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記事一覧

翻訳は孤独な仕事だからこそ

翻訳は孤独な仕事だからこそ

あぁ、翻訳ってやっぱり孤独な仕事なんだな。

フリーランスになって実感したことの1つです。

1つの案件を1人の翻訳者が訳す。フリーランスになっても、この翻訳作業自体は、特許事務所で翻訳していたころとまったく変わりません。ただ、特許事務所には他にも翻訳スタッフがいました。お互い自分の案件について相談したり、どう翻訳したらより適切か、どうすればネイティブに近い英文になるか等、翻訳談議に花を咲かせてい

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ロビンソンの飼い犬【前編】

ロビンソンの飼い犬【前編】

 芽衣子が両手指にマニキュアを塗っているとき、ぼくは決まって彼女にくだらない話をする。
 ヤスリで丁寧に整えた指先に神経を集中する芽衣子の左の手は、すでに薄いピンク色に染まっている。右はまだ一本目を塗り始めたところで、爪の色が若干の不健康を証明するように白かった。ぼくは母親の腕を引っ張る子供みたいに、芽衣子に喋りかける。
「夢でしか行けない場所ってない?」
 一瞬彼女の動きが止まったように見えたけ

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死ぬかと思って救急車を呼んだ話

死ぬかと思って救急車を呼んだ話


プロローグ
それは地吹雪が吹きすさぶ寒い2月のある日。

そもそも、そのふた月前あたりから、わたしの体調はイマイチどころかイマサンくらいよくない状態が続いていました。
主な症状は胃腸です。ご飯は食べられるのだけれど胃もたれします。しかも食べた後、背中が痛くなるのです。まるで水分を取らないまま大きなパンや中華まんを急いで飲み込んだように、胃の左後ろあたりが圧迫されて痛みます。

近所のクリニックに

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夢と鰻とオムライス 第1話

夢と鰻とオムライス 第1話



 飛んできたのは五百円玉だった。
 よりによって一番攻撃力の高そうな硬貨の側面が、俺の眉間に命中したのだ。
 鋭い痛みが目頭から眼球の裏へと伝わり、泣きたくもないのにじわりと涙が滲んだ。
「いってぇ……」
 俺は両手で目を覆い隠した。痛みのせいで勝手に湧いてきた涙をそれとなく拭って、顔を上げる。

「なにすんだよ!」
 渾身の力を込めて睨みつけると、ほんの一瞬だけ、兄はうろたえた表情を見せた

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言の葉ノ架け橋【第1話】

言の葉ノ架け橋【第1話】

第1話 かけはし
まだ夏は遠いけど、紫外線の強くなる季節。
首元に日焼け止めクリームを丹念に塗り込んでいると、「希生先生、希生先生」と庭から優しい声で呼ばれて慌てて振り返った。

「ヨウちゃん、そんなところにいたの。びっくりさせないで」
「希生先生、いそがんと学校に遅れるよぉー」

私はふぅと息を吐き、手の甲にもクリームをたっぷり塗り込んだ。
「サチ祖母ちゃんの声マネするのいい加減やめて欲しいわ。

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「赤き月は巡りて」第1話(全9話)

「赤き月は巡りて」第1話(全9話)

第1章 赤き月が昇る夜

 まだ明けきらぬ薄闇の中、乾いた葉擦れの音がひんやりとした空気を震わせる。虫たちの声が重なり合う。
 シュッと風を切るかすかな音がして、すぐにトンと何かに当たった。
 それを合図にしたかのように、東の空が白み始め、鳥たちが目を覚ます。黒一色だった村や山の風景が色を取り戻していく。

 しかし村が目覚めるのにはまだ早い。

   *

「矢がたったぞ!」

 誰かの叫び声で

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花畑お悩み相談所 プロローグ 

花畑お悩み相談所 プロローグ 

プロローグ

 寝る前にスマホを見ないのは、良い眠りのためのお約束だそうだ。
 そう言われましても。若い頃からずっと夜型で、寝室へ向かう前に最後のメールチェックをしてしまう。退職した今でも、その習慣は変わらない。富原律子は老眼鏡をかけると、スマホの画面をタップする。
 深夜のリビングに、かすかな金属音が届く。家の前の空き地に、マンション建設が始まっていて、今夜は突貫で電気工事をすると知らされていた

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残夢【第一章】①手錠

残夢【第一章】①手錠


女は髪を振り乱して俺から逃れようともがく。手首は白くて折れそうに細い。
俺はそのコートから伸びでた手首を素早く掴んで捻りあげ、女がそれ以上抵抗できないようにブロック塀に体を押し付ける。

「イヤッ……」

小さく息を漏らした女のおくれ毛は汗ばんだ頬に張り付き、思うように身動きの取れなくなった上半身を必死に動かし振り向こうと再び藻掻く。

抵抗しても無駄だ。
俺は必要最小限の力を込め女にそれ

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《創作大賞2024:恋愛小説部門》『友人フランチャイズ』第1話 白花色 0.5〜

《創作大賞2024:恋愛小説部門》『友人フランチャイズ』第1話 白花色 0.5〜

◇プロローグ

「次のニュースです。昨夜未明、市内のアパートから男女の遺体が発見されました。取材に対して警察は以前から親交があったとされる医療従事者の女性を第一発見者とし、死因について捜査を進めて参ります。との回答がありました……。では、ここからはスタジオに戻して、この事件で亡くなられた男性について、今日お越しになっております、デザイナーの秋山 海さんとお話をさせて頂ければと思います。秋山さん今日

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点滅とかぎあな【創作大賞 恋愛小説部門 短編】

点滅とかぎあな【創作大賞 恋愛小説部門 短編】

 知らない男とのセックスの後は喉が渇いてしかたがない。十代半ばに覚えた気晴らしはいつしか労働に代わっていて、生活のための金銭になった。たったいまも初対面の男に抱かれている間、男が吐きだす臭気を感じないようにできるだけ口から酸素を補給している。キスのときだけはしかたがないけれど、してしまいさえすればもう気にならなくなっていた。
 ひどい作り笑顔で客を見送ったあと、今日何度目かのマウスウォッシュを口に

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スーサイド・ツアー(第1話 闇サイトへ、ようこそ)

スーサイド・ツアー(第1話 闇サイトへ、ようこそ)

 あらすじ
 自殺願望のある者達が、闇サイトを通じて南海の孤島に集まる事に。闇サイトの主催者は、孤島で参加者全員が美食を楽しんだ後1週間後に苦しまない方法での死を約束。
 にも関わらず、なぜかその前に1人ずつ殺されてゆく……。

『当サイトでは、30歳以下の自死志願者を募集しています。先着8名で打ち切りますので、お早めにご応募ください』

 スマホをいじっていた時に、そんな文章が倉橋翠(くらはし 

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【創作漫画】未完のものたち

【創作漫画】未完のものたち

あらすじ
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何だか全てがうまくいかない会社員の女性。
そしてそのすべての始まりは「中学時代に書いていた小説を未完成のまま投げ出したこと」ではないかと後悔している。
そんなある日、彼女の部屋に見知らぬ人物が現れてー…?
(26ページ)
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#創作大賞2024 #創作漫画部門

ヘタレのオバサンが、ほぼ無一文から移住生活を始めた経緯

ヘタレのオバサンが、ほぼ無一文から移住生活を始めた経緯

2024年5月18日、わたしは片道切符で新幹線に乗りました。行き先は広島。引っ越しのお供は、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』 前田将多 著 旅と思索社。

この本は4月の終わり、スナワチポップアップストアにて、前田さんご本人にサイン頂き購入したものです。“cowboy up!” とも書かれていました。その時は何の意味かわからないまま受け取りました。

ひと夏をカナダの牧場でカウボ

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ここにいるよ、ここにいる。

ここにいるよ、ここにいる。

じぶんの歩いてきた道をたとえば
白い地図に点と点でつないでゆけば
どんな線を描くんだろうって時々
夢想してしまう。

でたらめな線を描きながらも、変わらず
そこにいてくれたのは母かもしれない。

結婚もしなかったから。
離婚した母と暮らしてどれぐらいに
なるだろう。

太陽がいっぱいみたいに、わたしにとっては
まぶしいほどいっぱいだ。

昔は喧嘩もしたし、悪態もついてシカトもした。
沈黙戦を決めて

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