうぞ宜しくお願いします! ちなみに、こちらが前編です。↓ ◇ と、いうわけで、続きの第10話から話を始めましょう! 10話にはにはワイナリーが登場します。 ここに出てくる白ぶどうのジュースはこちらのワイナリーのものです。 お店で試飲できるのですが、猛暑の中、冷えたジュースは例え試飲のわずかな量であったとしても、
私が一編の小説を書き上げたとき、夫は言った。 「タイトルだけで腹いっぱいになりそうだね」 確かに、 「ごはんよー」 と言われて食卓を見たとき、そこに鰻とオムライスがあったら、どんな人でも一瞬は戸惑うに違いない。 とにかく、物語の中に食べ物を登場させるのが好きなせいで、この作品も食べ物の連打となってしまった。 作中に出てくる食べ物がどういったものであるか、気になる方が、もしかしたらいらっしゃるかもしれない。 そんなわけで、物語に登場する食べ物をできる限り解説
買い物をしようとスーパーに行くと、通路の真ん中にぶどうが一粒落ちていた。 並べられた特売の巨峰から、ポロリと落ちてしまったのだろう。その様子は、親を見失って迷子になっている、憐れな子どものようだった。 「今日、スーパーの通路の真ん中に、ぶどうが一粒落ちてたよ」 帰宅後、夫に報告すると、 「旨かったかい?」 思いがけない言葉が返ってきた。 「野良犬じゃあるまいし、いくらなんでも、拾って食べたりしないよ」 そう答えると、 「俺、小学生のときに、道に落ちてたさ
私はかつて、急須に窮す日々を送っていた。 なぜ、あんなに急須というものは割れやすいのだろう。 生活に馴染み、日々を共に過ごしている急須は、なぜか突然注ぎ口が欠け、蓋が割れ、持ち手が欠ける。そのたびに、心に大きな衝撃が走り、自分の不注意を責め、精神的に弱っているときには、うっすら涙さえ浮かべることもある。 あのどっしりとした見た目に反し、急須は実に繊細な瀬戸物だ。 某通販雑誌で、高級な急須を見かけた。 その雑誌は、こだわりのある品揃えで、時折、芸能人や文化人がC
「とおくへいきたい」 という言葉を聞くと、私は反射的に浅田飴の宣伝をしていた永六輔のことを思い出してしまう。 その昔、永六輔氏は日本テレビで「遠くへ行きたい」という番組に出演していた。永六輔本人は1年余りで番組を退いてしまったものの、番組自体は現在も形を変えて続いている。 日曜の朝に早起きしてテレビを見る方なら、この番組の主題歌の触りくらいは聴いたことがある方もいらっしゃるかもしれない。 番組の主題歌のタイトルは、そのものズバリ、「遠くへ行きたい」。作詞・永六輔