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花丸恵の#プロモーションは含みません

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好きなものやおすすめのもの、おいしかったものなど、既製品でよかったもの、感動した作品などを記事にしたいと思います。「食べたり飲んだり作ったり」とマガジンが重複してしまうかもしれま…
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記事一覧

家族には後悔と感謝がつきものだ #創作大賞感想

 テレビやラジオ局にも地域密着型のローカル放送局があるが、インスタント麺にも、そんなローカル麺ある。  意外なことかもしれないが、ペヤングのカップ焼きそばは、元々は関東ローカルだったらしい。私は子供の頃からペヤングのコマーシャルを見て育ったので、正直、大人になるまでべヤングがローカルな存在であることを知らなかった。  「関西の人はペヤングよりもUFOを食べる」  なんて話を聞いたときには驚いたものだ。  ペヤングを製造する《まるか食品》が群馬県伊勢崎市にあり、長く関東ロー

夢と鰻とオムライスに出てくる食べ物の話・前編

 私が一編の小説を書き上げたとき、夫は言った。 「タイトルだけで腹いっぱいになりそうだね」  確かに、 「ごはんよー」  と言われて食卓を見たとき、そこに鰻とオムライスがあったら、どんな人でも一瞬は戸惑うに違いない。  とにかく、物語の中に食べ物を登場させるのが好きなせいで、この作品も食べ物の連打となってしまった。  作中に出てくる食べ物がどういったものであるか、気になる方が、もしかしたらいらっしゃるかもしれない。  そんなわけで、物語に登場する食べ物をできる限り解説

とおくへいきたい #創作大賞感想

「とおくへいきたい」  という言葉を聞くと、私は反射的に浅田飴の宣伝をしていた永六輔のことを思い出してしまう。  その昔、永六輔氏は日本テレビで「遠くへ行きたい」という番組に出演していた。永六輔本人は1年余りで番組を退いてしまったものの、番組自体は現在も形を変えて続いている。  日曜の朝に早起きしてテレビを見る方なら、この番組の主題歌の触りくらいは聴いたことがある方もいらっしゃるかもしれない。  番組の主題歌のタイトルは、そのものズバリ、「遠くへ行きたい」。作詞・永六輔

真面目に毎日煮込んでます。#創作大賞感想

 店頭のショーケースに並ぶ、テリテリの串焼きたちの中でも異彩を放つフォルム、安心するこってりとした旨みの「もつにこみ」、あなたは好きですか。  私は、大好きです。  私は埼玉県民なので、東松山市に行くときは、《もつ煮のまつい》のもつ煮を買って帰ることが多い。  もつ煮には、野菜やこんにゃくなど、具の多いものもあるが、このもつ煮は、豚の白もつのみが、とろりと煮込まれている。  私も家でたまにもつ煮を作るが、逆立ちしても、こういった名店のもつ煮には敵わない。真似してみようとや

噛みしめる人生

 三十代になった頃から、歯医者さんで、 「歯ぎしりしてませんか?」  と、訊かれるようになった。  これまで、家族からそういった指摘を受けたことがないので、 「いいえ」  と答えたが、歯が欠けてきたりヒビが入ったりしているので、噛みしめ癖があるのではないかと言われてしまった。  鏡に近づいて見てみると、前歯が少しばかり擦り減っているのがわかる。  診察を受けて驚いたのは、 「普通は口を閉じているときは、上下の歯の隙間は空いているものなんですよ」  歯科医師から、そう教えても

心、呼び覚ませ

 人情、という言葉を聞いて、思い浮かべるものはなんだろう。  webで検索してみると、実に簡単に、    人にそなわる自然な、心の動き。情・思いやり。  そんな意味が出てきた。  だが、人情というものは、実際の意味よりも重たく、人を束縛するような不自由さを感じさせる。どことなく湿り気があって、そこに陶酔しきってしまうのは、自分の冷静さを失うようで恐ろしい。  江戸物などの時代小説を読んでいると、現代では些末に扱われがちな、《人情》《忠誠》《辛抱》《貞操》というものを描いて

人は願いの中を生きている

 なぜこうも、いろいろなことを願ってしまうのだろう。  ああなりたい、こうなりたい、と、願望を抱いては、それをどうにかして叶えたいと思う。だが、自分の願いと向き合うことは、簡単なようでいて実は難しい。  願いを現実化させたいと思うことは、精神的や痛みや負担が伴う気がする。  例えば、お金が欲しいと願うことは、《自分にはお金が無い》と認めることになるし、痩せたいと願うことは、《自分が太っている》と認めることになる。そこにあるのは《今の自分は欠けている》という不足の概念だ。

クリームイエローの海と春キャベツのある家を探検する

 たまたま見たドラマの、たまたま聞いたセリフが、妙に頭に残ることがある。  そのドラマの主人公である主婦は、目の前にいる夫にこう言った。 「私は毎日、マイナスをゼロに戻してるの」  足の踏み場が確保されたフローリング。衣装ケースに畳んでしまわれている洋服や下着。温かいご飯。いつの間にか沸いているお風呂。  快適な生活を送るためにある行動の前後には、必ず家事がついて回る。  妻の悲痛な叫びを、夫がどう受け止めたか、その後のドラマの展開は憶えていない。  だが、家事をす

あのとき卯月がいたならば

 この物語が、あのとき私のそばにあったら、どれほど救われただろう。  ため息とともに吐き出された思いを胸に、私は先ほどまで読んでいた本の表紙を、じっと見つめた。  穏やかな水面のような瞳でこちらを見るナース。  物語を読み終えた今、この表紙のやさしい色合いが、なおさら心に沁みてくる。  長期療養型病棟で看護師として働く、卯月咲笑には、患者の思い残したものが、《視えて》しまうという不思議な力がある。  意識不明の患者のベッドの脇に女の子の姿が視えたり、にらみつけるような表情

街中華のマトリックスを味わう

 その日、何十年かぶりに夫婦でマクドナルドに行った。  久しぶりなのに、昨日も来たような見慣れた店構え。どこのマクドナルドに行っても、店の様子が変わらないのは、大企業ならでの戦略の一つなのだろうか。  そんなことを思っていると、奥のほうから 「テレレ、テレレ」  ポテトの揚げ上がりを報せる音が聞こえてきた。  この音を生で聞くのも久々なはずなのに、昨日聞いたかのような耳慣れた音に感じる。  私はダブルチーズバーガーにポテト。夫はフィレオフィッシュバーガーにサラダを頼んだ。

ゆく年くる年、六花亭

 とうとう大晦日。  差し迫るというよりも、真隣にぴったり2024年が座って待っている状態だ。 「もうちょっと待ってくれない?」  と頼んでみても、辰のセーターを着た2024年は笑顔で首を振っている。どうやら待ってはくれないようだ。  ならば来い!  来るんだ2024年! さぁ!  私が両手を広げるも、 「まだ、ちょっとあるから……」  と言って2024年は、この胸に飛び込んできてはくれない。  時間厳守。2024年、時間をきちんと守れる良い子である。  さて。  大

うちにあるパンまつりのお皿が何年のものか調べてみた!

 春といえば、あけぼのよりも、パンまつりである。  物の値段が上がり、今、物価の優等生だった卵までもが、1パック300円の値を付けている。スーパーで値札を見ると、溜息ばかり漏れるが、それでも、春になると、山崎製パンは毎年パンまつりを開催してくれる。  このパンまつり。ご存じの方も多いだろうが、パンを崇める宗教的なお祭りではない。商品に貼られた点数シールを30点集めると、フランス製の白いお皿がもらえるという、消費者に嬉しいキャンペーンである。  ヤマザキ春のパンまつりのス

花嫁の母と白い皿

 私が結婚したのは21歳になる年のことだ。  もう23年も前になるが、当時、予想以上に早く訪れた娘の結婚に、母は興奮を隠し切れない様子であった。  花嫁の母  というシチュエーションは、母心を酔わせる最高のイベントであり、集大成であったのだ。  私の結婚は、挙式をするでもなく、ただ婚姻届を出し、実家から転居するだけの、世間でいう地味婚だったのだが、それでも母ははしゃいでいた。周囲から、 「まるでお母さんが結婚するみたいだねぇ」  などと言われ、私も鼻息を荒くしている母に

やっぱりお茶が好き! 愛飲歴15年のお茶屋さんの話

 私はお酒が好きだが、緑茶も好きだ。  基本的に「飲む」という行為が好きらしく、四六時中、のべつ幕なしに何か飲んでいる。  あたたかいにしろ冷たいにしろ、水分が喉を通り、食道へ伝っていく感触は、生きていることを実感させるものがある。  これまで、えんめい茶、よもぎ、どくだみ、熊笹などの野草茶から、三年番茶などのマクロビオティックで推奨されているお茶などにも手を出した。阿波番茶も飲んでみたし、そば茶、プーアル茶、ジャスミンティー、ミントティー、カモミールティーも飲んだ。