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翻訳は孤独な仕事だからこそ

あぁ、翻訳ってやっぱり孤独な仕事なんだな。

フリーランスになって実感したことの1つです。

1つの案件を1人の翻訳者が訳す。フリーランスになっても、この翻訳作業自体は、特許事務所で翻訳していたころとまったく変わりません。ただ、特許事務所には他にも翻訳スタッフがいました。お互い自分の案件について相談したり、どう翻訳したらより適切か、どうすればネイティブに近い英文になるか等、翻訳談議に花を咲かせていました。

特許事務所では、特許明細書に書かれている技術内容で分からないことがあれば、弁理士や技術担当者に質問できました。

1件の翻訳が完成するまで、複数の人と対面でやりとりをし「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」とか「これはこっちの表現のほうが適切だね」など、意見交換の場がありました。

翻訳作業は孤独だけど、クライアントに納品するまでには多くの対面でのコミュニケーションがあったのです。

フリーランスになった途端、想像以上の孤独で驚きました。

長い間フリーランスで翻訳をしている人から「地味で孤独な仕事だよ」と散々聞いていたので、ある程度覚悟はしていたのですが、それ以上に孤独だなぁ、というのが実感。

技術内容で分からないことがあっても、英語でよりよい表現はないかと疑問に思っても、自分でトコトン調べるしかありません。最先端技術を取り扱う発明について書かれている特許明細書だからこそ、その発明に携わっている人以外には質問できない。そういうジレンマがあります。

辞書や書籍を使い、ネットを使い、地道に調べる。

地味で孤独な仕事。それに嫌気がさすことなくフリーランス4年目に入ったので、きっとわたしの性分に合っているんでしょう。

オンオフの切替と集中力アップのために、自宅ではなく事務所を借りて仕事をしています。そこがめちゃくちゃ静かなんですよ。騒音がなくて仕事に集中できるからこそ、その場所を借りたのですが。

なんせ、人の気配がほとんどしません。

「この世界はわたし1人のモノ?」と錯覚するくらいには静かです。

人の気配を感じたくて、気候のいい時期には窓を全開にして外の音をわざわざ取り入れているくらいです。

静かな環境のおかげで仕事はサクサク進むのですが、対面でのやりとりはほぼゼロ。フリーランスになりたての頃、特許事務所や翻訳会社などの依頼主との連絡はメールがメインでした。メールの文面から相手の気配を感じることができた。ところが、最近はベンダーポータル(翻訳管理システム)を使うことが多く、工数が減ったのはありがたいけれど、なんとなく味気ない感じも否めず。

朝、事務所に行き、ひたすらPCの前で1人でキーをカタカタ打つ。お昼は外で食べたり、事務所で食べたり(もちろん1人)。夕方までPCにはりついて翻訳をして自宅に帰る。

日中、ほとんど誰とも会話をしません。孤独です。孤独の極み。

だから、東京の翻訳会社さんから研修&交流会の案内が来たときには、大層喜びました。参加を即決。

というわけで、数日間、東京出張に行きました。

主催の翻訳会社さんが手掛けている翻訳分野はいくつもあるのですが、その日は、特許翻訳者のみの研修&交流会でした。参加者は全員フリーランス。

最近の翻訳業界の流れ、今後の展望、便利なツールの使い方、翻訳の裏ワザなどの講習を受け、そのあとは交流タイム。日頃、翻訳を発注してくれるプロジェクトマネージャーさんたちや、日本全国から集まった多くの翻訳者さんとたっぷり話しました。4時間近く、楽しく交流。

同業者トークができるっていいですよね。初対面でも「同業者あるある」で盛り上がったし、こんなときどうしてる?あのツール使ってる?あそこの翻訳会社さんの評判はどう?など、有意義な情報交換も。

「いつも孤独に作業してるから、こういう交流の場所は本当にありがたい」

みなさん、口をそろえてそう言っていました。あぁ、わたしだけじゃないんだ。翻訳ってやっぱり孤独な仕事なんだな。

でもここで繋がりができたから、孤独だけど孤独じゃありません。自分が翻訳しているとき、場所は違えど、この人もあの人も翻訳してるんだ。そう思うだけで、心のもちようが違います。

次の日には別の翻訳会社さんを訪問し、案件の打ち合わせ。

日頃ベンダーポータル上でやりとりしているのは、この方たちだったのね。やっぱりちゃんと実在しているんだ、とSNSのオフ会のような気もちになりました。直接顔を見ると安心するし親近感が湧くので、お互いに仕事もやりやすくなります。

この打ち合わせでも、最近の翻訳業界のようすや、これから伸びていきそうな分野の話など、貴重な情報を教えていただきました。

今回の出張を通じ、ツールは確かに便利で必須だけど、対面で話すことのメリットは大きいな、としみじみ感じました。

翻訳は孤独な仕事です。

仕事自体は、オンラインやPCでのやりとりですべてコトが済んでしまう。毎日そこに身を置いているからこそ、わたしは外の世界とのコミュニケーションを求めるんだろうと思います。それも、オンラインではなく「直接会う」ことに意義を感じる。

ゴスペルのレッスンに毎週行くのも、みんなの顔を見て歌う、みんなと直接ワイワイ世間話をする、その時間を欲しているのかもしれません。

エクササイズをyoutubeだけでなく教室で習っているのも、ママ友とちょくちょくランチに行くのも、すべてナマのコミュニケーションを求めているのでしょう。

翻訳は孤独な仕事だからこそ、外との繋がりを作ろう。そんな思いがいつもあります。

というわけで、新たな繋がりを求めて、大阪万博のボランティアをやってみることにしました。会社員だったらスケジューリングが難しくて断念しただろうけど、せっかくのフリーランスだもの。自分の裁量で時間をやりくりして、大阪万博に関われたらいいなと思っています。

来月、ボランティアの面談。万博ボランティア日記を書いてみるのも面白いかもね。












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