花丸恵

はなまるえと読みます。note創作大賞2023恋愛小説部門入選。旅する日本語2020入…

花丸恵

はなまるえと読みます。note創作大賞2023恋愛小説部門入選。旅する日本語2020入賞。「#寄付してよかったこと」優秀賞。鎌倉新書「今は亡きあの人へ伝えたい言葉2021」佳作入賞。奈良の飛鳥大仏が大好きです。リレー&バトン企画には参加していません。

マガジン

  • 夢と鰻とオムライス

    note創作大賞2024ファンタジー小説部門応募作品です。

  • 花丸恵の#プロモーションは含みません

    好きなものやおすすめのもの、おいしかったものなど、既製品でよかったもの、感動した作品などを記事にしたいと思います。「食べたり飲んだり作ったり」とマガジンが重複してしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。

  • おもちょろい夫

    面白いことを、ちょろっと漏らしがちな夫が登場するエッセイです。面白いだけではなく、たまに哲学的なことも言ったりします。

  • 花丸恵の漫筆日和

    思いつくままに書き留めたジャンルなしの日記やエッセイです。

  • 花丸恵の掌編小説集

    自作の掌編小説(ショートショート)を集めました。

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夢と鰻とオムライス 第1話

◇  飛んできたのは五百円玉だった。  よりによって一番攻撃力の高そうな硬貨の側面が、俺の眉間に命中したのだ。  鋭い痛みが目頭から眼球の裏へと伝わり、泣きたくもないのにじわりと涙が滲んだ。 「いってぇ……」  俺は両手で目を覆い隠した。痛みのせいで勝手に湧いてきた涙をそれとなく拭って、顔を上げる。 「なにすんだよ!」  渾身の力を込めて睨みつけると、ほんの一瞬だけ、兄はうろたえた表情を見せた。だが、すぐに目を吊り上げ、 「呑気に家の中をうろうろすんじゃねーよ! とっとと

    • 夢と鰻とオムライス 第4話

      <前話へ  最初から読む  次話へ> ◇  翌朝、両親が仕事に向かい、兄が予備校に出かけると、俺は荷造りを始めた。三週間は帰らないつもりで持ち物を選ばなければならない。  気がつけば、昨日のボストンバッグはパンパンに膨らんでいた。持ってみると結構重たい。やれやれと思っていると、弾けるような音を立ててスマホが鳴った。 「はい、もしもし」 「来ちゃった!」  スマホから、叔父、光一のおどけた声が聞こえてくる。  付き合いたての彼女みたいな言い草に、思わず噴き出す。 「なに言

      • 夢と鰻とオムライス 第3話

        <前話へ  最初から読む  次話へ> ◇     夕方になり、ようやく腹の虫も鳴きはじめた。  鰻だったらあそこがいい。  そう言って母が指定した店は、家からわりと近い場所にあった。  俺が店に向かって歩いていると、先に来ていた母が俺を見つけて無邪気に手を振った。 「あーよかった。おでこ腫れてない。もう大丈夫そうね」  喧嘩をして気まずくなっても、次に顔を合わせるときは明るく話しかける。母は家族に対して、いつもそれを貫いている人だ。 「父ちゃんや兄ちゃんの晩飯はいいの?

        • 夢と鰻とオムライス 第2話

          <前話へ  最初から読む  次話へ> ◇  昔から、兄のほうが出来は良かった。  俺はといえば、運動も勉強も平均の下あたり。興味の持てないことには、意欲が湧かない性格なのだ。  それを「甘えだ」と言う父に、俺は「自分に素直なだけだ」と言い返す。そんな減らず口を叩くから、俺は父から好かれない。  以前、テストで赤点をとったとき、 「瞬太……おまえ本当に俺の子か?」  父がため息交じりに漏らしたことがあった。すると隣にいた母が、 「あなた! まさか私が浮気したとでも言いたいの

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        夢と鰻とオムライス 第1話

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          4本
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        • 花丸恵の食べたり呑んだり作ったり
          101本

        記事

          噛みしめる人生

           三十代になった頃から、歯医者さんで、 「歯ぎしりしてませんか?」  と、訊かれるようになった。  これまで、家族からそういった指摘を受けたことがないので、 「いいえ」  と答えたが、歯が欠けてきたりヒビが入ったりしているので、噛みしめ癖があるのではないかと言われてしまった。  鏡に近づいて見てみると、前歯が少しばかり擦り減っているのがわかる。  診察を受けて驚いたのは、 「普通は口を閉じているときは、上下の歯の隙間は空いているものなんですよ」  歯科医師から、そう教えても

          噛みしめる人生

          吸引力の強い男

           その日、私はショッピングカートをゴロゴロ引っ張っていた。  月に2回ほど開催されるワイン2割引の日を目当てに、近所のスーパーマーケットに、買い物に来ていたのだ。  会計を終え、カートに戦利品のワインをつめていると、真横から独特な匂いが漂ってきた。  ポマードだろうか。  スーパーマーケットという場にそぐわない重たい独特な匂いに、思わず目をやる。  するとそこには、スーツをビシッと着て、頭をビタッとなでつけた若い男が、買い物を終えて袋詰めをしていた。  ほう。  何に感

          吸引力の強い男

          心、呼び覚ませ

           人情、という言葉を聞いて、思い浮かべるものはなんだろう。  webで検索してみると、実に簡単に、    人にそなわる自然な、心の動き。情・思いやり。  そんな意味が出てきた。  だが、人情というものは、実際の意味よりも重たく、人を束縛するような不自由さを感じさせる。どことなく湿り気があって、そこに陶酔しきってしまうのは、自分の冷静さを失うようで恐ろしい。  江戸物などの時代小説を読んでいると、現代では些末に扱われがちな、《人情》《忠誠》《辛抱》《貞操》というものを描いて

          心、呼び覚ませ

          人は願いの中を生きている

           なぜこうも、いろいろなことを願ってしまうのだろう。  ああなりたい、こうなりたい、と、願望を抱いては、それをどうにかして叶えたいと思う。だが、自分の願いと向き合うことは、簡単なようでいて実は難しい。  願いを現実化させたいと思うことは、精神的や痛みや負担が伴う気がする。  例えば、お金が欲しいと願うことは、《自分にはお金が無い》と認めることになるし、痩せたいと願うことは、《自分が太っている》と認めることになる。そこにあるのは《今の自分は欠けている》という不足の概念だ。

          人は願いの中を生きている

          白髪染めの呪い

           寄る年波、という言葉がある。  幾重にも波が寄せる様子を、年を重ねていくことに例えている言葉だ。  確かに、波打ち際の海面を見ると、目尻に刻まれた皺のようでもある。  寄せる波、返す波。  波はきちんと返ってきてくれるのに、若さというものは、そう簡単には返ってこない。筋トレ、ダイエット、化粧、整形、ありとあらゆる手を使って、押し寄せる波を自力で返すしかない。  私は体格に恵まれ過ぎていることもあって、顔に一切のやつれがない。そのお陰か、顔全体の皺は少ないような気がする。

          白髪染めの呪い

          トイレットペーパーへの疑念

           私は今、疑念に駆られている。  最近、お店に行くと、様々なトイレットペーパーを見かけることがある。昔はトイレットペーパーといえば、シングルかダブルくらいしか選択肢がなかったが、最近は本当に種類が多い。  どこぞのお姫様が使うのか、と思わせるような、花柄プリントのものや、フローラルなどの香り付きのもの。ウォシュレット用の破けない丈夫なものまで、使う人に合わせたラインナップが豊富だ。  私は実家ではダブルを使っていたのだが、結婚してからはシングル一辺倒になった。シングルの

          トイレットペーパーへの疑念

          おんなは股関節

           かつてNHKの朝の連続テレビ小説で、「おんなは度胸」という作品があった。最近つくづく思うのだが、度胸と同じくらい、股関節は大事だ。  40代も中盤になってくると、生理前後の体調不良を感じることが増えてくる。何となく調子が悪いという感覚は、積もり積もると、生活に影響が出てくるものだ。  正々堂々休んでしまうのも手なのだが、洗濯物やホコリ、髪くずを見て見ぬ振りでやり過ごすのは、なかなか忍耐力がいる。蓄積されていく家事を横目で見ていると、寝ていても気持ちがちっとも休まらない。

          おんなは股関節

          あのとき卯月がいたならば

           この物語が、あのとき私のそばにあったら、どれほど救われただろう。  ため息とともに吐き出された思いを胸に、私は先ほどまで読んでいた本の表紙を、じっと見つめた。  穏やかな水面のような瞳でこちらを見るナース。  物語を読み終えた今、この表紙のやさしい色合いが、なおさら心に沁みてくる。  長期療養型病棟で看護師として働く、卯月咲笑には、患者の思い残したものが、《視えて》しまうという不思議な力がある。  意識不明の患者のベッドの脇に女の子の姿が視えたり、にらみつけるような表情

          あのとき卯月がいたならば

          平成の空気

           先日、ホームセンターでバランスボールのカバーを買った。  これまではパソコンで作業のときは、椅子に腰かけていたのだが、バランスボールを椅子代わりにしてみたら、これが案外よかったのだ。  よかったとなると継続して使いたい。継続して使うとなると、見た目も、肌触りもいいほうがいい。  と、いうわけで、早速買ってきたカバーを被せてみることにした。  私はてっきり、膨らんだバランスボールにこのまま、カバーを着せればいいと思っていたのだが、広げてみると、カバーには15センチほどのフ

          平成の空気

          楽ちんの《ちん》とは何か

          「楽ちんの《ちん》って何だろうね」  休日の昼下がり、夫がそんなことを言い出した。  聞いていたラジオ番組がショッピングのコーナーになり、 「これがあると、楽ちんですよ!」  そんな商品紹介をしていたらしい。  確かに、考えてみれば、 「これは楽ですよ!」  で意味は通じる。わざわざそこに《ちん》をつける必要はない。  Xなど文字制限のあるSNSが流行し、何でも略し、簡潔に伝えることが多くなっている昨今、わざわざ 「楽ですね」  で済むことを、文字数を増やしてまで 「

          楽ちんの《ちん》とは何か

          note創作大賞2024に応募します。

           今日、note創作大賞2024の開催が発表されました。  昨年の創作大賞は大いに盛り上がりましたね。  現在も、受賞作品が書籍化されたり、書籍化に向けて準備万端、予約受付てます! といったニュースが続々と発表になっています。むしろ、盛り上がった、という過去形ではなく、盛り上がりが今も続いているといった印象です。  私事ではありますが、昨年、自作の小説を創作大賞の入選に引き上げて頂きました。  皆さんに読んで頂けたことが本当に嬉しく有難く、授賞式でnoteの運営の皆さん

          note創作大賞2024に応募します。

          街中華のマトリックスを味わう

           その日、何十年かぶりに夫婦でマクドナルドに行った。  久しぶりなのに、昨日も来たような見慣れた店構え。どこのマクドナルドに行っても、店の様子が変わらないのは、大企業ならでの戦略の一つなのだろうか。  そんなことを思っていると、奥のほうから 「テレレ、テレレ」  ポテトの揚げ上がりを報せる音が聞こえてきた。  この音を生で聞くのも久々なはずなのに、昨日聞いたかのような耳慣れた音に感じる。  私はダブルチーズバーガーにポテト。夫はフィレオフィッシュバーガーにサラダを頼んだ。

          街中華のマトリックスを味わう